多くのシステムが開発提供される中、システム選定・運用に不安を抱えているセンター責任者は少なくありません。システム活用を成功に導くために押さえておくべき重要ポイントとは?
前編では「情報設計スキル」の重要性をお伝えしましたが、後編となる今回は、具体的なシステム導入の「あるある」をご紹介しながら、このスキルの真髄に迫ります。これらの「あるある」から見えてくるのは、システム間の連携知識不足や情報設計の視野の狭さ、そして組織内のゴール共有不足といった課題です。これらの課題を解決するための「情報設計スキル」を「システム基礎理解」「企業視点での情報可視化」「顧客視点での情報可視化」の3つの軸で深掘りします。
いよいよ、DXに強いコンタクトセンターを築くための、管理者に求められる「情報設計スキル」の全貌を明らかに!?
多くのシステム設計運用に関わってきた私たちだからこそ伝えられる、機能要件を並べるだけでは成しえない、最も重要なファクター「情報設計」のリアルをご紹介します。前後編の「後編」です。
前編はこちらからどうぞ!

システム導入「あるある」から学ぶ「スキルの備え方」
システム導入「あるある」のリアルを知れば、スキルの意義が見えてくる!?
コンタクトセンターのシステム導入「あるある」最新事情
前回は、コールセンターやコンタクトセンターと呼ばれる部門において、システム導入によるDX推進を実現する上で、センター長などの管理者が「情報設計スキル」を身に着けることの重要性についてご紹介しました。
後編となる今回はではいよいよ、情報設計スキルを高めるために必要な知識と視点へと進んでいきたいと思いますが、本題に入る前に、システム導入にありがちな、ちょっと困った「あるある」をご紹介しながら、皆さんと一緒に「どんなスキルがあれば備えることができたのか」を考えてみましょう。
ケース1:要件がまとまり切らずに、システム導入を断念したケース
ある企業が、システム会社のA社にCRMシステムのリプレイスを相談し、導入が決定しました。決定したということは、商談を重ねる中で「その企業のやりたいことがA社のCRMで実現できる」と判断されたから……であるはずです。
しかし、要求定義から要件定義へと進んでいく中で、よくよく話を聞いてみれば要件が合わず、仕様面でも、システム間の連携が当初の想像どおりにはならないことが発覚しました。結果としてこの企業は、A社のシステムへのリプレイスは断念し、新たなシステムを探す必要に迫られてしまいました。
システム導入「あるある」:要件がまとまり切らずにシステム導入を断念
このケースは大変残念ではありますが、上流工程で発覚したことで、まだ引き返すことができたのはよかったと言えるかもしれません。
この例における最大にポイントは「システム間の連携が当初の想像どおりにはならない」ことです。スキル面の原因としては「情報設計のシステム連携に対する基本知識の不足」、そして組織原因としては「現場とIT部門での必要要件のすり合わせ不足」が挙げられます。
連携の基本知識と要求定義のまとめ方がしっかりできていれば、そして、現場とIT部門のコミュニケーションが十分にとれていれば、回避できた可能性が高いのではないでしょうか。
そこに「求められるスキル」のヒントがあります。
ケース2:個社カスタマイズが後々のシステム拡大時の障害に
既存顧客を多く抱えている企業が、契約管理システムを利用しています。この企業では、既存契約の情報管理を手厚く行うべく、従前のオンプレシステムに特殊な個社カスタマイズを実施していました。
ところが事業環境が変化し、新規顧客の獲得にも力を入れる必要が出てきました。ということは、当然「新規見込み顧客の管理する」必要が出てきます。
しかし「既存顧客」と「新規見込み客」の情報特性の違いから、既存システムでは新規見込み客の管理ができない状況になってしまいました。結果として、既存顧客を管理するためのオンプレシステムに、別システムも連携する必要に迫られました。出来上がったのは、複雑化した業務システムです。
システム導入「あるある」:個社カスタマイズが後々の足かせに
スキル原因としては「情報設計の領域不足」と「部分最適故の誤算」、組織原因としては「ゴールの共有不足により、現運用を踏襲しすぎる」 ことが挙げられます。
どんな優れたシステムで合っても、システム導入のゴールが共有されていないと、いつのまにか「従来運用の再現」が目的化してしまい、部分最適が進んでしまいます。
ケース3:DXの罠!?システム効率化で顧客満足度とのギャップが浮き彫りに……
続いての事例は、顧客接点の強化とノンボイスチャネルへの誘導を狙うも、うまく行かなかったというものです。
ある企業は、ChatbotやSMS送信など顧客のチャネル強化を見据え、統合コンタクトセンターシステムを一新。CRM連携を行い、顧客の履歴情報の一元化を目指しました。加えて、電話窓口の露出を減らし、チャットボットへの誘導を図りました。
ところがふたを開けてみると、チャットボットへの誘導によって、却って解決率が低下しました。
システム導入「あるある」:DXを推進するはずが顧客満足度を下げる結果に……
この「あるある」の背景には、顧客視点での情報可視化が不足していたという「スキル原因」と、DXの目的が不明瞭であるという「組織原因」があると考えられます。
情報設計スキルの定義「知識と視点」
情報設計をスムーズにするために必要な知識と、思考の視点をご紹介します!
情報設計スキルって何だ!?
さて、先ほどの導入「あるある」から見てもわかるように、システム導入における情報設計スキルは、広範囲に及びます。
細かなスキルは、地道に学ぶしかないものの、この記事では、その「とっかかり」としての全体像をお持ち帰りいただきたいと思います。ここに挙げる「情報設計スキルの3つの軸」に沿って、詳細をお伝えします。
●情報設計スキルの3つの軸
1 システム基礎理解
情報連携の概要を理解し、ゴールイメージが持てていること。
・システム基本概念の理解
・システム連携の基本形式の理解
2 情報可視化~企業視点
オペレーションフローを人の流れだけではなく、情報視点で整理し可視化。業務で扱っている情報を網羅して把握すること。
・業務フロー図の作成
・システムフロー図の作成
・情報カラム一覧の作成と関連性整理
3 情報可視化~顧客視点
顧客視点で情報を整理し、今後の情報の拡張性が想定できること。
・カスタマージャーニーの作成
・ジャーニーにおける情報接点の整理
情報設計スキルの軸1:システム基礎理解
・システム基本概念の理解━オンプレとクラウド
最初の軸である「システム基礎理解」では、システムの基本概念として「オンプレ」と「クラウド」の違いを見ていきましょう。
オンプレ型とクラウド型の違い
クラウド型は、システムを自社で保有しません。また、初期費用を抑えられるのも特徴です。ランニングコストはかかりますが、オンプレ型が自社での保守管理を必要とするのに対して、クラウド型はサービス提供者が保守対応を行います。クラウド型はオンプレ型と異なりカスタマイズには制限があります。しかし、クラウド型は拡張性が高く、常に最新の機能を利用しやすいというメリットがあります。
このような違いを踏まえると、これからの「攻めのコンタクトセンター」は、やはりクラウド型が断然有利です。情報の移り変わりが激しい昨今、オンプレ型ですと、何か新しいことをやるたびに開発コストがかかる場合があります。また、オンプレ型システムの情報に運用を合わせると、大変複雑になってしまうケースも少なくありません。
・システム連携の基本形式の理解
コールセンター業務に欠かせない「システム連携」についても、最初の軸の中でご紹介しておきます。
例えば、コールセンターのCRMが別のシステムと連携することを考えてみましょう。連携する相手は別の「顧客管理システム」や「ECサイトのシステム」、はたまた「製品情報管理システム」かもしれませんが、連携する相手が何であれ意識しておきたいのが「工程と範囲と情報」です。
コールセンターの情報設計には、システム連携への理解が欠かせない
情報管理視点なのか、オペレーターの動作視点なのか等によって、その連携方式とタイミングは様々あります。システムの新規導入やリプレイスの際には、連携の目的がどこにあるのかを整理する=ゴールのイメージを持つことが重要です。
このシステム連携については、当Webサイトの連載コラム「なるほど!コールセンターシステム」の中でも詳しくご紹介していますので、ぜひそちらをご覧ください。
【関連コラム】CTI連携・CRM連携だけじゃない! コールセンターのシステム連携をまるっと解説
https://www.bewith.net/service/omnialink/callcenter/column/vol38/
情報設計スキルの軸2:情報可視化~企業視点
続いての軸は、企業視点での情報可視化です。
オペレーションフローを人の流れだけではなく、情報視点で整理するとともに、業務で扱っている情報を網羅して把握します。そのために、フロー図を下記の4段階で詳細化することをおすすめします。
4つの段階でフローを洗い出す
第1段階:業務プロセス(モジュールレベル)
・全体の流れや関係部署間の関連
・より詳細な行動に落としこむ
第2段階:業務フロー図(活動レベル)
・プレーヤーごとの処理に分解
・より詳細な行動に落としこむ
第3段階:システムフロー(データ相関図)
・システム間のデータの動きを落とし込む
第4段階:データカラム一覧(システムが扱うデータ)
・データカラムを一覧化し、連携/入力/反映等の情報種別を把握する
システムを導入するということは、情報のルートや取り扱い方が変わる可能性があるということです。マクロの概念図で共通理解を持つだけではなく、詳細まで落とし込むミクロ視点が重要です。
情報設計スキルの軸3:情報可視化~顧客視点
情報の可視化は、企業視点だけでなく、お客様視点でも行います。
お客様視点での可視化によって、新たな発見が得られる場合もあります。というのも、企業視点で描いたシステムフロー図は、あくまでも現時点での情報連携を網羅したものに過ぎないからです。
お客様視点での可視化により、未来の付加価値も想像しやすくなる!
上図はネットスーパーのカスタマージャーニーとシステムの関係を可視化してみた例ですが、実際に商品がお客様の元に届くフェーズで、システム面での不足・分断があることが見えてきました。
このように、まだ対応できていない領域を見つけて「To Be」の思想を持つことも重要です。巷にあふれるシステムの中から自社に導入するものを選定する上では、この「To Be」に着目するのもよいでしょう。
まとめ:情報設計スキルの重要性
ITスキルにも、マクロ視点とミクロ視点を
システム導入には、細かなITスキルが必要であることは間違いありません。しかし、いきなり有資格者を揃えても、コンタクトセンターで発揮したいITスキルの浸透には至らないのが現実です。そんな中、情報設計力を高め、DXに強い組織になる上で、センター責任者の皆様に求められるものは何でしょうか。
センター責任者の皆様においては、現状のITスキルの背景を理解し、そのスキルが必要とされる構造を掴むことが、まずは重要であると言えます。
今回の内容が、その概要をまずは捉えるための、スキル全体の地図の参考になれば幸いです。ぜひ、皆様のセンターなりのシステム基礎理解、そして情報可視化の方法論を見つけてください。[おわり]
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本セミナーの企画・実施
村木 友子(Omnia LINK事業本部)
コンタクトセンターの改善・教育設計を担当するビーウィズの品質管理部門にて、社内外プロジェクトへの教育企画・サービス提供に10年以上に渡り携わる。2022年、Omnia LINKのマーケティング企画部門が発足すると同時に部門長に就任。翌年からはOmnia LINK事業本部の副本部長を兼任し、これまでのオペレーション課題解決の経験を活かしプロダクトのマーケティングやプロダクト設計・サービス運用設計を担当。
小笠原 大介(Omnia LINK営業部)
20年以上にわたりコンタクトセンターを中心としたシステムソリューションに関わる。2014年よりビーウィズ株式会社に合流し、業態変革に向けた取り組みを加速しているビーウィズにおいて、デジタルビジネスの推進を牽引。現在Omnia LINK営業部長として、プロダクト提案はもちろん、クライアントコンタクトセンターの課題解決・改善提案などのコンサルティング面のサポートにも多く携わる。
<おことわり>本記事は、ビーウィズが「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2024 in 大阪」および「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2024 in 東京」の「事例&ソリューションセミナー」に登壇した際の講演内容を一部アレンジして記事化したものです。当時のセミナー内容とは一部異なる点もございます。ご了承ください。

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