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在宅コールセンターのオペレーターと対面してわかった。コロナ前後で「人の行動を変えるプロセス」が確実に変化していると思った件

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HUMAN

形柳亜紀

2020.08.19

コールセンターのニューノーマル

街並みは何も変わっていないのに、すべてが変わってしまったと思うときがある。
コロナによって、生活がだいぶ変化してきた。

「ニューノーマルの時代はパラダイムシフトしないと!」という記事も多く見かけるようになった。
実際には、「これがニューノーマルなのか?」「これはパラダイムシフトなのか?」を考える間もなく、日々の業務や生活を回すために、多くの事業において、様々な工夫がなされている。

そのような中で、私が今最もやるべきであると考える「ニューノーマル」は、「コールセンターの在宅化」である。

コールセンターの在宅化は、10年以上前から業界全体で検討されてきた。
しかし「システム」「セキュリティ」「マネジメント」の3つの壁から、長く実現ができないものであった。

コロナ禍でコールセンターは業務量が増加している。
巣ごもり需要や自治体コールセンターの急増などが主な要因である。

一方、コールセンターは労働集約型で多くの人がオフィスに集まる。感染抑止策は実施しているものの、リスクを0にすることは不可能だ。

そのような中で、「業務量は増えている」が「そのために人を増やすと感染リスクが高まる」という矛盾を解消するために、コールセンターの在宅化は最も理にかなった解消策である。

私は、コールセンターの在宅化の推進PJTを担当しており、在宅コールセンターを積極的に推進している。

一方、このような立場にある私でも、「コールセンターを本当に在宅化することができるか」について不安がないわけではない。

ご存じの通り、「システム」や「セキュリティ」は様々な製品が出ており、実現が可能になってきた。
しかし、「離れた場所にいるオペレーターをマネジメントする」ことが、本当にできるのか、については大変気がかりである。

なぜならば、私は、以前コールセンターのSVをしていて、「オペレーターと直接顔を合わせているからこそ、気が付けたミスやメンタルケア、関係性づくりがあった」と考えているからだ。

それができない中で、どうやってオペレーターをマネジメントしていくのかについて十分な答えが出せないまま、オペレーション現場と協議し、想定されている課題を物理的に解消しながら、在宅コールセンターにおける運用を整備してきた。

在宅コールセンターの中の人と対面した

先日、在宅化したセンターで勤務しているオペレーターとSVから話を聞く機会をもらった。
そろそろ、在宅特有の悩みが出てくるころだと思っていた。

オペレーター及び、SVから聞いた話は以下である。

■オペレーターの声

  • 在宅を始める前、お客様からわからないことを聞かれたら、どうしたらよいかが一番不安であった
  • しかし実際には、わからないことがあればチャットや電話で聞けばすぐに解決できるし、時間がかかるときは折り返しにして対応しており、全く問題ない
  • 他のオペレーターの声が聞こえないので、自分の応対に集中できる
  • 仕事をする上で身なりを気にしなくていいことは、仕事への集中につながっている
  • コロナの感染拡大が広がっている中、在宅で勤務できることは大変ありがたい

■SVの声

  • 先日、朝礼になってもログインしないオペレーターがいて、電話をしたら「あ、今日シフト入ってるのを忘れてました。」と言われ、絶望したが、オペレーターは自宅にいるので2分後にはログインしてくれて、アツいなと思った
  • 在宅だと、「2時間だけ」などの短時間での応援出勤に協力していただけてありがたい
  • チャットを見落としてしまうことがあるのが課題である。顧客対応のエスカレーションは電話がかかってくるので、そちらの電話はちゃんと対応できている
  • ただ、チャット(シフト相談等)も早く対応してあげたいと思っており、SVの役割分担の在り方などを検討する必要がある

「要するに、多少の課題はあるものの、在宅でも基本的には問題なく対応できているということ?」と聞くと、オペレーターからもSVからも「そうです」と返ってきた。

私は何かしら、在宅コールセンターの穴を見つけたくて、オペレーターに「でも、家だと、ちょっとさぼりたくなっちゃったりするでしょ?」と聞いてみた。

すると「電話が鳴ったら取るだけなので、まったくサボるというような考えにならないです。在宅だからこそ信頼関係が重要だと思うので、休憩などはいつもより少し早く戻るよう気を付けています。」という模範的な答えが返ってきた。

SVにも「在宅だとすぐにエスカレーションができなくて、生産性が下がってるんじゃない?」と聞いてみた。

すると、「生産性は在宅になってから上がっています。理由は家だからさぼっていると思われたくないという気持ちがあるのでみんながより一層、集中して仕事をしてくれているのだと思います。
あと後処理が長い時に、遠くから様子が見えないので、チャットで「大丈夫?」などの声掛けをする頻度が高いです。それが結果として意識の向上につながっているのだと思います。」

ニューノーマルのアプローチの在り方

オペレーターやSVと対面して思ったこと。
それは、「良い意味で、何も変わっていない」ということだ。

もっと、「SVが目をかけてくれないので、頑張れません」とか「オペレーターがさぼりそうなので、監視しています」とか、そういう在宅ゆえの信頼関係の欠如があるのではないかと思っていた。
しかし、驚くほどSVとオペレーターの信頼関係を含めて何も変わっていない。

それは何故なのか、について考えた。

今でいうところの「ニューノーマル」に移行した結果のアウトプットを「人の行動を変えること」と考えた場合、コロナ前とコロナ後で大きくプロセスが変わっていることに気づいた。

コロナ前の「人の行動を変えるためのアプローチ」は以下のような流れであった。

  1. 価値観に揺さぶりをかける
    「少子高齢社社会になって、働き手が減るよ。若者が減るよ。人ができる仕事を減らしていかないと社会が回らないよ」という価値観へのアプローチである
  2. 行動が変わる
    それによって、「ではRPAを入れないと。AIを導入してみよう。」というように、DXが推進され行動が変わる
  3. 環境はあとからついてくる
    「少子高齢化社会による環境の変化」は今日から何かが変わるわけではないため、意識や行動を積み重ねた先に環境が変化していく

しかし、コロナ後に、この流れが逆転した。

  1. 人の価値観に揺さぶりをかける前に、コロナによって環境が変わってしまったのだ。とても急激に。
  2. それによって、行動が変わり、「家で働いてみることにチャレンジ」した。
  3. 結果として「家でもいつもと同じように仕事ができる」という新しい価値観を手に入れた。

これが、当社の在宅オペレーターに起こったことなのである。


ニューノーマルの行動変容

もうひとつの気づきがある。

環境が急激に変わって、行動が変わり「家で働いてみよう」と思えたとしても、価値観の変化までに昇華するには、物理的に「家でも、会社でも同じように仕事ができた」という体験が必要である。

例えば、自宅がオフィスから離れているために、SVからクレーム対応を助けてもらえないような環境であったら、オペレーターの価値観の変化には至らない。

オペレーターにとって「家でも、会社でも違和感なく、仕事ができる環境をどう作るか」は、サービスを企画する段階で現場と大変気を使いながら考えた点であった。

また、実際に運営をしているSVもその点を非常に注意深く対応しているので、価値観の変化に昇華できたのではないかと思う。

在宅コールセンターの今後

これまで、すでにオフィスの勤務実績のあるオペレーターに在宅で勤務してもらう、という方法で在宅化を実現してきた。

これによって、関係性がすでにあるメンバーとのリモートでのマネジメントは可能である、ということが実証できたが、今後は「在宅のために新しく採用した人」に入社と同時に在宅勤務をしてもらう、というチャレンジもあるのだと思う。

どのようなプロセスでまずは自分たちの価値観を変えていけばいいのか、について早くも悩み始めている。
これからも悩みながら、コールセンターの在宅化を推進していきたい。

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