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あの夏の”紙地獄の格闘”が、15年後AIによって救われるまで

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形柳亜紀

2020.09.23

夏の紙地獄

15年前に、夏に忙しくなる”ある”案件で、夏の繁忙期だけの2ヶ月半のスポット対応センターを担当した。

そのスポットセンターは、業務開始から2週間で、レギュラー対応しているセンターと同じ生産性(1時間に6本電話を取る)にすることを前提に、人員の配置計画が立てられていた。

コールセンターの生産性は、お客様と通話する時間と通話した内容をシステムに入力する時間をそれぞれ短縮することで高めていくことができる。

15年前のオペレーターは、今の時代よりもずっと、たいていPC入力が苦手であった。
そのため、もともと担当していたレギュラー対応のセンターでも新人のPCスキルが低いために、生産性を上げるのに大変苦労していた。

その中で「2ヶ月半しか所属しない新人が2週間でお客様とお話しをすることに慣れることは可能であるが、入力スキルを高めることは不可能だ」と考えた私は、「オペレーターにPC入力をさせるのをやめよう」と思い立った。

そこから各種調整を行い、そのスポットセンターは電話応対の内容をシステム入力せず、紙のフォーマットに手書きで記入する、という方法で電話対応を行うことにした。

オペレーターが記入した紙を、採用面接の際にパソコンの入力テストの結果が良かった少数のオペレーターで作った「入力チーム」が集約して入力することで、全体の生産性を上げる作戦であった。

入力の遅いオペレーターはひたすら電話を取ってもらい、入力の得意な人だけで入力を完結させる。完璧な作戦であった。

結果として、センター全体の配置人数に対する応答件数は多く、生産性は高い結果となった。

しかし、その夏は、社会人人生の中でも、思い出に残る地獄の夏になった。

なぜならば、配置人数に対して十分な生産性で対応できているにもかかわらず、さらに応答率を確保するために、入力チームを電話対応に振り分けてしまい、毎日入力を止めてしまっていたからだ。

そのために、日中は入力チームが機能しておらず、毎日スーパーバイザーが、業務時間外に入力することでカバーするという極めて愚かな運営を毎日行っていた。(配置計画、運営、すべてが愚かである)

当時の上司の方針で、「繁忙期は赤いTシャツだ」と言われ、スーツの上からコーポレートカラーでもなんでもない赤いTシャツをなぜか着せられて、毎日1日10時間、エスカレーション対応、クレーム対応、イレギュラー対応をしていると営業時間が終わり、営業時間が終わった瞬間から、数百枚の紙を入力するという過酷な日々が2ヶ月続いた。

電話は営業時間が終わると積滞はなくなるが、紙はなくならない、それが紙地獄の本質であった。

翌日使うフォーマットを印刷する音を聞きながら(白紙の紙もすぐなくなる)深夜まで紙を入力する、この地獄は忘れられない。

「このままじゃ、メンタルやられる」と思ったが、なんだかんだ丈夫だったので無事に夏とともに、その業務も終了した。

AI-OCRと出会い

その夏から13年くらい経過した時、「AI-OCRという便利なものがあるらしく、大変高額であるが、当社は導入することにしたらしい」という話を聞いた。どうやら、AIが人の書き癖などを学習して、どんどん読み取り精度が上がっていくらしい。

あの夏のことを思い出し、「AIが手書きの文字を入力してくれるなんて、すごい時代!」と思った。

一方で、あの夏からテクノロジーはだいぶ進んでいるので、「この時代に紙なんてあるの?」とも思った。

この世にニーズがあるかを探るため、AI-OCRを使った当社のサービスを目玉に、東京ビッグサイトの展示会に出展することにした。

結論として、展示会は大盛況であった。
特にAI-OCRはお客様が行列を作ってくださり、大変興味を持っていただいた。しかし、お客様と話してわかったことがあった。

前提として、AI-OCRを導入するには、何万枚、何十万枚の紙がないと、投資効果が十分に出ない。

しかし、多くのお客様が困っている紙の分量は「数百枚~多くて1,000枚程度」
そうなると「AI-OCRを導入するのは投資が重いな」という印象を受けた。

でも、職場に300枚入力しないといけない紙があることを想像し、1時間に10枚入力したとしても30時間程度はかかるかなと思うと、実際は重い作業であり、お客様のお悩みもとても理解できた。

月間30時間は、フルタイムで働く人の約1週間分の稼働だ。

1ヶ月のうち1週間を入力に費やしているのであれば自動化したい、そんな気持ちが生まれるのは自然であると思った。

また、AI-OCRにはもう1つ問題があった。

AIの入力精度は高く、95%程度である。しかし、入力業務において5%のミス率は非常に高い。

そのためAI-OCRを導入しても、AIの入力を人がチェックする工程が基本的に必要になる。もちろん、0から入力するよりは工数は格段に減るが、入力時間は0にはならない。

AI-OCRの世の中の注目度の高さがわかって安心もしたが、サービスの提供のあり方は考える必要があると思った、そんな展示会であった。

ANNIM(アニム)の構想

展示会の後、AI-OCRを導入するほどではないが、入力にそれなりの工数がかかっているお客様に向けて、どうやったら、AI-OCRを使っていただけるかを考えた結果、当社が代わりにAI-OCRを使って入力するサービスを思いつき、同期の宮本君と事業計画書を書いてサービスをスタートさせた。

利用は以下のような流れである。

  1. オンライン上にPDFファイルをポンっと、ドラックアンドドロップする
  2. 当社がAI-OCRで入力
  3. CSVファイルをシステム上で返却する

つまりは、お客様は入力してほしいPDFファイルをシステムにポンっとドラッグアンドロップするだけで、全部任せられるというサービスだ。

そのサービスの名前は「ANNIM~みんなで使って育てるAI-OCR~」。

AI-OCRを導入するほどではないが、入力時間をなくしたいお客様に、当社のAI-OCRを「みんなで使って、AIの学習を促そう」という願いを込めて「MINNA(ミンナ)」の逆で「ANNIM(アニム)」にした。

また、お客様がAI-OCRを導入したとしても、人の目によるチェックが必要となるが、ANNIM(アニム)ではAIが入力した後、2名でクロスチェックした上で納品しているので、本当に入力による工数を0にすることが可能だ。

サービス開始から1年半。ANNIM(アニム)はありがたいことに、それなりに実績が積みあがってきた。

申込書、申請書、アンケート、口座振替依頼書、立替精算表、など、多くの帳票を入力してきた。
世の中には、何千万枚のものすごい分量の紙地獄はそんなにたくさんはないけれど、ちょっとした紙地獄があることが見えてきた。

この度、タクシー広告を出すことになった。

同期の宮本君と始めた、ANNIM(アニム)がまさかのタクシー広告デビュー。
感無量です。


これからも、ぜひANNIM(アニム)をよろしくお願いします。
ANNIM(アニム):https://www.bewith.net/annim/

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