オペレーションを商品として売る会社
世の中にはいろんな会社がありますが、私の会社は「オペレーション」を提供する会社です。
具体的には、企業のコールセンターや、人事や経理等の業務をアウトソーシングしていただき、企業の代わりに運営しています。
この「オペレーション」という言葉には、辞書を引くといろんな意味がありますが、
ここでは、「オペレーションとは、企画や計画、目的を実行するための活動全般」と定義させていただきたいと思います。
さて、当社では様々な「オペレーション」運営を行なっています。
通販の注文窓口や、テクニカルサポート、コンビニを作るときの部材の拾い出し、発注や、新聞記事のお悔やみ欄の取材及び執筆など多岐に渡っています。
私にとってのオペレーション
私自身も15年ほど、オペレーション担当者として、顧客企業へオペレーションを提供してきました。
先日、当社が20周年を迎えるということで、私は中堅社員としてある取材を受けました。
そのなかで、「この会社に入って、一番成功したことは何ですか?」と聞かれ、「はて、、?」と私は、言葉を失ってしまいました。
なぜならば、全く成功体験が浮かばなかったからです。
そして、その質問にはとうとう「ないですね、、、。」としか答えられませんでした。
私は、精一杯仕事をしてきましたし、少しは仕事に誇りもあるタイプです。
それにもかかわらず、「自分に成功体験がないということ」 にとても驚きましたし、大変ショックでした。
オペレーションにおける成功とは
それから、私は 「なぜ自分には成功体験がないのか」 を、くよくよ考えました。
その結果、一つの事実に気づきました。
例えば、営業の場合、顧客の受注を獲得するという、1回の区切りがあります。
しかし、「オペレーションには区切りがない、そして、絶え間なく継続することに価値がある」ということです。
顧客目線で見れば、「お客様が喜んでくださるオペレーション」が成功に思えますが、
運営をしている企業側から見ると、製造業でいうところの
「QCD Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」の観点で評価をすることになります。
仮に「QCD」すべてが目標を満たせていたとしても、次の課題を設定して取り組みをするのがオペレーションです。
あわせて、多くの仕事と同じように、外部環境に対応していくことも課題となっていきます。
つまりは、以下のようなことであると理解しました。
オペレーションは「線」であり、成功と失敗を繰り返しながら、改善を継続することである。
よって、ある断面だけを切り取って、成功や失敗を判断すると、陳腐化しやすい。
オペレーション現場の課題はいつも新たに発見されるからだ。
例えば、
ある時点で生産性を平均1.5倍改善したとします。(成功体験)
しかし、次にはそれを「人が変わっても維持できるか?」という課題が発生します。
次の課題に取り組んでいると、あっという間に「生産性を1.5倍にした成功体験」は古くなっていく(陳腐化)、ということです。
「結婚生活」と「オペレーション」
また、「結婚生活」と「オペレーション」は似ていることにも気づきました。
例えば、「結婚式」はプロジェクトですので、式自体を終えた達成感や、ゲストからの評判、自分の満足度など、成功と失敗を定義することができます。
しかし「結婚生活」は喜びもあれば、苦労や悲しみもあります。
それを繰り返しながら毎日の生活が続きます。
「死が二人を別つまで」と言いますが、その「死」はいつくるかわかりませんから、基本は「ゴーイングコンサーン」です。
また、結婚生活も、オペレーションと同じようにある断面を見て、「この人と結婚してよかった」と思うこともあるかもしれませんが、それを以て「結婚生活に成功した」とは言いません。
では、オペレーションにおける成功とは何でしょうか。
「成功と失敗を繰り返しながら、改善を進めオペレーションを進化させること」にあります。
その定義に照らすと、私の成功体験は
「担当してきた多くのお客様が継続して取引をしてくださっていること。」である、
と自分の中で納得することができ、
「自分に成功体験がないかもしれない」というショックは、いったん幕を閉じたのでした。
現場ドリブンでお伝えしていきたいこと
企業の顧客対応部門の方や、コーポレート部門に所属されている方は、私たちのように成功と失敗を繰り返しながら、日々改善を繰り返されているであろうと思います。
私の所属する「ビーウィズ株式会社」は、全国5000席のオペレーションブースを持ち、7000名を超える従業員で毎日オペレーションを運営しています。
その中で、コストダウンへの挑戦、デジタルシフトへのチャレンジ、人材の教育・採用の在り方、運営方法、リモートオペレーションなど、様々な課題に直面し、知恵を絞って対応してきました。
この現場ドリブンでは、「ある断面を切り取った成功体験」ではなく、オペレーション現場で発生している課題と、それにどう向き合っているかを現在進行形でお伝えできればと考えています。
そしてすべての現場で輝いている皆様に向けて、オペレーション改善の一助となれば幸いです。
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