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感覚派のあなたこそ、フレームワークを使うべき~アイデアをロジックに昇華する方法~

  • #フレームワーク

HUMAN

形柳亜紀

2021.10.13

感覚派の人生

若いころから「感覚派」だと言われてきた。この言葉を聞くと、人によっては「アイデアが豊富なんですね」とか、「クリエイティブなんです、アピール?」と思うかもしれない。

しかし、私からすると、「あなたにはロジックがないんですね」という悪口に聞こえる人生だった。ロジックを積み上げて物事を考える人にとって、私のアイデアというのはすごく行き当たりばったりに見えるらしい。
確かに、当たりはずれはあって、ご指摘の通り行き当たりばったりでボツになるアイデアもたくさんある。

でも実際、「アイデアなんてそんなものでしょう」とも思っている。
その上でそれを、生煮えの状態で出すのが「感覚派」であり、ロジックを整理してから出すのが「理論派」である、と私は解釈している。
よって、人から「感覚派である」という評価をされると、大変悔しい思いをするとともに反省をする。

ちなみに、これは私のような非クリエイターレベルの世界の話であり、秀逸で万人には思いつかないようなアイデアを出す人のレベル感だと、必ずしもロジックなんて問われないのかもしれない、ということも補足しておきたい。(そのような天才の世界については私にはまったく想像できない。)

さて、現場にいたときに、こういう愚痴を言っている人がよくいた。
「上司にこういう改善をやった方がいいと言っているのに、聞き入れてもらえない」

仮に、あなたのそのアイデアは素晴らしく、きっと効果が高いのだと仮定する。しかし、上司が聞き入れてくれないのは、そのアイデアが生煮えでロジックに昇華されていないからかもしれない。

そのような場合、あなたの生煮えのアイデアをわかってくれない上司も悪いかもしれないが、上司にわかってもらえるようにアイデアはロジックに昇華させなければならない。

つまり、あなたのアイデアを誰にでもわかるようなロジックに昇華させるのは、あなたの仕事なのだ。

アイデアをロジックに昇華するためのフレームワーク

アイデアをロジックに昇華させる作業は、誰もがわかるような物差しに当てはめて語ることである。

私は、年に1~2回程度、メディアの取材に対応することがある。ある時、記者にご質問いただくことは、フレームワークが埋まるような質問が多いことに気づいた。

例えばこんな感じだ。

「ターゲットとするお客様はどのようなことを求めていらっしゃるのですか?」<顧客の視点>
「競合他社に同じような製品はありますか?」<競合の視点>
「この製品は御社のどのような強みが活かされているのですか?」<自社の視点>

総合すると、「3C分析」である。

記者は、当社の業界や製品を知らない。しかし、世の中にわかりやすく伝えないといけない、という使命がある。そして、残念ながら、私のような感覚派の人から話を聞く羽目になるかもしれない。

だから、記者は世の中で使われている物差し(フレームワーク)に沿って情報整理をしながら、記事に落とせる情報を収集するのだ。

同じように、あなたの上司は、あなたのアイデアを知らない。しかし、実行可否を判断しないといけないという使命がある。上司が感覚派のあなたに歩み寄って、あなたのアイデアをフレームワークで整理しながら、ヒアリングしてくれたら素晴らしい。

しかし、上司だって忙しいし、あなたのアイデアを実現することだけが上司の仕事ではない。何より、今回はアイデアを実現することに目的があるわけだから、上司のコンディションや理解力に任せて判断をゆだねてしまったら、あなたのアイデアは実行されないかもしれない。

だから、アイデアを考えたあなたが、世の中で使われている物差しに沿って情報整理をしてあげなければならないのである。

現場で使えるフレームワーク

世の中、フレームワークは山ほどある。

ではどれを使うべきか。
これは、整理するべき情報によって使うべきフレームワークは異なっている。使うべきフレームワークは適宜考えながらご活用いただきたい。

その上で、今回は、現場でよくある企画をオペレーター向けの研修やツール類等の改善施策であることを想定し、研修の企画に合ったフレームワークである7W1H+Kをお勧めしたい。

7W1Hは5W1Hの進化版である。+Kは「効果」で、私のオリジナルだ。


7W1H+Kの活用方法

7W1H+Kの活用方法は以下のように使う。
例として、「新製品の研修を実施したい」という場合を整理してみた。


このように情報が整理されていれば、上司はわかりやすいし、またこのまま出さなくても、上司からのQ&A対応もうまくいくはずだ。

+K(効果)は、実は企画を考えるときに、やりたい思いが強すぎると、効果まで検討が至らないことが本当によくあるのだ。しかし、何かを実施するときには当然、「効果」(※コスト削減・生産性向上・品質向上など)を求めて実施するわけであり、その「効果」をおぼろげにすると、検討の段階で実行内容がぶれやすくなる。だからこそ、あえて言語化することが大切である。

上記の事例にさらに欲を出すと、研修は、PDCAサイクルで言うと、PlanとDoでしかないので、しいて言えばCheckとActionの考え方を持っていくと、より理解が深まることだろう。

7W1Hの位置づけは以下のようなところにある。


PDCAサイクルにおいては、PlanとDoだけでなく、たとえば、どう効果測定するか(Check)、効果測定の上で、次のアクションを検討する反省会実施(Action)なども合わせて計画できると、よりアイデアはロジックに昇華していく。

7W1H+Kが全部埋まらないケースもあるかもしれない。その場合は、「-」などで省いても大丈夫だ。「検討したけど、未定にしている」ということが先んじて言えれば、論理的に未定にしている感じが出て、賢く見える。

また、埋まっていない部分があっても、ある程度埋めたうえで持っていけば、周りの人が考えて埋めてくれることもあるかもしれない。

全部を説明するとくどすぎる可能性も高い。その場合は、情報は手元で考えておくがあえて説明をせず、質問が来たら回答できるようにしておく、という位置づけで用意しておくとよい。

アイデアを実現するには

今回は、アイデアは浮かぶけどそれをロジックに昇華しきれない場合、フレームワークを使って情報を整理すると、伝わりやすくなるという話をした。

最後に、よいアイデアは浮かぶけど、結局実現できないほかのパターンについて2つほど触れておきたい。
 ①相手への甘えがありすぎるパターン
 ②自分のアイデアだけど、最終的に決めるのは上司次第というスタンス
の2パターンだ。

①相手への甘えがありすぎるパターン
たまに奇跡的に私の言うことをすべて理解してくれる人がいる。身近に大変私への理解度が高い同僚がおり、その同僚との先日以下のようなチャットをした。

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同僚:今作っている映像のナレーションだけど、Aさん、Bさん、Cさんだと、一番イメージに近いのは誰かな?
私 :Cさんだと思う。ヒップホッパー感があるよね。
同僚:ヒップホッパー感(*'ω'*) さすがの表現。わかる。
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このCさんが、ラップでナレーションしているなどであれば、「ヒップホッパー感」で理解されると思う。しかし、サンプルで聞いていた実際のナレーションはB2BのSaaSプロダクトの企業動画のナレーションをしているだけで、おそらく一般的には「ヒップホッパー感」は伝わらないのだ。しかし、この一言でニュアンスを理解してくれる、そんな奇跡的な同僚である。

一方、このような奇跡的な人が、いつも近くにいる環境だと大変危険だ。
アイデアをロジックに昇華させる努力をしなくても、生煮えのアイデア時点で伝わってしまう。これを当たり前のことだと思ってしまうと、他の人にも同じことを求めてしまう。

もし、あなたが、奇跡的にあなたを高いレベルで理解してくれる人と出会っても、それは当たり前ではないことを肝に銘じよう。

②自分のアイデアだけど、最終的に決めるのは上司次第というスタンス
会社員たるもの、自分のアイデアがすべて通るとは限らない。しかし、決めるのは上司なので、上司にすべての判断をゆだねてしまうスタンスだと、通らない確率が上がってしまう。もちろん、最終的に決めるのは上司だが、上司に承認させるのは自分であるのだ。

それを踏まえたうえで、「何を承認してもらうことをゴールとするか」「そのために上司にどう説明するのか」を考えてみよう。また、上司の判断の一部には、提案者が最後まで遂行してくれるか、という部分は大いにある。提案者の熱意をアピールして、ぜひ自分のアイデアを実現していこう。

それをもってしても、上司に承認されないことももちろんある。しかしながら、通してもらえる確率はスタンスを変えるだけで大幅に変わるはずだ。
自分がアイデアを通すのだ、という意識をもって、アイデアをロジックに昇華させる経験値を積むこと自体が、今後の提案の精度を高めてくれることだろう。

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