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コンタクトセンターでのカスタマーハラスメント対応 ~カスハラの芽を早期に摘み取る方法~

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HUMAN

形柳亜紀

2024.08.21

コンタクトセンターのクレーム対応

私がオペレーターの面接をするときに、たまに「コンタクトセンターのクレームってどれくらいあると思いますか?」と聞くことがあります。様々な答えが出てきますが、よくある回答はだいたい「20%~30%」でしょうか。

しかし、実態はセンターにもよりますが、コンタクトセンターのクレーム率は1%未満です。20%もあったら、5本に1本はクレーム対応。さすがにそこまで多くはありません。

コンタクトセンター=クレーム対応というイメージの方もいらっしゃるかもしれません。実際、コンタクトセンターでは、「クレーム対応」は存在し、スーパーバイザーとしてオペレーターの上席対応を行うことはスーパーバイザーの必須スキルです。

昨今のカスハラ法令化の動き

最近、東京都がカスハラ条例を検討しており、骨太方針でも従業員保護策を企業に義務付ける法整備が検討が記載されています。そのために、新聞等では「カスハラ」の文字を見る機会がとても増えました。

しかし、コールセンター業界に20年ほどいると、最近の「カスハラ対応」の報道については、共感できるころもあれば、そうではない部分あります。
この理由は、コンタクトセンターは昔から、ある意味「カスハラ対策」されてきたところもあるのではないかと思っています。

最後までわたくしが対応いたします、の異常さ

私がスーパーバイザーだった時、何かしらの理由で上席対応をする際には、どうやってこのお客様対応をクローズするのがベストかを常に考えていました。その中の一つのシナリオとして、「お客様の言っていることは過剰な要求であるが、こちらから電話を切れないので、お客様に電話をお切りいただく」というものがありました。それは、今の時代で言えば「カスハラ」に該当するのかもしれません。

そういったお客様に対応する際、「あなたでは話にならない。さらに上の者に代わってほしい」と言われることも多々ありました。そのような時はたいてい、「申し訳ありません。私が最後まで対応いたします」と回答していました。そのようにして、「あきらめてもらいたい」という対応をしていたのだと思います。

しかし、当時は「お客様は神様」「クレームは氷山の一角」という時代でしたので、「正当な要求をされているお客様」と「正当ではない要求をされるお客様」を区別すること自体が、はばかられる時代でもありました。

お客様を犯罪者にしない

15年以上前に担当した、あるコンタクトセンターは、「お客様満足度 XX年連続 1位」を達成したお客様対応を重視しているセンターでした。そのセンターでは「お客様の状況を踏まえたうえで、時にはセンターのルールを逸脱したイレギュラー対応」も求められました。
例えば、「こんなにお困りのお客様に、なぜ、このような型どおりの対応をするのか」と、スーパーバイザーであった私はクライアントに注意されることもありました。

しかし、このセンターでは、「この方は、お客様ではない」という判断をした場合、「お客様の要望に従う必要がない」し、場合によっては「電話を切ってもいい」という判断もしました。コールセンターに不当なクレームを言うことは「業務妨害」であり、「強要」であるという考え方から、「お客様を犯罪者にしてはいけない」というのが合言葉でした。「お客様を犯罪者にしない」 とても、強い言葉ですが、お客様満足度No1を目指していたセンターにおいて、「カスハラ」から身を守る動機づけとしては、とても分かりやすい言葉でした。

実際に厚生労働省のカスタマーハラスメントのガイドラインのP10には、カスタマーハラスメントが抵触する法律が詳しく記載されています。これを見ると、様々な法律に抵触することから、「お客様のカスタマーハラスメントをエスカレートさせないこと=お客様を犯罪者にしない」ということが改めてしっくりきます。

実は前からあったコンタクトセンターのカスハラ対策

最近のニュースや報道を見ていると、コンタクトセンターのカスハラ対策は他業界と比較して進んでいないように感じていました。

理由は様々です。

おそらく、対面の接客業務よりも先に「カスハラ」(当時はクレーマー)が発達したことから、人を変える、時間を変える 等のクレーム対応のテクニックが育っていたことがあげられます。また、通話の録音や、CRM等での対応記録が残す文化もあり、証拠が残るため、ある程度のけん制機能が働いているということもあります。

一方で、報道の通り、今後「カスタマーハラスメント」の法整備が進むと、従業員をカスハラにさらすことや、カスハラから守らないことは企業の責任となります。コンタクトセンター業界のカスハラ対策もさらに高度化していかなければ、従業員から選ばれない企業になる可能性があります。

カスハラ対策で企業に求められていること

厚生労働省のガイドラインでは、「カスタマーハラスメントを想定した事前の準備」として以下のような取り組みが推奨されています。

①    事業主の基本方針・基本姿勢の明確化・従業員への周知・啓発を行うこと
企業として、カスタマーハラスメント対策を行うことを世の中に示し、組織として従業員を守るという方針を従業員に周知すること。

②    従業員(被害者)のための相談体制の整備
ハラスメントを受けた従業員が相談できるような窓口を設置し、従業員に広く周知すること。

③    対応方法、手順の策定
カスタマーハラスメント行為への対応体制、方法等をあらかじめ決めておくこと。
コンタクトセンターにおいては、カスタマーハラスメントであると判断したコールは切電してよいこととする。その判断権限は誰にあるかなども、決めておくとよいでしょう。
また、管理者が電話を代わらないセンターも時折あると聞きます。従業員の身を守るためにも、クレームの解決においても、人を変えることは有効です。上席の対応をどのような流れで行うか、上席の対応にはどのような対応や権限があるか、を決めておくことも必要だと思います。

④    社内対応ルールの従業員等への教育・研修
顧客からの迷惑行為や悪質なクレームへの具体的な対応について従業員を教育すること。

これらのルール作りをしっかりと行い、まずは「何がお客様の正当な申し立てであり、何がカスタマーハラスメントなのか」を定義すること。そのうえで、カスタマーハラスメントと判断された場合、どのように従業員を守っていくかを考える、というのが基本の考え方です。

また、厚生労働省では、「カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応」についても定義しています。

⑤    事実関係の正確な確認と事案への対応
カスタマーハラスメントに該当するかどうかを判断するために、顧客と従業員からの情報をもとにその行為が事実であるかを確認する。確認した事実に基づいて、企業に瑕疵がある場合は、返金や交換に応じる、ない場合は、要求に応じない。

⑥    従業員への配慮の措置
被害を受けた従業員に対する、安全の確保と、メンタル的なケアを行うこと。

⑦    再発防止のための取組
事案発生時の周知や、事例の活用を通じた、改善。

「お客様を犯罪者にしない」最大の防御は共感力

ここまで、厚生労働省のガイドラインを元に、企業が実施するべき対応についてお話ししてきました。
カスタマーハラスメントの中には、確かに電話がかかってきた初めから、様子がおかしいケースもあります。

しかし、多くのカスタマーハラスメントには、「そのお客様にとっての」(何かしら)企業の瑕疵があるから、発生しているということも多いです。その瑕疵を「私たちのせいではない。言いがかりだ」というスタンスで初期対応をしてしまうと、本来はカスハラではなかったお客様をカスハラにしてしまう可能性もありえます。

多くのお客様は、「わかってもらいたい」という気持ちを持っているはずです。それをこのカスハラの風潮に乗っかって、テクニカルに「これは企業の瑕疵、これは企業の瑕疵ではない」と分類して対応をするのではなく、まずは「お客様がその会社のサービスや商品を利用して、何に困ったのか」を想像し、お困りであった状況に共感してあげること。それはお客様対応の基本です。

きちんとお客様の状況を理解し、共感したうえで「申し訳ありません、どうしてもこの内容ですとご希望通りに承れないのです。本当に心苦しく思っております。申し訳ありません」と言われれば、お客様は「あなたに言ってもしょうがないわね。会社が悪いのね」となります。このオペレーターの初期対応がうまくないと、初めは会社への不満だったものが、オペレーターへの不満にすり替わってしまいます。
その時に、カスハラが極めて発生しやすくなるのです。

日ごろから、応対品質の向上に向けて、オペレーターを指導することが、オペレーターをカスハラからしっかりと守ることになり、お客様を犯罪者にしないことに繋がります。

今後の法令化を見据えて、コンタクトセンター業界も様々な仕組みづくりが求められることが想定されますが、まずは日ごろの指導をしっかりと行うこと。そのうえでカスハラ対策をしっかりと行っていきましょう。

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