昨年末に発表された2024年の新語・流行語大賞。年間大賞には「ふてほど」が選出されましたが、皆さんは気になったワードはありましたか?トップテンに選ばれた大谷翔平がメジャーリーグで達成した偉業「50-50」、毎日どこかで流れていたCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」、連日のようにニュースで目にしていた「裏金問題」、「ホワイト案件」、などは記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
その中でも私が注目したのは「ソフト老害」。「SMAP×SMAP」「内村プロデュース」「Qさま!!」などの人気バラエティー番組を手掛けてきた構成作家の鈴木おさむさんが著書「仕事の辞め方」の中で名付けた造語です。
詳しくはぜひ書籍を読んでほしいのですが、ざっくり要約すると、組織の中核を担っている30代、40代の中間管理職世代が、上司や会社の意向を汲み取って、バランスを取るあまり、若手のチャレンジングな意見を抑圧してしまう。それにより若い才能を潰してしまっている。。。これがソフト老害だというのです。
ソフト老害=自分?
私もしがない中間管理職。上司と部下の間に入って調整したり、意見をまとめる事は日常茶飯事。組織の中で会社の意向に合わせてバランスを取る事は自分に課せられたミッションの1つだと思っていたし、むしろ管理職として必要不可欠なスキルだと思っていました。
それが若手の視点で見ると、話は聞いてくれるものの、最後は何だかんだ理由をつけて自分のアイディアを取り入れてくれない。煙に巻いて上手く丸め込まれた。そう思われているかもと考えたら、ソフト老害=私の事を指しているんじゃないかと少し落ち込んできました。同じく落ち込んでいる中間管理職の方、きっと私以外にもきっといますよね??
ソフト老害化しやすいコールセンター界隈
でも、言い訳に聞こえるかもしれませんが、私のいるコールセンター、BPO業界界隈では特にソフト老害化が起りやすい環境と言っていいのではないでしょうか。コールセンターやBPO業務は商品を販売したり、納品したら終わりというわけではなく、クライアント企業の中に入って、クライアント企業の一員としてセンターを運営する事がほとんど。そうなると、センターの責任者やSVといった中間管理職が注視すべき相手は自分の上司の他に、業務を請け負っているクライアント企業とその担当者が加わる事になります。
こうなると事態はさらに複雑。部下から「ああしたい、こうしたい」と提案を受けても、実現するためには上司に説明する事はもちろん、クライアント企業の担当者にも説明して、納得してもらう必要が出てきます。中にはクライアント企業側のルールとして変更出来ない事もあるし、実現するためにはクライアント企業側の関係各所に話を通す必要あるため、その難易度はより一層高まります。
自社の上司とクライアント企業。突破すべき関門は2つ。この難易度の高さ、煩わしさはセンターの中で板挟みになった経験がある方なら、少なからず共感してくれるのではないでしょうか。上司のOKが出ても、クライアントの担当者が難色を示す事もあれば、クライアントの担当者は乗り気でも、クライアントの別部門からNGが出て追加の提案資料の作成を要請されるなんて事も。。。私も説明する労力や手間を考えて、理由をつけて「一旦、現状維持で行こう」と部下を抑え込んだ過去の記憶がフラッシュバックしてきました。
ソフト老害と呼ばれないためにやるべきこと
このような状況下で勤務する若手は果たしてどんな気持ちになるか。自分の意見やアイディアは抑え込まれ、求められるのはルーティンワークばかり。そうなると自分を歯車の1つだと思い、やる気をじわじわとなくしてしまう。そんな場面を何度か(何度も?)見てきた記憶があります。よく考えたら、自分が若手だった頃も同じようにやる気をなくして不貞腐れた事がありました。
では、どうしたら部下のモチベーションを上げて、自分自身もソフト老害と呼ばれずに済むのか。自分がまだ若手だった頃の体験を思い出しつつ、少し考えてみました。
① アイディアをブレストする場を作る
がんじがらめの環境下でルーティンワークに追われていると、アイディアを吐き出す場所も考える時間もなくフラストレーションが溜まるもの。しかも、考え方は内向的になって、思い切った打ち手を考えられえられなくなったり、思考停止に陥る事はよくあります。フローに沿って作業を正確にこなす作業者としてはすごく優秀なのに、業務改善や業務構築になると途端に動きが鈍るのがこのケースです。
そうならないために、自分が業務運営をする中で、気になった事、気付いた事、改善すべき事を定期的に吐き出してもらう機会を設ける事は解決策の1つであり、成長の第一歩。中には考えが及ばず、なかなか意見が出ない若手もきっといるはず。それでも、周りのアイディアを聞いていくうちに徐々に着眼点が整理され、考え方や発想が醸成されていきます。
直近だと、私の所属する採用部門に今春2名の新卒社員が配属されたのですが、毎月行う部会の中で自分が考える業務の改善策を発表してもらいました。最初はたどたどしさ(初々しさと言うべきか)があってヒヤヒヤしましたが、発表する内容は回を重ねる毎に徐々にレベルアップ。アイディアは「その視点があったか」と気付かされる事もあったし、発表する立ち居振る舞いは堂々としてきて、思わずその姿に目を細めてしまいました。
特に既存の業務に染まり切っていないフレッシュな視点は貴重。同じ業務にずっといると安定感があって理解が深い分、どうしても考えが硬直して柔軟性がなくなってきます。逆に若手だと、時には突拍子もない無邪気な意見も出てきますが、上司やクライアント企業、今までの歴史に忖度せず、フラットな視点で目からうろこのアイディアが生まれる可能性はあります。その型破りな考えを引っ張り出すには肩肘張らずにブレストする場を用意するのがうってつけです。
②実現するための道筋を具体的に想像してブラッシュアップする
アイディアを吐き出していくうちに、出てくる意見がどこか他人事で荒唐無稽になっていく事がよくあります。第三者目線は大事ですが、実際に改善を行うのは自分自身。その視点がなくなると、「あなたは評論家ですか?」と突っ込みたくなる事も実際に何度かありました。実現性を考えず、アイディアを出す事自体が作業になってしまうと、そもそもの趣旨に反してきます。
そうならないように、どうすればそのアイディアが実現出来るのかという視点が必要。実現に向けての障壁は何か、それを取り払うためには、どこに働きかけて、どこと交渉するべきなのか。実現するためには費用がかかるのか、かかるとすればいくらなのか。投じた費用や工数に見合うだけの効果はあるのか、などなど。より具体的に実現に向けての道筋を想像してもらう事が次のステップです。
当然、若手一人だけでは思いつかない事も多いはず。その時は、あなたはもちろん、先輩、同僚、後輩も実現に向けての課題や疑問を臆せず確認していきましょう。そうしていく事で徐々に磨き上げられ、アイディアは現実味を帯びていきます。もちろん、その段階でおとぎ話のように非現実的なものや、効果が期待出来ないものは自ずと振るい落されていきます。
ここで大切なのは、アイディアをなんとなく、ふんわりと抑圧するのではなく、支持出来ない理由や問題点、改善すべきポイントをうやむやにせずに明確に伝える事。当然、伝え方に留意する必要はありますが、ディスカッションを重ねる事でアイディアが肉付けされたり、時には不要なものが削ぎ落されえて、洗練されていきます。若手にとっては確実に試練ですが、このやりとりを経て成長するし、アイディアが採用されなかったとしても、納得度合は全く違ってくるでしょう。
② 上司やクライアントにプレゼンする機会を用意する
ブレストとブラッシュアップを経て生き残ったアイディア。どうせだったら上司やクライアントにぶつける機会を用意してあげたい。そのアイディアが実際に実現するかどうかはもちろん大事ですが、それ以上に大切な事は上司やクライアントに対してプレゼンして、フィードバックを受けるという一連の流れ。これは社会人としてキャリアを積む上で若手にとっては簡単には得られない貴重な体験です。
前述した新卒社員が行った発表には幸運な事に担当部門の役員と部長も参加してくれました。新卒はとてつもなく緊張したと思いますが、普段あまり接する事がない上役の方に直接プレゼンして、時には褒められ、時には質問される場面は正直羨ましかった。。。
自分が新卒の頃なんて、部長と話す機会なんて全くと言っていいほどなかったし、役員なんて雲の上の存在というか、もはや歴史上の人物。そんな方々を前に話をする事で度胸も付くし、現場とは違った視点で別角度からの講評をもらえる事は視野を広げる意味でも明らかにプラスになったはずです。
ここまで進めば、仮に自身のアイディアが採用されなかったとしても、納得感もあるでしょうし、成長した実感もあるでしょう。さらに中間管理職にとって重要なのは、機会や場を提供するだけでなく、アイディアの精査のために伴走する事。一緒に走ってサポートする事で部下の信頼感も全く違ってきます。これできっとソフト老害とは呼ばれないはずです。
ソフト老害?ハード老害?
でも、これにて一件落着、めでたし、めでたし。そうかと言えば決してそうでもありません。実際に①~③を行うとなると、中間管理職も、若手社員もそれぞれ覚悟と労力が必要になってきます。
中間管理職にしてみるとブレストを行う時間を捻出して、丁寧にディスカッションに付き合う必要があります。時にはうやむやにせずにしっかり指摘をしなければばらないし、議論をリードしてヒントを与える必要もあるでしょう。場合によっては上司やクライアントとの調整も入ります。これはこれで根気がいる作業です。
一方の若手もアイディアを捻り出して、作り込んでいくのは相応の労力。日々のルーティン業務をこなしながらその時間を捻出するのは一苦労です。そして最も覚悟がいるのは、明確な指摘を正面から受け止めて、物事を前に進めるだけの胆力。心が折れずに前進していくための強靭なメンタルが求められます。
ソフト老害は「ソフト」と呼ばれるだけあって、ふわっと抑え込む、やんわりと丸め込むのが特徴のため、若手はモヤモヤが残ったとしても、ダイレクトな痛みは感じにくかったでしょう。それが疑問点や改善点、アイディアの良し悪しなどを明確に指摘されるとしたら、中にはダメージを受ける人もいるかもしれません。きっとのこの時、中間管理職はハード老害?と呼ばれているはずです。
○○老害と呼ばれないこと以上に大事なこととは?
ソフトなのか、ハードなのか。どちらにしても、中間管理職は配下メンバーから疎んじられる宿命なのかもしれません。でも、顔色ばかり気にして、腫物に触るように接していても始まりません。私たち中間管理職の目的は決して「ソフト老害」「ハード老害」と呼ばれないようにする事ではなく、若手に成長してもらう事、それによって会社や組織も成長する事。それに尽きます。
そのために、時には自身で考えさせ、時にはアドバイスを与え、時には共に悩み、時には愚痴を聞き、くじけそうな時には支えていく事。ソフトもハードも織り交ぜて、成長させていく事が求められているのではないでしょうか。その上で、○○老害と呼ばれるなら、もうそれはそれで本望かなと。もしかしたら、若手からは「もうええでしょう」とバリアを張られる事があるかもしれませんが、2025年も愛のあるソフト老害、ハード老害でありたいと決意を新たにしました。本年もよろしくお願いします!
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