「定型化すれば安心」に潜む罠 〜あえて属人化が必要なときもある〜

HUMAN

形柳亜紀

「定型化=安心」と思っていませんか? 定型化が進むほど、なぜか現場がうまく回らない——そんな経験は少なくないのではないでしょうか。 肉じゃがレシピから面談の“首トレーニング”まで、属人化を恐れず、定型化との“バランス”を探るヒントをお届けします。  ぜひご一読ください。

「このセンター、定型化されていないですよね」
新人や異動したばかりのスーパーバイザーと話していると、よく耳にする言葉だ。たしかに、私たちの仕事は「仕組み化」や「定型化」がなければ成り立たない。マニュアルや手順が整備されていれば、誰が対応しても一定の品質を担保できる。再現性は、コールセンターやBPOにとって生命線だ。

しかし——。本当に「定型化が足りないこと」が現場の課題なのだろうか。私はそこに違和感を覚えている。

「定型化されてない!」は本当にそうか?

新人が「マニュアルに書いていないから分からない」と訴える場面は少なくない。だが中身を確認すると、多くは次のどちらかである。

1.マニュアル以前の基礎知識が不足している
2.マニュアルは存在するが、探しにくい・使いにくい

つまり「定型化が足りない」のではなく、読み解く力やアクセスの仕組みの問題であるケースが多いのだ。

肉じゃがレシピに学ぶ“定型化の限界”

料理のレシピは究極の定型化だ。材料の切り方、順番、調理法、味付けまで書かれている。だが料理をしたことがない人が肉じゃがを作ろうとしたらどうだろう。

•「じゃがいもの皮ってどうむくの?」
•「水にさらす理由は?省略してもいいんじゃない?」
•「くし形切り?乱切りって何?」

疑問だらけになるはずだ。レシピが悪いのではない。前提知識が不足しているから理解できないのである。これは新人が「定型化されていない」と感じる場面とよく似ている。

イレギュラーを“必修科目”にしてしまった話

現場では「定型化」という言葉が印籠のように使われることがある。しかし時に「それ、本当に定型化すべきか?」と疑問に思うケースに出会う。私自身の経験だ。

ある業務をお客様先で受電しながら学び、少しずつ定型化していったときのこと。その中で、ごく稀にしか起こらないイレギュラーを一度だけ経験した。当時はまだ10本しか受電していなかったので、その1本は強烈に記憶に残った。結果として、その対応が「新人研修の初日に覚えるべき必須スキル」としてマニュアルに組み込まれてしまったのだ。実際には滅多に発生しないにもかかわらず、全員が必修として覚えるものになってしまった。

——これは、定型化を急ぐあまり学習のバランスを崩した典型例だ。

首トレーニング面談 ——味わいが消えた瞬間

定型化が強力に機能するのは、業務知識やフロー理解である。だが、人と向き合う領域——たとえば面接や研修講師には「味わい」が欠かせない。「味わい」とは、自分の色を足すことで人に伝わる力が生まれることだ。

思い出すのは、ある先輩のことだ。外部のコーチング研修を受けたあと、面談でやたらとうなずく人になってしまった。「うなずきながら聞きましょう」と指導されたのを忠実に守ったのだろう。しかし、会話のたびに首が上下する。相槌というより、もはや首トレーニングだ。面談を受けているこちらは、頷きのリズムばかり気になってしまい、肝心の内容が頭に入ってこなかった。

これはまさに「味わい」が欠けた状態である。行動そのものはマニュアル通りで正しい。だが、そこに本人らしさや自然さが加わらないと、不自然さばかりが際立ってしまう。つまり、型を守るだけでは伝わらず、むしろ逆効果になることすらあるのだ。

研修講師も同じである。マニュアル通りに進めれば基本は押さえられる。だがそれだけでは受講者の心に響かない。場の空気を感じ取り、自分の言葉で語りかける余白があって初めて、学びが腑に落ちる時間になる。

私の恩師はこう言っていた。「定型化しながらも【味わい】を残すんだ」。「味わい」を加えることで、伝える力は格段に強くなる。定型化と同じくらい、この視点を大切にする必要がある。

定型化はタイミングを間違えると毒になる

もうひとつ注意したいのは、定型化のタイミングだ。新人研修の設計や、難しいお客様対応のトークスクリプトを磨き上げるとき。最初は属人的に、担当者が試行錯誤しながら「これなら効果が出る」というやり方を積み重ねていく。この段階で「早くマニュアル化しよう」としてしまうとどうなるか。まだ完成していない途中のやり方が定型化され、結果として定型化自体の質が下がる。たとえ属人的に見えても、まずは現場で成功体験を積み重ねることが重要だ。

「この研修方法なら新人の習熟が早い」「このトークなら難しいお客様もうまく収まった」そうした確かな事例を組織として持つことに意味がある。定型化とは、本来その成功体験の“ピーク”を切り取って再現可能にする作業のはずだ。チャレンジの途中で拙速にルール化すれば、組織の学習は浅くなり、将来の可能性を狭めてしまう。

結局、現場を強くするのはバランスだ

定型化は現場を守るための強力なツールだ。だが万能ではない。「定型化すれば安心」という信仰をいったん脇に置く。品質や生産性を高めるために現場がどう学び、どう工夫していくのか——。私たちが立ち返るべきは、その原理原則である。

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