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脱・属人化のための5つのポイント ~ノウハウの体系化と定着~

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2022.01.19

近年のピアノブーム。
昨年も今まで以上にショパンコンクールに注目が集まり、私もその流れに違わず、ミーハー的に “予選からチェックする” というどっぷりな状況でした。結果が結果でしたから興奮状態を保ち、私のクラシック音楽への関心は熱いまま続いております。

様々な解説や聴衆のコメントを見る中で、改めてクラシックの威力はすごいものだと感じます。一体どれくらいの人たちが関心を持ち、このブームを作っているのでしょうか。

盛り上げている中心にいるのは、やはりピアノ経験者の方々でしょう。日本のピアノ人口は、200万人とされているそうです。そんなに多くの人たちが、ジャンルはいくつかに分かれるものの、ほぼ同じ完成形を目指して日々頑張っている、これはすごいことです。「いかに作曲家の思いを受け継ぎ再現するか」、この共通の関心は、ものすごいエネルギーを持っているように思います。

さて。
同時に、私はこんなことを思ったのです。「この構造、仕事のノウハウの定着に活かせないか?」

作曲家とピアニスト、仕事を作る人と受け継ぐ人

作曲家は、自分の思いを事細かに楽譜に残していきますが、それが何百年も引き継がれているのですから、クラシック音楽とは正に、脱属人化の代表格と捉えることが出来ます。また、ピアノは気軽に始めることが出来ますし、素人でも習ってみたいと思わせる魅力も持ち合わせています。さらに、限りなく作曲者本人の原曲を再現できる人(先生)が一定数いる世界では、その本質が淘汰されることはなく、受け継がれていきます。

この素晴らしさは、①再現の価値 ②合理性ある楽譜 ③楽曲価値への支持・共感 ④先生の層の厚さ ⑤聴衆の満足 の要素で捉えることが出来ると思います。

会社の組織における文化・ノウハウの伝承も、こんな仕組みを作れたら素晴らしいものになると思います。
しかし実態としては、

  • 「●●さんが異動したら、今の仕事の質が保てない、困る。」
  • 「自分の異動のタイミングでマニュアルを作ったのに、使われないままになっていて、全然浸透していない。」
  • 「組織の課題も後戻りしているようだ。」
  • 「引き継ぐ人がいない。」

このような属人化の課題を抱えている状況や、属人化を乗り越えられず失敗してしまった状況が身近にあるのではないでしょうか。

仕事におけるノウハウは、資料化しただけでは伝承できません。そこには名曲の楽譜のような、崇拝や聴衆を虜にする魅力はまだ発揮されていませんから、素敵な後任者が現れて、素晴らしく読み取って再現してくれるということはまず期待できません。

では、どうしたら、ノウハウとして伝承することが出来るのでしょうか。先ほどの5つのポイントに当てはめて考えてみます。

その1:再現の価値・メリットーノウハウとすべき情報とは何か

~再現の価値:価値ある曲が、受け継がれる~

まず、最初に抑えておきたいのが、伝承していきたいとするノウハウの対象です。仕事には、多くの情報が存在しますが、中には、やれば分かるもの・ノウハウまで行かないメモや操作方法なども含まれます。そのすべてノウハウではありません。30分格闘すればできるようになる単純作業は、長い時間をかけて伝承する必要はありません。情報を整理しておくだけで充分です。

ここで大切なのは、組織の中の「重要なこと」の見極めだと思います。来年も3年後も5年後も、再現することで得られるメリットが、大きいものこそ、実は資料化・明文化されていないということはないでしょうか。

大切なノウハウは、個別の作業説明だけではないはずです。まずは対象となる価値ある情報から整理したいものです。手順書には書かれていない工夫、経験から生み出した運用・成果の歴史、状況による判断軸など、属人化しやすいノウハウとは、そういったことかもしれません。


その2:分かりやすい資料ー第三者でも分かる情報量・表現で示されているか

~合理性ある楽譜:楽譜の簡潔さと網羅性~

仕事において誰が見ても分かる資料とは何でしょうか。よくある落とし穴は、「資料があること=ノウハウ」として終わらせてしまうことです。しかし、資料は「教育」「課題のための施策」等、様々な目的で作られているため、後から見返した時に、そのノウハウとしての本質が分からないものも少なくありません。

例えば、キャラクターをたくさん配置して華やかにした資料や、「今不足している」と思われる点に着目して、限定的な表現になっている資料もあります。もちろんそれらの資料が、「今の教育」の為の一時的な資料であれば全く問題ありません。しかし、その組織が持っているノウハウは、そこには集約出来ていません。

伝承したいノウハウは、網羅的・形式的であったほうが、本質が伝わります。分かりやすい記載で網羅しているからこそ、その後アレンジも出来るのです。「一部を切り取ってアレンジしたもの」の伝承では、歪んで伝わってしまうこともあります。軸としてのノウハウは、全体像を網羅し、誰でも分かりやすい形式で持っておくことが大切です。


その3:周りからの支持ーノウハウの提供する価値・内容に、共感・賛同があるか  

~楽曲への支持・共感:支持あってこその演奏機会~

次に、ノウハウに身近な支持者がいるかどうかです。楽曲も、どんなに作曲家が作曲しても演奏の機会を与えられなければ、広まりません。そういった身近な協力者の賛同が不可欠だと思うのです。

仕事のノウハウには、流儀もあることでしょう。そうなると一般化されていない流儀も当然含まれてきます。しかし、個人の流儀のみでは組織において価値が薄れてしまいます。【組織として価値あるもの】に昇華させることで、ノウハウの意義が高まります。

資料化は一人で行わず、協力者や承認者がいた方がベターです。ネゴシエーション・共有・意思表示も支持には大切な要素です。ワンマンではノウハウの定着は難しくなります。


その4:伝達者の育成ー組織の中で複数人が習得している状態を保つ

~先生の層の厚さ:すぐに学べる環境~

続いて、伝達者の育成です。実は、これが最も大切だと思っています。

よく「脱・属人化のために、マニュアルを作成せよ」となりがちですが、結局は人が伝達しないことには価値が下がる一方です。もっと言ってしまえば、ノウハウが体系化・資料化されていない状態でも、人が直接伝達し続けられるのであれば、それはまさに職人技術のように、資料より深い伝承になるに違いありません。

しかし、仕事は時間が限られていますし、年中行動を共にすることも難しいため、やはり、体系化・資料化ののちに、同時に複数人に「スキル・ノウハウの共有」をしておくことが大切だと思います。仕事におけるノウハウは不変ではないため、常に複数人が出来るようにしておくことは「改善・調整」を促し、質を高めることにも繋がります。常に複数人が習得している状態こそ文化となるのです。

また、特に【ノウハウの理解】の共有にとどまらず、【ノウハウの実行】という【行動面】を共有することがポイントです。

例えば、当社には、「ミライ転換力」という顧客応対ノウハウがあります。このノウハウには、「基本の考え方」 という本質的な部分と、それを伝承するための「教育・活用」といった運用までが含まれます。これを周囲のメンバーと共有するためには、本質的な理解が欠かせませんが、実は行動を伴わない【理解】を共有し続けることはとても難しいことです。

【理解】を確認し合うことから始めるより、例えば「ミライ転換力の研修講師」という【ノウハウの実行・行動】に関わることから共有することで、伝達できる人は確実に増えます。【行動】を日常にすることで、より深く考える機会が得られ、圧倒的に深くスキルを共有することが出来ます。


その5:関係者全員にとっての価値ーユーザー視点での利用価値・意義を考える

~聴衆の満足:技術より、曲そのものの魅力が、聴衆を魅了する~

最後の一つは、ユーザー視点での価値の大切さです。ノウハウとは、実行する人のメリットに依存しやすい傾向があります。しかし、企業内や管理者の視点でノウハウに素晴らしい価値があったとしても、ノウハウが最終的に提供する、その先のユーザーや関係者にとっての成果が薄れていては意味がありません。

例えば、【インサイドセールス営業における、顧客販売力の強化】というノウハウがあったとします。この価値は、ノウハウを使う側からすると、「コストを抑えて効率的に、売上を獲得できる」というメリットが想像できます。しかし、結果購入した顧客側が、その過程で感じる “分かりやすさ” や “信頼” といった点が得られず「満足度」が低い結果だったらどうでしょうか。そのノウハウは長持ちしません。

ノウハウが、効率的な観点では大変優れていたとしても「顧客満足度」が高くなければ、そのノウハウ自体、淘汰されていくものとなります。つまりノウハウとは、一部のメンバーで共有されるメリットのためのものになり易いですが、ユーザー視点でのメリットのある仕組みかどうかを常に見極めなければなりません。

ピアノで言えば、「上手く弾くためのコツ・テクニック」だけでなく聴衆が「聞いていて美しい」「共感できる」と思うことが大切です。このユーザー視点でのメリットが、「習得したい」と思う伝達者の増加にも繋がります。これこそが良い文化伝承の循環なのかもしれません。


5か条まとめ

  1. 【再現の価値・メリット】ー資料化するにふさわしい内容か
  2. 【分かりやすい資料】ー第三者でも分かる情報量・表現で示されているか
  3. 【周りからの支持】ーノウハウの提供する価値・内容に、共感・賛同があるか
  4. 【伝達者の育成】ー組織の中で複数人が習得している状態を保つ
  5. 【関係者全員にとっての価値】ーユーザー視点での利用価値・意義を考える

最後に、5か条に含められなかった思いを書かせてください。
私は教育部門におり、現場のノウハウを求めてインタビューを時々させてもらっています。理論だけで絶対にノウハウはできず、毎日の経験の積み重ねがあるからこそ生まれるものだからです。インタビューの際と、私から見たら「流石の素晴らしいノウハウ!なんて素敵な工夫!」と思うことも、現場の皆様には日常のこと過ぎて、ノウハウとして認識していないことがよくあります。

もしかしたら皆様の組織でも同様のことが起きていないでしょうか。「日常のこと過ぎて、特別なことだと感じていない」状態は、それはそれで行動として浸透していて素晴らしいのですが、それを【ノウハウ】として認識・自覚することで、より多くの人の目に触れ、さらにブラッシュアップされていくことと思います。

是非、皆様の組織に眠っている「ノウハウ」探しのきっかけにして頂けたら幸いです。

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詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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