ずっとYouTubeなど配信で楽しんでいたコンサートも、やっと少しずつホールで楽しめるようになってきました。とはいえ、以前と同じようにとはいかず、必ずチケットに名前と電話番号を明記するような指示や、入場の際の検温が行われるなど感染拡大防止策がとられています。
開演5分前には、こんなアナウンスがありました。
「感染拡大防止のため、ブラボーなどのお声がけはお控えいただけますようお願いいたします」
世間は、長友選手の「ブラボー」に沸いていますが、コンサート会場ではいまだ「ブラボー禁止」は健在です。ホールによっては、「感動のお気持ちは、拍手で頂戴できますと幸いです」のアナウンスが付け加えられることもありました。
そんなにこれまで「ブラボー」と歓声を上げていた人がいただろうかとやや疑問に思うところですが、以前に比べるとそのかわりにスタンディングオベーションが増えた気がします。正直、日本のコンサートでは、毎度スタンディングオベーションをする印象はなかったので、「ブラボー禁止効果」とも言えるかもしれません。
更に、声が出せないからと、「BRAVO!」と書いてあるタオルを掲げるお客様や、アイドルのコンサートでよく見るキラキラのうちわを持って感激を表す人々も現れました。禁止されると、人はいろんな策を考えるのですね。
賞賛のブラボーに限らず、敬意・感謝・お詫びなどの気持ちを相手に上手に伝えられたら、とてもステキですね。日本人はブラボーどころか、とかく謙虚でへりくだった言い回しを選んでしまいがちです。
そこで今日は、「ブラボー禁止効果の蔓延」ならぬ、コールセンターで蔓延しがちな「~させていただくの蔓延」について、お話しします。
間違いとは言い切れない問題
「させていただく」の多用は、文化庁の敬語の指針でも“問題”として取り上げています。
要約すると、「させていただく」を用いた表現は、適切な場合と、あまり適切だと言えない場合とがある。ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。そのため、上記のア)イ)の両方を満たしていない場合は不適切と判断されるが、上記を満たしていなくても、文脈によっては必ずしも不適切とは言えず、ア)とイ)を満たしているかのように見立てて使うこともある。その見立てがどの程度自然なものとして受け入れるかということが、その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる、と記されています。
例えば、「拝見させていただきます」は、「拝見する」(謙譲語)+「させていただく」(謙譲語)と敬語が2つ重なっているため二重敬語で明らかに誤りですが、このような明らかな間違いを除いては、やはり、前回の「日本語は正しければいいといわけではない」に書いたいくつかのフレーズと同様に、「させていただく」は、全てが間違っているとは言い切れないフレーズです。
<参考>
文化庁 敬語の指針「6「させていただく」の使い方の問題」
違和感ありあり問題
「わたくし〇〇は、かねてよりお付き合いさせていただいております、□□さんとこの度結婚させていただくこととなりました。」
芸能人の結婚発表で目にする文面です。世間一般に披露する場面で、一体誰に対して「~させていただく」と言っているのか、不思議な気持ちになります。
上記の文化庁の定義で言うと、ア)相手側又は第三者の許可を受ける に合致しません(お付き合いや結婚に世間の許可は不要)。しかし、この表現も、お相手を紹介した相手に対して伝えるのであればよいとも言えるかもしれません。
違和感があるフレーズと言えばもう一つ、「反省させていただきます」。
全然反省しているように聞こえません。これは、もはや間違いフレーズなので、使ってはいけません。
文化庁の定義では、ア)相手側又は第三者の許可を受けるは不一致(誰かの許可がなくても反省はしないといけない) イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合も不一致です(反省に恩恵を見出すのはおかしい)。
実は、言いづらい問題
ここまでで「~させていただく」は適正な場合と不適正な場合があることについて説明しました。しかし、敬語の正しさとは別に、コールセンターでは、「~させていただく」をお勧めしたくない理由があります。
「お送りさせていただきます」「お伺いさせていただきます」「変更させていただきます」・・・
実は、とても言いづらいのです。実際に、思わず噛んでしまっている応対をよく耳にします。
突然ですが、次の早口言葉を言ってみてください。
<サ行> ジャズ歌手シャンソン歌手 新春シャンソンショー
<タ行> 隣の竹垣に竹立てかけたのは、竹立てかけたかったから、竹立てかけたのです
スムーズに言えたでしょうか。
トーク研修で滑舌をよくするために、苦手な行を探すワークをしますが、苦手な行ナンバー1,2は、「サ行」と「タ行」です。「させていただく」は、この「サ行」と「タ行」の両方がふんだんに入っているフレーズです。「させていただく」が一度ならまだしも、連続していたら言いづらいに決まっています。
使いすぎてくどくなる問題
あまり友達と話すときには出てこないフレーズですが、プレゼンやメールでも比較的よく伝われているのが、この「~させていただく」です。実は、私自身思わず連発してしまい、反省することがよくある表現でもあります。お客様や上司を前にすると、どうしても使いたくなるのです。
私が使いすぎてしまうのは、報告会やメールでの場面です。
報告会は改まった場面です。「〇〇の報告をさせていただきます。」と冒頭から「させていただく」を使ってしまいます。冒頭だけならまだしも、報告会中にも何度も“させていただきすぎて”大いに反省することもあります。メールでは、以下のように書いてしまい、あとから読み返すと、多いなと感じることがあります。
「~の結果を納品させていただきます。
〇〇につきましては、あらためてご連絡させていただきます。」
たった2文なのに2箇所も使っています。
とはいえ、メールの文章はもっと長いこともあり「させていただく」を一度も使わずに書こうとすると結構難しいこともあるので、連続させない、そして一つの文章で何度も使わないくらいのゆるめのルールを決めて書いています。
さて、コールセンターでも、「~させていただきます」を使いすぎて、くどさを感じるフレーズをよく耳にします。
「○○様、ご不明な点は全てご案内させていただいて、ご説明させていただきまして、お手続きさせていただきます。」
応対によっては、ここまでてんこ盛りになることもあります。
オペレーターさんは、お客様へ敬意をもってお話したい一心から「~させていただく」というへりくだった表現を多用しがちです。
「~させていただく」を「~いたします」という語尾に変えて、自然に感じよく伝えられるといいですね。
「させていただく」の断捨離
では、最後に「~させていただく」を減らす方法です。
「~させていただく」の改善には、スクリプトのチェックから始めることをお勧めいたします。ぜひ、スクリプトの中にとても言いづらい「させていただく」が入り込んでいないか、確認しましょう。
特に“丁寧さ”を重視しているセンターでは、使いすぎている可能性があります。先述の通り、オペレーターさんも丁寧に話したい気持ちを持っているからこそ、どんどん増えてしまう恐れがあるので、スクリプトはすっきりと言いやすいフレーズにしておくことが大切です。もし、たくさんある場合は、「~いたします。」など一部フレーズを変えるだけで、格段に言いやすく変わります。
フィードバックの場面でも、単に「~させていただく」を減らしましょう、とアドバイスするだけでは、減るどころか「させていただきたいと存じます」ともっとくどく言いづらいフレーズを編み出すなんてこともあるのです。ブラボーを禁止されると、「ブラボータオルを掲げる」という新たな技を編み出してしまうケースと同様です。
よって、フレーズを変える指導は、「使わないで」ではなく、「このフレーズに変えましょう」が鉄則です。
そろそろ年末です。
私は、大の苦手な掃除をさせていただいてして、断捨離ですっきりとしたお部屋で新しい年を迎えたいと思います。
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