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マンネリでもいい。まずは徹底してほしい。

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HUMAN

古川真澄

2024.02.21

現場ドリブンの記事を書くときに決めていることがある。それは、「自分のことは棚に上げる」ことだ。今回も自分のことを特大の棚に上げていることは自覚しているので、関係各所には諸々ご容赦いただきたい。

■対策を捨てたくなる時

コンタクトセンターは、それを成立させるプロセスが多いこともあってか、問題を抱えることが多い。そのためスーパーバイザーは問題解決に当たる。具体的には、問題を定義し、問題を発生させる原因を突き止め、課題を設定して問題解決を目指す。理想だ。ただ、問題解決のために対策をとっても、時に問題が解決しないことがある。

そんな時、ただ焦って新しい対策を考えてしまうことはないだろうか。

今取っている対策が的を外したものであるならば、その対策はとっとと捨てたほうがいい。思いつきで始めてはみたものの、実は問題を発生させている原因に対して全く作用しない対策だった、原因の特定が甘くてボヤけた対策になってしまったなど、対策を捨てる理由はいくつかある。

そんな時は改めて問題の原因を分析し、課題を正しく設定しなおせばいい。きっと前の対策よりも良い結果が出せる。でも、今取っている対策がさほど的を外しているとも思えないものならば、何の確認もせずに捨てることはいったん思い留まった方がいい。きっとまだできることがある。

■嫌われる「マンネリ化」

同じ対策を繰り返していると、「なんかマンネリ化してきたね」なんて言ってその対策を捨てたくなることがある。でも、コンタクトセンターにおいて対策がマンネリ化することは、そんなにも悪いことなのか。念のためマンネリの意味を調べてみた。「同じ趣向が繰り返されて、新鮮さを失うこと。特に、芸術作品などで、手法・様式などが型にはまって、独創性を失うこと。(広辞苑)」とある。

確かに芸術分野において、使い古された手法を繰り返し飽きもせずに使い続けることは、新鮮さという意味において歓迎すべきことではないのかもしれない(正直、芸術分野に対してまったく見識がないので、この言い様が正しいのかはなはだ自信がない)。しかし、スーパーバイザーが直面しているのは、コンタクトセンターで生まれる問題だ。そこでは別に、対策の新鮮さや独創性は求めていない。求められているのはあくまで、対策によって生まれる成果だからだ。

成果が出ない理由は大きく二つある。一つは原因分析が甘く対策が的を外していること。そしてもう一つは対策が徹底できていないことだ。意外にも後者が原因で成果がでないことはままあり、「なんかマンネリ化」くらいのボンヤリとした理由で今の対策を捨てるのは得策ではない。その対策が適切なものであるならば、成果を出すために必要なことは、その対策が必要な対象にあまねく実行されることだ。実は、ここが意外と難しいのだが、あまり意識されていないように思う。いきなり次の対策に飛びつく前に、対策が徹底できているか確認することを強くお勧めしたい。

■だからその対策は徹底が甘くなる

徹底が意識されていないなぁ・・・・と思うケースはままある。対策を実行しているSVから次のような報告を受けると、その徹底状況をもう少し確認したくなってしまう。

①    周知しました
新しいやり方やルール等をオペレーターに展開する時に、コンタクトセンターで使っているポータルサイト等の周知掲示板でお知らせを出すことはままある。そして言う。「全体に周知しました」。そして一つの対策が完了する。

もちろん、周知は必要だ。問題解決への対策としてこれまでのやり方やルールを変える時は、まず周知が第一歩だろう。でもこのやり方は、あまりにオペレーター頼みだ。これまでのやり方やルールを変えるということは、習慣を変えるに等しい。一言「変えてください」と言われて美しく修正がきくようなものではない。

完全に私事で恐縮だが、年末に大掃除をした時に、左の引き出し(救急箱)と右の引き出し(ドライバーなどが入ったお道具箱)を誤って入れ替えてしまった。あとで引き出しの入れ替えに気づいたものの、面倒くさくて元に戻していなかったため、絆創膏が欲しければ左をあけて「ない」となり、お次に右を開ける、といった日々が続いた。今や何が右で何が左かわからない。もはや右が救急箱で左がお道具箱なのかも自信がない。一発で絆創膏を取り出せるかは、賭けの状態になってしまった。

たかが引き出し一つでここまで混乱するのだから、習慣を変えるためには周知だけでは新しいやり方やルールを染み込ませるのは実に難しい。引き出しを入れ替えてしまったなら、新しい配置がわかりやすいように「救急箱」「お道具箱」のシールを貼るなどの対応が必要だった(いや、本来、引き出しを元の場所に戻すのが正解だということはわかっている)。

コンタクトセンターも同じように、やり方やルールを変えるなら、周知だけで終わらせるのではなく、その変更の内容に応じて、オペレーターが実行しやすいよう、次のように環境を提供しなければならない。

・周知内容を個別にレクチャーする
・周知内容を覚えていなくても正しい対応ができるよう、変更ポイントをスクリプトに反映し、スクリプトさえ読めば正しく対応ができる環境を整える
・使用ツールやシステムに修正を加え、オペレーターが迷わず対応できるようにする
等々。もちろん、これらを一気に提供すべしというわけではない。このような視点で「実行しやすい方法」を検討すべき、ということだ。

他にもいろいろアイデアはあろうが、このアイデアを絞り出すのがSVの仕事の真骨頂であり面白いところだ。対策を打つなら、その対策をオペレーターに伝えるだけではなく、まずはオペレーターが「実行しやすい方法」を提供する必要がある。そして、その「実行しやすい方法」をすべての対象者に行き渡らせなければならない。それが徹底するということだと思う。


②    指導しました
オペレーターに対し、新しいやり方やルールを指導することがある。周知するだけよりも一歩踏み込むことができていて良い。ただ大事な視点が抜けている。オペレーターに指導をしたことが確実に実行されているか、について、果たして確認はお済みだろうか。

上にも書いたように、習慣を変えることは簡単ではない。一度新しいやり方やルールを教わったからと言って、即ち「できる」ことにはならない。指導をした後は、実際にその指導内容が実行されているかの確認が重要だが、これが実に抜け落ちる。指導をしてもその指導内容が実行されなければ、対策の成果を出すことはできない。

オペレーターに指導をしたら、隣でその実行状況を見守ろう。新しいやり方やルールは、ただ新しいというだけで実行しづらいものだ。オペレーターがそのやりづらさを乗り越えて、実際に実行できるようになるまでサポートし、変化までを確認してほしい。

■どこまでを「やった」とするか

徹底が甘くなる理由は、対策の実行をSVのタスクに分解したところで、そのタスクの実行自体が目標になってしまうことだ。即ち、「新しい対策を周知する」「新しい対策のやり方を指導する」ことが目標となり、その先に実際に必要な変化が訪れたかの確認まで意識が及ばなくなってしまう。

スーパーバイザーにはやることがたくさんあり、とても忙しい。だから、周知や指導もそのやることの中の一つに組み込まれる。そのような状況で、成果が出るまで同じような周知や指導を繰り返し、その途中で「なんかマンネリ化してきたね」と言って新たな対策をひねり出すことは、本末転倒であるし、新たなタスクを増やすことに他ならない。まずは、歯を食いしばって必要な対策を徹底してみよう。

■徹底の後に

対策を徹底しても、それがすぐに成果に反映されることはない。対策の徹底は事の始まりであり、そこから習熟を経て成果へとつながっていく。辛い時期が続くかもしれないが、SVには対策を徹底しながら小さな変化に敏感になってほしい。SVが対策を徹底すれば小さな変化はきっと訪れるし、その小さな変化が積み重なっていけば、初期はその変化に波はあるものの、いつか成果につながっていく。

その対策が、しっかりとした原因分析の上に成立したものであるならば、マンネリ化などという言葉に怯えず、まずは徹底してみることだ。成果が出るまで徹底された対策は、マンネリではなく、いつか王道と呼ばれるようになるかもしれない。

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