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Thank you!義務教育 “SVは人にやらせるのが仕事”の危うさについて

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HUMAN

形柳亜紀

2023.08.02

私は、数字がキライな子供だった。3の次は4であり、4の次は5であることを覚えるのが嫌だった。たぶん、ストーリーのない暗記がキライなんだと思う。ちなみに、同じように右と左も覚えられない。
偉そうに分析したが、要は数字に弱いのだ。
数字に強い人からすれば、その暗記の先に、魅惑的なストーリーが数字にはあるのだろう。私は初動でこのように躓いた人生だから、10歳の時には、受験科目に数学がない「私立の文系大学」しか受験しないことを決めていた。

それでも、残念ながら10歳の決意はむなしく、15歳の高校受験までは真剣に数学を勉強することを余儀なくされた。
あんまりに数学がキライだったので、母に「なんで大学受験では数学はいらないのに、今勉強しないといけないの?」と聞いた。すると「それは人生の組み立てのためだよ」と返された。10歳の私には全く意味が分からなくて泣いた。
「数学を学ぶのは人生の組み立てのためである」たいていの言葉は大人になると意味がわかってくるけど、これは大人になっても意味がわかるようで、よくわからない言葉の一つだ。
「私に数学の才能がなさすぎるから」かもしれないし、「そもそも意味があるようで、全く意味がない言葉だから」なのかもしれない。
高校生になってもその強い決意は揺るがず、私立の文系大学しか受験するつもりがなかったので、高校の数学はまじめにやった記憶もないし、何なら3年生の時には数学の時間を体育に振り替えてもらえる学校で最もやる気のないクラスにいた。
私の数学は15歳で終わった。

しかし、大人になって、中学まで数学を勉強させられた意味をかみしめている。
「食塩水の濃度」を求めることができるから、「センターのミス率」を計算できる。
「A君のクラスの算数のテストの平均値」を求めることができるから、センターのAHTを計算できる。
もし、日本に義務教育がなく、私が10歳で数学(当時は算数だったわけだが)を勉強するのをやめていたら、大人になってからかなり支障があっただろう。
Thank you! 義務教育!!義務教育がなかったら、私は本当にヤバかった。

社会人の義務教育

先日、いつも髪を切ってもらっている美容師さんに「美容師が店長になるには、何を評価されるか」を聞いてみた。
すると「技術力と接客力ですね。それで、お客様をどれだけ集客できるかです」というシンプルな答えが返ってきた。私は、店長という仕事はマネジメントだから、日常の仕事自体に「技術力」や「接客力」が不可欠なわけではないと思っていた。
しかし、実際には「現場」で成果を上げていない人がいきなり店長になることはないらしい。
美容師のマネジメントは、「技術力」と「接客力」の土台があって成り立ち、最も実力がある人がその経験を以て、後進を育成する。

スーパーバイザーの義務教育

では、スーパーバイザーがマネージャーになるには何が必要なのか。一言で表せば、それはきっとマネジメントができることなのだ。
しかし、「マネジメントができる」この定義はとても広すぎてあいまいだ。
メンバーをマネジメントするのもマネジメントだし、業務量をマネジメントするのもマネジメント。品質をマネジメントするのもマネジメント。

そして、「マネジメントの成功」にはいろんなやり方がありすぎる。
品質をマネジメントするには、研修資料をつくったり、トレーニングをしたり、モニタリングをするスキルがなければ実現できない。
しかし、それらが得意な人がセンターに1人いれば、自分にそのスキルがなくても、センターの目的は果たせる。

現場の状況をリアルタイムに把握して、都度状況判断をしていかなければ、入電や入電傾向の変化に対応できない。
しかし、これもブースコントロールが得意な人がセンターに1人いれば、自分にそのスキルがなくてもそのセンターの目的は果たせる。

コールセンターにはまれに、恐ろしいほどにコミュニケーション能力が高い人がいる。
そういう才能がある人がマネージャーになると、その高すぎるコミュニケーション能力を発揮し、本人が手を動かさずともメンバーが手を動かし、お客様と折衝でき、成果を出せる。
そういうマネージャーのセンターは、センターにはいろんなことがあるけども、それでもみんなが幸せでやりがいに満ちている。私もそうなりたい。

一方で、そういうマネージャーは、しばしば、SVにこういう指導をする。
「あなたの仕事はマネジメントなのだから、人にやらせるのが仕事。あなたが手を動かしていては人が育たない。」
憧れのマネージャーにそういわれるとそんな気がしてくるし、SVとしての経験年数やすでに備えているスキルによってはそうなのだろうと思う。

しかしまだ経験の浅いSVが現場のSVとしてのスキルを磨かずに、「人を動かすためのマネジメント」を磨くことに専念してしまうのはかなり危険だ。
確かに、世の中には業務フローもトークスクリプトも書いたこともないし、モニタリングもしたことがないけど、恐ろしいほどの「人間力」で、メンバーが適切に動き、見事にセンターをマネジメントする天才マネージャーが存在する。
しかし、あなたは残念ながら天才じゃないかもしれない。その場合、長い社会人生活の中で「コミュニケーションを通じて周りを動かす」だけでは乗り越えられない苦難が生じるだろう。

その可能性が1mmでもあるならば、圧倒的にSVに必要とされる多くの科目(業務)をしっかり勉強するべきだ。
もしあなたが、研修資料を作ったことがないのならば、それを後輩のSVにやらせるコミュニケーション能力を養うよりも、自分で研修資料をゼロから作る経験を積む方が大切だ。
品質管理をしたことがないならば、得意な人にやってもらうことも一つだけど、自分で音声を聞いて全員分を評価し、フィードバックする数か月を作ることも大切だ。
SVに求められる義務教育(当社であればスキルマップがあるが)は概ね経験し、得意不得意はあるだろうけど、全科目ある程度の合格点になるようにスキルを押し上げておくべきである。

これは、あなたがマネージャーになったときに役立つことになる。理由は3つある。

1つは「自分が経験したことがないことを部下に指導する」のはとても難しいからだ。
自分で業務フローをゼロから作る経験があれば、漏れやすいポイントや失敗したポイント、うまくいったポイントなどを具体的に指導できる。業務フローを作った経験がなければ、すべて想像だけでアドバイスすることになる。

2つ目は、1つ目の理由と矛盾するが「とはいえ、自分がすべての業務を経験して部下に指導できる」わけではないからだ。
インバウンドのセンターの経験を長く積むと、アウトバウンドのセンターでの運営経験は積めない。
では、いろんなセンターを渡り歩き、多様な経験があればいいようにも思うが、いろんなセンターでの経験を積むことは、1つのセンターをじっくり改善する成功体験とのトレードオフだ。
本人がどれほど努力しても、1人がすべての経験を積むことはできない。

では、凡人マネージャーが自分に経験のないことに対峙したとき、どうマネジメントしているか。
それは、自分の経験の中から今対峙している課題と共通の部分を抽出し、当てはめている。
多くの経験を積んでいれば、自分のデータベースにノウハウがたまっているので、未知の経験でも共通項を探しやすい。自分の経験(だけでなく、知識や学習を含む)のデータベースをリッチにしておくことは、不確実な時代の最大の防御なのだと思う。

3つ目は、部下に指導をするも、「どうやってもイマイチなアウトプット」しか出てこない時、自ら手を動かして、手本を示せることだ。
山本五十六も言っている。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
また、仮に部下に任せてできなかったとしても「最悪自分がやればいい。部下がやるより自分がやったほうがむしろ上手だし」という(強がりかもしれないけど)自信を持てること。
それはある意味、マネージャーが唯一誰にも頼らずに発揮できる最終兵器だ。最終兵器を常にオプションとして持てることは、マネージャーとして働くうえで心の安定につながる。

スーパーバイザーとしてのキャリアアップ

SVにはいろんなキャリアの積み上げ方がある。様々な経験を積みたくても、そうはいかない事情があることもあるだろう。
そのような場合は、本を読んだり、理論を学習したり、自身の業務を高度化し新たなことにチャレンジすることで自分の幅を広げるなどの方法がある。
大事なことは、自分の上司や周りのやり方を踏襲すれば安泰だ、なんて思わないことだ。その思考停止は早期に行き詰まりを生むことになる。やれることは積極的に経験していこう。それは、きっとあなたの仕事を楽しくするだろう。

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