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「こなれ感」は“型”から生まれる ~コンタクトセンターにおける守破離~

HUMAN

形柳亜紀

2025.02.05

「こなれ感」という難しいお題目

「こなれ感」を出す、というファッションのお題目に悩み始めて、10年以上たった気がする。カチっと決めすぎると、ダサい。何となくルーズに、抜け感を出したい。

それゆえに、様々な「こなれミス」を犯してきた。
「こなれ感」を求めて、髪を外跳ねにして会社に行った日は、「寝ぐせを直さずに来てしまった小学生みたい」と言われた。Tシャツとチノパンで会社に行った日には「今日は元気だね。」と言われた。

「こなれ感」とは一体何なのか

「こなれ感」とは何かをchatGPT先生に聞いてみた。

>「こなれ感」とは、ファッションやヘアスタイル、ライフスタイルなどにおいて、「頑張りすぎていないのにおしゃれで洗練されている」という印象を与えるスタイルや雰囲気のことを指します。
>日本のファッションや美容のトレンドでよく使われる言葉で、自然体でありながらもセンスが良く、余裕を感じさせることが特徴です。

頑張りすぎない・自然体であるという「抜け(-)」がありながらも、おしゃれでセンスが良い状態(+)という逆説的なものが混在している状態であることがわかる。
そうだ、おしゃれでこなれ感のある人は、「シンプルなTシャツにデニムを合わせつつ(抜け感)、アクセサリーやバッグでアクセントを加えたり(おしゃれ感)しているじゃないか。
さらに、髪型や化粧もおしゃれにしている。
つまりは、「おしゃれ」の基本を押さえたうえでの「あえての抜け」をつくることで、「こなれ感」が生まれる。逆に、おしゃれの基本を押さえていなければ、「こなれ感」ではなく、ただの「ダサい人」になってしまう。

そして、守破離へとつながる

そして、「ああ、こなれ感というのは、守破離の「守」ができたものだけに許されるものなのだ」と改めて悟ったのである。

「守破離(しゅはり)」は、日本の伝統的な学びのプロセスを表す概念で、主に武道や茶道、芸術、職人技などの分野で用いられている。この言葉を最初に体系的に述べたとされるのは、室町時代の能楽師である世阿弥らしい。

守(しゅ)    : 基本を忠実に守り、師匠や伝統の教えをそのまま学ぶ段階。
破(は)    : 基本を理解した上で、他の流派や新しい技術を取り入れ、自分なりの工夫を加える段階。
離(り)    : 既存の型や流派から離れ、自分独自のスタイルを確立する段階。

「こなれ感」というのは「守」である「基本を忠実に守り、師匠や伝統の教えをそのまま実践」した人が、「破」の段階入って「基本を理解した上で、他の流派や新しい技術を取り入れ、自分なりの工夫を加えている状態」であると整理できる。

型の習得プロセスは不自然なものである

「守」=「基本を習得すること」=「型を習得する」としたときに、型を習得するプロセスは不自然なものである。

私は中学生の頃、剣道部に所属していた。
剣道の練習は、まず素振りから始まる。竹刀の先端を仙骨に触れるほどまで振り上げ、右腕を床と平行に伸ばして振り下ろす。この動作を繰り返し練習するのだ。

しかし、素振りの段階を終え、防具をつけて実践的な練習に入ると、竹刀を仙骨の先まで振り上げることはほとんどない。試合中にそんな大きく竹刀を振りかざすと、出頭(でがしら)を相手に打たれてしまうからだ。むしろ試合では、最小限の距離で、相手の小手や面に当てる練習をするくらいだ。そのため、素振りは「実践的ではない」と感じる人もいるかもしれない。

それでも、少なくても剣道の有段者で、素振りができない人はいない。
「竹刀を仙骨に触れるほど振り上げる」動作は、肩甲骨の可動域を広げたり、竹刀を背中から動かす感覚を養うことで、打突の有効率を高めることができる。
つまり、素振りは、試合の中で直接的に使われる動作ではないかもしれないが、実践に必要な基礎力を確実に支えているのだ。

しかし、このように、「型を取得するプロセス」というのはしばしば、私たちに遠回りさせているように感じさせ、しばしば「これは意味があるのか」という問いを投げかけてくる。

型から入るのは大人になると面倒になる

大人になると、どうしても実践から逆算して、最短距離で物事を習得したくなる。素人が勝手に判断した最短距離で学習するから、大人の学びは遠回りしがちだ。

例えば、私はもう3年ほど英語を勉強している。この3年間、型を軽視したために、かなり遠回りした。

英語には「文法」「発音」「単語」という3つの型があって、それを組み合わせて初めて「会話」が成り立つ。その「型」の習得の重要性もわからずに、私はまず「英会話教室」に通い始めてしまった。これが全く無意味だったとは思わないが、結局、半年後には「文法」や「単語」を学び直すことになった。

しかしその後も、2か月ほどでTOEIC対策にシフト。TOEIC用の英語を勉強して、それなりの点数も取れた。でも、ここ1年くらい前から投下した時間に対して、「思ったより英語が読めるようにならないな」とか「英会話もなんか上達しないな」とスランプを感じるようになった。

そこで最近、高校生向けの文法参考書を買って、本気で文法を基礎からやり直すことにした。すると、知らなかったことが山ほどあったのだ。つまりは、文法の基礎がまだ十分に身についていなかったわけだ。

型から始めるのは大事だが、面白くない。
でも、勉強であっても仕事であっても面白さも重要なことだから、楽しさを求めて実践に飛び込む(TOEICを実践と呼ぶかは微妙だが)と、「型」が必要なことに気づいて、また型から学びなおす。
実践と基礎、つまりは「守」と「破」の振れ幅が許されるのが、大人の学習の楽しさなのかもしれない。

ただ、理解しておくべきことは、時々「型」の不足に気づけなければ、ただ、何かが欠如している不完全なスキルになってしまうことだ。

型を崩しすぎたサービス

世にはびこる「こなれ感」の重視は、サービスにも広がっているので、「マニュアル対応」は敬遠される。そこで、スタッフの「こなれ感」の出し方もセンスが問われる時代だ。

この代表例として、常連客に「いつもありがとうございます」といつ言うか、どう言うか、そもそも言うべきか、という問題がある。

何度か通ったデパートの化粧品売り場で「いつもありがとうございます」と常連っぽく言われれば、悪い気はしない。

しかし、いつも行く牛丼屋で「いつもありがとうございます。今日はデートですか?」と言われたら、ちょっと恥ずかしい。そのデートが初デートだったら、もっと恥ずかしい。いや、そもそも、初デートで牛丼はないんじゃないか、とかもあるけど。

つまりは、接客においても、
①「お客様の反応をよく観察し、適切な距離感を保つ」という基本原則を理解していて、
②あえて破るという選択にも気づいていながらも、
③あえて型どおりに対応する
という「守」もあるということである。

守(型)を失いすぎたコンタクトセンターになっていないか

職場の新人が入社して初めて受ける「導入研修」はその会社の「守」=「型」を教える場である。

「型」の習得には剣道のように「不自然なプロセス」が存在する。

例えば、コンタクトセンターであれば、トークスクリプトの音読やロールプレイは、実際の応対を知っている人からすると、居心地が悪いプロセスである。

そのため、以前も「新人研修は「頭ではわかっている。でも、できない。」に対処するカリキュラムであるべき。」で書いたが、ロールプレイを軽視するスーパーバイザーは意外と多い。
彼らの言い分は「お客様はスクリプト通り話さないから、実践に即していない。」だ。
しかし、それでいいのだ。
ロールプレイというのは、実際のお客様と話すための感覚や思考の筋肉を鍛えたり、可動域を増やすためのトレーニングであって、リハーサルではない。

どんな仕事にも「型」がある

「型」を取得することは、コンタクトセンターだけに留まらない。営業でも、経理でも、人事でもすべての職業で必要なことだ。

しかし、職場には「守」フェーズが終わって「破」フェーズに入り、なんなら、「離」フェーズに入ってしまうような先輩の達人が存在する。

その偉大な先輩の中にいると、型を習得していないのに、「型通り」の対応をすることは恥ずかしくなってしまうこともあるかもしれない。全員ラフなファッションをしている職場で、一人だけかっちりとしたビジネススーツを着て出社してしまったような感じだ。

それゆえに「型」ができていないのに、「こなれ感」を出してしまっている営業と顧客として商談することもよくある。顧客である私は、それを指摘することはないし、その営業に対して感じた違和感の正体は「型がないのに、こなれ感を出そうとしているせいだ」まで、特定できていないことも多い。
このように、誰からも指摘されなければ、自分が出そうとしている「こなれ感」が、ただの「プロフェッショナルじゃないラフすぎる営業」になっていることに気づくことは難しい。

「守」フェーズなくして「破」フェーズはない。
伸び悩みを感じるとき基本に立ち返って基礎を固めること。それがあなたの成長曲線を大きく変えるかもしれない。

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