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目上の人を褒める方法について考えてみた

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HUMAN

仲江洋美

2023.08.23

私は日々、誰かを褒めながら生きている。
というとおおげさっぽいけれど、あながちおおげさでもない。
私にとってそれは習慣で、私は息をするように褒めている。

褒めるつもりもなく気持ちを伝えたら、それが結果的に褒め言葉だったこともあれば、相手に好かれたいとか、言いづらいことを言う前だからとか、そういう理由で、意図して褒め言葉から会話を始めることもあった。でも、いつしか境目はわからなくなり、今は息をするように褒めながら生きている。

褒めるも褒めないも、その人の好きにすれば良いけれど、みんなももっと褒めればいいのになと思うことはある。なにごとも頑張るには、自己承認欲求が満たされていた方が良いと思うからだ。厳密に言えば、他者に褒められることは、自己承認欲求を満たすことにはならないらしい。それでも、他者が「じょうずですね」「大成功だと思います」と口に出して伝えることは、相手が自己承認欲求を満たすために少なからずプラスになっていると信じている。だから私はよく誰かを褒めるし、みんなもそうしたらいいのにと思っている。

目上の人を褒めることは、躊躇する

そんな中、当社のオペレータのエンゲージメントサーベイで、ショックな結果が出てしまった。

[仕事で認められたり褒められたりする]という項目が全12項目中11位だったのだ。そして、年齢が上がるほど、社歴が長いほど、点数が低いことも明らかであった。

サーベイ結果がわかった後、オペレータを管理するスーパーバイザーが集まるワークショップをおこなったのだが、この項目に着目したスーパーバイザーは多かった。そしてこんな声が聞かれた。

 「ベテランさんを褒めるのは躊躇してしまう」
 「年上の人を褒めるのはおこがましい」
 「褒めたい気持ちはあるけれど上手くいく気がしない」
 「本当に思っていることなのに嘘っぽくなってしまった」等。

いやいや、何を言っているんだい、そんなことは気にせずに、とにかく褒めたらいいのに、と思ったのだが、でも、実際のところ、自分はどうなんだろうか、年上の人を褒めたりしているんだろうか。想像すると、やはり年上の方に対しては、言う前に迷ったり、伝え方にとても配慮したり、時に言うのをやめたり、すんなりはできておらず、やはりそこに難しさはあると感じた。

職場以外で先輩を褒めることについて考えてみた

職場で考えると難しそうなので、その前に趣味の場、職場以外で出会った年上の方や先輩には対してはどうしているかを振り返ってみる。

例えば趣味でやるバンド。年齢、経歴、スキルに差はあろうと、それぞれのパートは責任もって自分の役割を果たさねばならない。それなのにどうだろう、練習中に後輩がへこへこと先輩を褒めてばかりいたら、それはバンドメンバーとしては無責任で無自覚ともいえる。「人を褒めている暇があったら、自分の腕を磨け」と叱られそう。だから、演奏の素晴らしさに感動しても、ぐっと我慢して口に出さなかったことを思い出した。“褒める”にはそういう側面もあるんだと改めて自覚する。

でも、練習が終わって飲みに行ったら、やっぱり色々伝えたくなるものだ。“褒める”という感覚ではなく、“感想・感動を伝える“だけなんだけれど。「迫力があってかっこよかったです」「ギターソロの音色しびれますね」等々。沸き起こる気持ちをただ伝えただけ、ではあるが、相手は褒め言葉として受け止めていることだろう。

もうひとつ“質問する”ことも、褒めることに繋がると気づかされる。「いつからやっているんですか」「得意ジャンルはどのへんですか」等々、即席メンバーだったりすると興味津々で質問攻め。これも褒めているわけではないが、興味を持っていることが相手に伝わる。そして質問によって引き出さされた回答に対して「すごーい」を連発することになる。結果的には、“褒める”とほぼ近い行動になっている。

“感想・感動を伝える”ことも“質問する”ことも、“褒める”とは違うけれど、相手に興味を持っていることが伝わり、相手の表情はほぐれ、会話もはずむ。これはきっと、年下のSVが年上のオペレータとコミュニケーションを取る時にも、当てはめることができるのではないだろうか。

年上や先輩や上司の褒め方

さて、職場に話を戻そう。職場でチームを持つならば、メンバーを育成する必要があり、育成には“褒める”はつきものである。コールセンターでは、10代から60代くらいまで幅広い層が活躍しており、スーパーバイザーにとって年上の方を指導することは日常だ。だからそれなりに、ノウハウとして、年上の方の褒め方を習得しておくべきだろう。

「躊躇してしまう」「おこがましい」と思うのであれば、伝える側(つまり自分)の“褒める”に対するハードルを下げるのが良いだろう。

●シンプルに“伝える”で良い
“褒める”がおこがましいなら“認める”という感覚で。それでも抵抗があるならば、シンプルに、ただ“伝える”で良い。結果が出たこと、変化があったこと、努力していること、行動を起こしたことに対して、「素晴らしいですね」と言えば良い。それもおこがましいと思うなら、「結果が出ましたね」「点数が上がりましたね」と、事実を伝えれば良い。

●“下から目線”で良い
自分が上司だからといって、“上から目線”である必要は無い。同じ目線になればよい、年下なんだから“下から目線”だって良い。となると、どうなるか。「昨日は手伝っていただいて、助かりました、ありがとうございました。」とお礼の言葉になるのかも。“褒める”とは違うけれど、ここから始めれば良い。

上から目線のつもりはないのに、なんだか変な言い方になって偉そうになってしまったという経験は誰にでもあるのではないだろうか。そんな時はどうしたら良いだろうか。

●“主語”を明確に
上から目線感が強い時、主語があいまいになっていないだろうか。「さすがですね」のひとことには主語を感じづらい。言葉が天高くから降ってくる感じ。いまっぽく言えば、“知らんけど”感が少なからず漂う。では、主語を入れるとどうなるか。「私は、○○さんの応対、素晴らしいなって思います」。言い慣れていないと言えなさそう。これは意外と上級編なのかもしれない。

●“カタマリを小さく”する
このテーマについてはちょうど1年前に「褒める」カタマリが大きくて照れるなら、かみ砕いて小さくすれば良いという記事を書いているので、こちらをぜひお読みいただきたい。カタマリを小さくするとは、「うまい」ではなく「迫力があった」「ギターソロが良かった」「音色が良かった」と具体的にすることである。天高くから降ってくる感じが無くなり、地に足の着いた言葉になる。

改めて思ったことは、年上の人を褒めるのに躊躇するのは自然な感情である、ということ。それでも、ぜひ、“褒める”につながる言葉を発してほしい。年上の人も褒められたいハズだから。

自分で自分を褒めるたくましさ

そう、年上だって先輩だってベテランだって褒められたいのだ。でもあまり褒めてもらえないから、時にベテランは自分で自分を褒めて、自己承認欲求を満たしながら、次へ進んでいく。

 「わたしって偉いよね」
 「これってすごいよね?」
 「私けっこう良い仕事していると思う」

ベテランはだんだん褒められなくなる。でも、ベテランは、経験上、自己承認欲求が満たされなければ頑張れないことを知っている。だから、無意識のうちに自分で自分を褒めながら進んでいくのである。かくいう私はこれである。どうかこの現象をただただ「自己顕示欲が強い人」だと言わないでほしい。その一面も否定しないが、これはベテランが絶え間なく進み続けるためのたくましさである。

人生100年時代。きっと人はいくつになっても成長したいと思っている、と私は信じている。私が誰かを褒めながら毎日を過ごしていることが、誰かの成長の少しの養分になっているのであれば、とても嬉しい。

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