オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジンpowered by Bewith

失敗事例から学ぶ ~エンゲージメント向上の第一歩はアーリーでスモールな取り組みから始めよう~

  • #エンゲージメント

HUMAN

仲江洋美

2023.05.31

久しぶりにカラオケをした。じゅうぶん歌った後、帰りがけに誰かが言う。
「毎月3日に、このメンバーで集まってカラオケしようよ♪」
こういうことって、ときどき、ありませんか?

社交辞令のこともあれば、2回目が開催されることもある。
でもそれが続くかはまた別の話で、頻度が減りフェイドアウトすることも多い。
そして、ふと思い出した時、なにかを成し遂げられなかったような気持ちになる。
そんなふうに思っているの、私だけですか?

休日の友人とのカラオケなら、なにも成し遂げられなくてかまわない。
私も数々の企画を口にしてはフェイドアウトさせてきた。
それでも、その仲間とは別の機会で会うし、気まずいこともない。

でも、同じようなこと、仕事でも、けっこう、ありませんか?
そう、仕事で、月1回なにかをやる企画がフェイドアウトした場合、それは「失敗」とみなされることがある。

現在「100人で考えるエンゲージメント」という企画を進めている。
コールセンターのオペレーターのエンゲージメントについて、管理者であるスーパーバイザー100人で考えていこうという企画。
社内のエンゲージメント施策の失敗例を収集したのだが、そこでも、フェイドアウトの事例を見かけた。

1か月はすぐ過ぎる、毎月やるのは思いのほか難しい

失敗例として、こう書かれていた。

 【定期面談】忙しくて時間が取れなくなり続かなかった。

これは果たして失敗なのか。
何度か面談をやって、やった面談の分だけ成果が出ているのであれば、そうとも言い切れないのではない気もしている。

では、なぜ失敗の烙印を押されるかといえば、企画時点で「定期」を前提として、オペレーターにも「毎月面談やります」と伝えているから、計画通りに続けられなかったことが失敗になるのだ。
1か月はすぐ過ぎる、定期実施は思いのほか、難しいのである。

なぜ難しいか。
エンゲージメント施策は、かの有名な優先順位の四象限にあてはめると、下図の第二象限に当てはまる。
忙しい職場では、第一象限だけでなく第三象限も優先せざるを得ず、第二象限を定期的に実施することはとても難しい。
「やれば良いに決まっている、わかっている、でもできない」ことが多い。


四象限マトリクス

<四象限マトリクス>


では、どうすべきだったのか。
「毎月やる」のではなく、「まずは1回ひととおりやってみる」が良いのではないか。
理想を言えば毎月やるのが良い。だから「1回きりでは効果は少ない、継続を前提とすべき」という意見も出るだろう。
それなら例えば、5月から7月を“シーズン1”とする等、終わりを決めることをお勧めしたい。

“シーズン1”を気持ちよくやりきって、しっかり振り返る。
適度な小休止の後、改良された“シーズン2”を始めてはどうだろう。

全員満足は難しい、それでも“一人でも多く”にはこだわりたい

続いて、「誰をターゲットにするか」についても考えてみよう。
エンゲージメントの会議で、「その企画は○○の層には響かない、かえって逆効果だ」という意見に何度か遭遇している。
「そうかもしれない」と感じながらも、「何もやらないよりは、始めた方が良いのではないか」とも思う。

全ての従業員に刺さる企画を考えることは、とても難しい。
優秀層に注目すれば、そうでない人の興味は薄れるし、パーティー的な企画にすれば、人見知りは見向きもしない。
だからといって強制参加にすると、企画のハードルは格段に上がる。
いいかげんな企画のまま実行すれば、かえって白けてしまう。

このような失敗例がある。

 【ランキング掲示】上位者を掲示したが一部のオペレーターが数か月にわたり独占。
   それ以外の人のモチベーションが下がった。
 【皆勤賞】受賞者が固定化し、対象外の人たちのモチベーションが下がった。


なるほど。だったら対象者を広げるのがいいんじゃない?と思ったら、既にこんな失敗例もあった。

 【表彰】1人でも多くの人を表彰したく、受賞者を増やしたら、受賞理由の納得感が薄れ不満の声があがった。

なんて難しいんだ。
ごく限られた優秀層の表彰には納得していたのに、受賞者が身近になると「なんで○○さんが受賞するんですか?」と周囲から不満の声があがるというのだ。
人の気持ちは複雑だ。

では、どうしたらよいだろう。
優秀な人の表彰はあって良いと思う、あるべきだ。
そうなると「自分は無関係だ」と思ってしまいそうな人にも、「自分にも関係がある」ように感じ取ってもらえる工夫がポイントになる。

例えば、表彰者が良い成績を出すまでのストーリーに注目して、一人でも多くの人に「いつかは私も表彰されるかも」と感じてもらえるようにする。
人数の少ないPJTであれば、「○○さんは○○を改善したら表彰台も見えてくるね」と個別にコミュニケーションを取って繋がりを見せる。
ただ決めた通りに企画を進めれば成功するわけではない。
こまやかな工夫や気遣いはいつでもセットで考えなくてはいけないようだ。

また、過去の実績から表彰される人の固定化を想像ができていたのであれば「毎月」という頻度を考え直しても良いだろう。
表彰によって、他のオペレーターが奮起することを期待していたのだと思うが、頻度が高いことは、実は熱量がさめてしまうタイミングや形骸化を早める可能性があるという点にも配慮したい。

イベント企画であれば、どうすれば、より多くの人に興味を持ってもらうかが重要だ。
あるセンターではハロウィンの仮装が想像以上に盛り上がったという。
聞いてみると参加のハードルの下げ方やSVの盛り上げ方が絶妙にうまい。

参加基準は「オレンジの何かを身に付けていること」。
出勤時にSVにオレンジの何かを見せるとお菓子と交換。お菓子にはレベルがあって、ちょっとしたアイテムにはちょっとしたお菓子。
大胆な仮装をしてきたオペレーターには、大きいお菓子や高価なお菓子、というように、仮装ランクに応じてお菓子のランクが変わるという点も良い。

また企画として優れていたのは「3割くらいのオペレーターに参加してもらうのが目標」という高すぎない目標を決めていたことも良い。
結果、8割くらいのオペレーターが何らかの形で参加してくれたというのであるから大成功である。
SVの「一人でも多くの人に楽しんでもらいたい」という気持ちが作り上げた良い企画であると大変感心した。

第一歩はアーリーでスモールな取り組みから

センターでおこなうエンゲージメントの取り組みの第一歩は、高い理想を大きく掲げるよりも、日常の延長線上で「これならば続けられそう」というお手軽感から始めるのが良さそうだ。
第二象限のエンゲージメントは、第一象限や第三象限に、優先順位で負けがちだから、忙しい中でも続けられるサイズ感から始めるのが良い。

センターのエンゲージメント施策を検討するワークショップをおこなっている。
さまざまなセンターのSVが集合し、自分のセンターだけでなく他のセンターのアイデアについてディスカションをおこなう。
キーワードは、アーリー(early)と、スモール(small)。
早く始められること、小ぶりな取り組みでもとにかく始めてみることを大切にしている。

そして、low-hanging fruitという英語の熟語表現に出会った。
直訳すると、低いところにぶらさがっている果物のことで、ビジネスでは、達成しやすい目標のことを言うらしい。
ネガティブな意味なのかと思いきや、そうでもない。
エンゲージメント向上の第一歩も、わざわざ苦労して高いところの果物を取りに行かなくて良い。
簡単なことは悪いことではないし、働く人にとって、エンゲージメントにとって、達成感はとても大切だから。

まず第一歩は、低いところの果物を手にして、SVもオペレーターも、ひとつ達成感を味わってから、次のステップに進んでみてはどうだろうか。

ビーウィズでは、コールセンター教育を効率化し、オペレーターの成長サイクルを高める教育プラットフォーム『Qua-cle(クオクル)』をご提供しております。

Qua-cle(クオクル)』は、コンタクトセンターにおける応対品質の課題を解決するために必要な、「学び」・「トレーニング」・「フィードバック」の一連のサイクルを実現する、コールセンター向け品質改善プラットフォームで、eラーニングから学ぶだけではなく、フィードバックのサイクルまでを組み込んだことが最大の特徴です。


詳しい資料は、以下よりダウンロードいただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


関連記事