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「褒める」カタマリが大きくて照れるなら、かみ砕いて小さくすれば良い。

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HUMAN

仲江洋美

2022.08.17

私が毎日使うアプリのひとつに〈アルバム共有アプリ〉がある。このアプリには、甥っ子の写真や動画が連日アップされ、家族(ママ・パパ・ジジ・ババ・ワタシなど)がコメントを寄せる。

先日、6歳の甥っ子のカラオケ動画がアップされ、家族からこんな感じのコメントが付いた。

 じょーずー♡
 リズム感がいいね♪ 
 がんばってる!!
 うまくなったなー
 俺には歌えん

投稿されたコメントには、それぞれの性格や想いが表れている。そして、いずれも「褒め言葉」になっている。

こんなふうに家族や友人には自然と言える「褒め言葉」だが、仕事となると、とたんに難しくなり「褒めるのが苦手だ」という人も少なくない。思ったことをそのまま伝えれば良いとも限らず、かといってよく考えて伝えればうまくいくとも限らない。

世間は、褒め合うことを求めている風潮だ。コールセンターも例外ではなく「褒め」文化の歴史は古い。オペレーターに月1回はフィードバック面談をすることが理想とされ、「1つ褒めた後、2つ改善点を伝える」等、進め方のガイドラインが存在している。コールセンターの管理者であるスーパーバイザー(SV)は、「褒める」ことを鍛えてきた。

本記事では、これまでに私が相談された「褒める」ことについてのお悩みを、動画のコメントに当てはめながら、考えていく。

カタマリが大きいと、愛情が大きくて照れる

「じょーずー♡」と投稿したのはババ。全てを包み込む大きい褒め言葉。私には書けない、照れてしまう。

結婚式の新郎新婦プロフィールで見かける感じと似ている。
 彼の好きなところ:すべて♡
うらやましい。でも照れる。
これは「好き」のカタマリが究極に大きく、詰め込まれた愛情が大きいから、照れてしまう。

少しカタマリを小さくしたらどうなるのか。
 彼の好きなところ:やさしいところ♡
私はまだ照れる。でもムズムズしなくなった。

では、ぐっとカタマリを小さくするとどうなるか。
 彼の好きなところ:LINEの返信が早いところ♡
まったく照れない。急に愛情が薄まった。むしろ♡マークが怖い。

部下や後輩を「褒めたい」のに、なぜだか照れてしまうという人は、褒めようとしているカタマリが大きいのかもしれない。

部下や後輩に「注意したい」のに、相手を傷つけるのが怖いという人も、注意しようとする対象や事柄のカタマリが大きいままなんだと思う。

「話し方が感じ悪いですね」

とフィードバックする人はいないと思うが、もしこれを言ってしまったら大問題。相手を傷つけるだけで良いことはひとつもない。その人そのもの、人柄、人生を否定しているように聞こえ、次の日から会社に来なくなってもおかしくない。カタマリが大きいまま注意してはいけない。

カタマリを小さくすることは、フィードバックの鉄則

「リズム感がいいね♪」と投稿したのはワタシ。日頃のフィードバック癖が出てしまった。
甥っ子のカラオケ動画すら、無意識のうちに細分化し「甥っ子よ、リズム感は良いぞ。高音もまあまあ良いぞ。でも低音がブレる。」と分析してしまった。

これぞフィードバックの鉄則。

カタマリをかみ砕いて小さくし、良い点と改善点を抽出したのである。

かくいう私もカラオケで「リズム感がいいね♪」と言われたことがある。「私はリズム感がいいのか♬」と嬉しかった。でも私のフィードバック脳は、そこで終わらず、自己分析を続けることになる。

・リズム感は良い
でも
・高音はフラットぎみの自覚あり
・声はまっすぐで表情が平坦
・盛り上げるのは苦手

これをきっかけに私がボイトレに通うわけではなかったが、その後「リズム/音程(高音・低音)/声の表情/ステージング」を意識して歌うことを重ねれば、ただ歌うよりも確実に上達するだろう。

想いやプロセスも大切にしたい

「がんばってる!!」とコメントしたのはママ。息子と過ごす時間が多いママは、この歌唱よりももっと上手な時も知っている。だから、今回はあえて頑張りを褒めたのかもしれない。

このコメントから言えることは「成果」は出なくても「想い」や「プロセス」を褒めたって良い、ということである。

三拍子そろわないと褒めないという厳しい考えの上司や先輩はいるだろう。

・とてもこだわって仕事を進めていたのは知っているけど「数値未達成」だから褒めない。
・「数値達成」したけど偶然だから褒めない。

厳しい考えは悪くないし、気持ちはわかるが、褒めないのはもったいない。

称賛は次の頑張りに繋がるはずだから、
「今回のプロジェクトへのこだわりは素晴らしかったね」
「受注、おめでとう。もってるねー!!」
と、盛大に褒めたり祝ったりすれば良い。

まずは盛大に褒める!!
褒め言葉はしっかり言い切る!
ダメ出しは、褒め終わるまでがまん。

けっして、
「こだわりは良かったんだけどね、未達成だからね、、、、」
「受注できたけど、プロセスがダメだったよね、、、」
等と、褒め終えずしてダメ出しを始めてはいけない。
部下や後輩は、かえってやる気を失う。

成長や変化を褒める

「うまくなったなー」とコメントしたのはジジ。孫の成長を喜んでいる。カラオケは上手だと思ったけど、この伝え方は不得意なことにも通用する。

歌う、踊る、走る、投げる、打つ、読む、書く、話す、、、、
プレゼン、交渉、資料作成、エクセル、関数、パワポ、コミュニケーション、、、

得意ではない領域は、昨日や先月と比べて成長を褒めると良い。

集団ができれば「262の法則」には抗えず、私たちは集団を「優秀な2割、平均的な6割、貢献度の低い2割」とみなし、褒める機会の少ない人が存在しがちになる。でも全員を褒めたい。

だったら、たとえ目標に届かなくとも、「成長」した点を見つけて示すと良い。それが「褒める」ことになる。それを甘いと思うなら「本来の目標には達していない」ことや「努力を続けるべき」であると、一緒に伝えると良い。

上から目線と感じたら「下から謙遜」をプラスする

「俺には歌えん」と書いたのはパパ。自分の立場を息子よりも下げた謙遜の伝え方。懐が深い父親だ。言われた息子はなんとも誇らしい気持ちでこの言葉を受け取るだろう。

パパのこのコメントは、褒めると上から目線になってしまう人へのヒントになる。
新人が悪気なく先輩にやってしまうお馴染みの会話。

 新人:「先輩、さすがっすね」
 先輩:「は?お前に言われたくないよ」

こうなりがちな人は、自分を下げたら良い。

「先輩、さすがですね。まだまだ私にはできません」
と謙遜の気持ちを伝えるのも良いし、
先輩の行動の何が良かったのか、カタマリを砕いて、
「先輩、さすがですね。ああ言えばいいんですね」
と具体的に伝えるのも良い。分析することが自分の成長を促す。

辞書に書かれた「褒める」の意味

先輩に称賛を伝えることもあるが、部下や後輩に対して「褒める」ことの方が多い。だから「褒める」という言葉には「上から」の雰囲気が漂う。多くの人に「褒める」ことを得意になってほしくて、このテーマを選んだのだが、書きながら「褒めろ、褒めろ、って偉そうだなあ」と、「褒める」という言葉から漂う目線の高さに、書きながらほんのり違和感を持ちつつ、もうすぐこの記事を書き終える。

だから最後に「ほめる」の意味を調べてみた。

ほめる【褒める・誉める】
人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。
(goo国語辞典)

この辞書の意味が、しっくりきた。
上とか下とか関係ない。人のしたことや行い、そしてそこに至る思いに目を向け、変化に気づくことが大切なんだと改めて思った。そしてそれを言えばよい。喜ばせようなんていう意気込みも要らない。言えばよいのだ。

「褒める」の本質は「気づいて伝える」ことである。

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