ガチャはガチャでも上司ガチャ ~アタリとハズレは実は紙一重?~の記事を見てはっとした。私はハズレ上司の代表格「指示が大雑把」な上司だからだ。
私は大体こういう指示を出す。「最近AHTが伸び悩んでると思うけど、どうしたらいいかな。考えてみて。」「このセンターってチャットサポートに向いているのかな。その場合どのチャットツールがいいんだろう。考えてみて」
「はっとした」と書いたけれども、申し訳ないがまったく反省してない。なぜならば、「指示を大雑把にしないと部下に失礼」とすら私は思っているから。
しかし、当事者は大変困惑するようだ。たいていふわっとした依頼をすると、顔が曇り、一応「わかりました」とはみんな言ってくれるが、一向にアウトプットされないことも多い。私的には、全く悪気はないしむしろ本人にとって良いことだと思っているけども、結局何も進捗しないというストレスをお互いに長く抱えることになる。これはこれで、不幸だ。
そこで、本日は「このふわっとした指示」は何を意図しているかについて、自戒を込めて考察をしてみた。
「考えてみて」はたたき台を作ってという意味
改めて自らが発言している「考えてみて」の定義を考えると、期待していることはおそらく「たたき台」を作ってほしいということだ。別の言葉では「ディスカッションペーパー」と呼ぶこともある。「たたき台を作って」とは言わずに、私は「考えてみて」というので、みんなきっと、絶望するのだろう。それは私の反省点だ。
では、仮に私が「たたき台を作って」と依頼をしたとき、得られる反応のパターンは3パターンある。
1 たたき台を出さずに、人の意見だけを聞き出そうとする
2 たたき台が出てくるけど、情報不足で議論ができない
3 たたき台が出てきて、活性化された議論ができる
目指すのは当たり前だが、3だ。
1は、論外だけど、普通にあることだと思うし、私もたまにやってしまう。仮に上司部下の関係ならば、こっちもふわっと依頼しているんだから、ふわっと戻されることもお互い様とも言えるし、それでも最終的には何かしらを出してもらうことになるので、そういうこともあるよね、と思う。
たまに、「私が出したふわっと指示」の相談ではなく、「だれかのふわっと指示に悩む人」から相談されるケースもある。そのような場合でも、たたき台があって、「ここまで考えたんですけど、追加できることはないですか」とか「ここまで考えたんだけど、ほかの視点はないですか」ならば、喜んで考えてアイディアを出したい。しかし、「ふわっとした指示に対する答え」だけを一方的に引き出そうとされると、ちょっとうんざりしてしまう。
こういう人を私は「思考泥棒」と呼んでいる。
たたき台を作ること。それは、今日まで自分が考えてきた立ち位置を示すことだ。当事者ではない人に何のヒントもなく、考えを発表せよと言われても、相談者と同様に戸惑うだけか、真剣に考えないかのどちらかである。
稚拙でも、不足があっても、体裁が整ってなくても、自分が考えてきたことを示すからこそ、相手の考える負担を減らし、良質な意見の追加が得られるのだ。
2は、頑張っているが報われておらず残念な たたき台。いろんな失敗パターンがあるが、以下のようなケースがある。
① ゴール設定がない たたき台
② ゴール設定に対するプロセスの漏れが多い たたき台
③ たたきどころ(議論ポイント)がない たたき台
ここからは、頑張りが報われない残念なアウトプットについてみていきたいと思う。
「頑張っているが報われておらず残念な たたき台」について考えてみる
さて、頑張っているが報われておらず残念な たたき台のケースは上記で3つほど挙げさせていただいたが、どれも結果は「たたき台を活用して、議論の活性化が図れない」ことになるために失敗することになる。
① ゴール設定がない たたき台
上司のふわっとした指示は、ふわっとしているけど「ゴールは何か」が示されているはずだ。「ふわっ」の中で、確固たるものは「ゴールや目的」以外にない。これをちゃんと見出すことがファーストステップだ。たたき台を作るにあたって、「ゴールから逆算して考えたときに、現時点で何が不足しているのか。現状とのギャップは何なのか」をより具体的にすることがたたき台の役割の一つだ。
しかし「ゴール設定」があいまいなまま作成された たたき台は、「ふわっ」の中に唯一あったはずの芯が全くないものになってしまう。このような資料が出てきてしまうと、議論をすることはおそらく難しく、改めて資料を作り直すところからのやり直しになってしまうだろう。
② ゴール設定に対するプロセスの漏れが多いたたき台
仮にゴールを正確に把握していても、今日からゴールまでに発生するであろうプロセスの漏れが多く生じている場合、手直しが多く必要な資料となる。しかし、実際にはこのような「ふわっとした指示」は大半が、ゼロイチの誰もやったことがない仕事なので、どのようなプロセスがあるのかわからない。これは極めて当たり前のことである。そのことでわからない自分を責めたり、苦しむ必要はない。
では、そのようなときにどうするべきか。
答えは、ググればいい。世の中、大体のプロセスはわかりやすくまとめたサイトが存在する。
「コールセンター 立ち上げ プロセス」でもまとめサイトはあるし、「ホームページ 開設 プロセス」でもまとめサイトはある。これらの薄めなサイトがそのまま使えるわけではないけども、記載された項目を見て、自分に必要なものと必要ではないものを精査することには使える。このようなサイトに書いてあるプロセスの初めから終わりまでを、頭の中で予行練習してみよう。そうすると、XXの前にはYYをしなければならない。YYをするにはZZが必要だ、などの組み立てができてくる。
あまりに簡単に書いたが、この順序や優先順位をしっかりと組み立てられること自体が、「企画力がある」とか「ゼロイチができる」ということでもある。だから、人によっては簡単ではないかもしれない。ただ、粗さがあったとしても、プロセスが網羅されていて、何が必要なのかが整理されていれば十分に「たたく」ことができる。
③ たたきどころ(議論ポイント)がない たたき台
そう、たたき台の最大の役割は「たたかれる」ことである。「たたかれること」は指摘を受けることではない。「誰かにたたいてもらって、よりすばらしい企画になっていくこと」だ。つまりは、自分のアイデアに他人の知恵を注入することである。
他人の知恵の恩恵を最大化するためには「たたきどころ」を明確にするべきである。
想像上のプロセスの予行練習で、明らかに複数の部門との調整が必要なもの、コストがかかりそうなもの、自分では出口が見いだせないもの。たたき台には、こういう自分では到底解決できない問題が生じるものだ。そういう問題はちゃんとたたき台に書いておけばいい。
なぜならば、その問題は、「企画の論点」なのだ。 「何がその企画における論点なのか」を洗い出せている時点で、ゼロをイチにしている。たたき台では困ったことを解決することまではたたき台では求められない。それじゃ、ゼロイチじゃなくて、ゼロロクになってしまう。
「困ったことを解決して持っていかないといけない」のではないかと思うと気が重いと思うが、困りそうなポイントを洗い出すだけで十分だとわかれば、少しは気が晴れるのではないだろうか。
「ふわっとした指示」を楽しもう
私も、たまに急いでいると、ふわっとした依頼を出せずに、失礼ながら紙にスライドの絵をかいて「これを作ってほしい」と頼んでしまうことがある。この絵は、いわゆる私が作ったたたき台なのだ。たたき台があれば、すぐにやってもらえることが多いし、もしかしたら「毎日そういう依頼で頼むよ」と思っているかもしれないが、教育や育成の視点で見れば、やはりたたき台を作る機会を奪っている。
たたき台を作って、誰かにたたいてもらう。すると、自分だけでは全く出てこなかったアイデアが出てきて、思ってもいなかった素晴らしい企画になる。仕事をしていて、こんなに面白いことはない。ぜひ、肩ひじ張らずに、「たたかれるたたき台」をたくさん作っていこう。
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