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日本語は、正しければいいというわけではない

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sato

2022.09.07

一昔前の接客の場面で、「~でよろしかったでしょうか。」などの誤ったフレーズが流行り、コールセンターでも蔓延した時代がありました。

コンビニ言葉、ファミレス用語などと言われ、新聞記事に取り上げられるほど話題に。そのためか、一時期はほぼ聴かなくなりましたが、最近ではその認識が薄れたのか「お間違いなかったでしょうか」などのフレーズが再び使われています。

また、「~の方(ほう)」の多用も流行りましたが、これはだいぶ減りました。
「~の方」は、あいまいにする言葉の一つで、以前はトーク研修にて、「消防署の方からきました」と言って、消防署員でもないのに消火器を売り歩いたという有名な例を挙げながら、誤った使い方を紹介していたことがあります。今でも誤用は見られますが、連発するオペレーターさんはほぼいません。

日本語は変化する、とも言われています。今回は、時代とともに、流行りや変化していくフレーズについて触れます。

「とんでもございません」

このフレーズを聞いて、「間違っているぞ」と思う方も、あるいは「私、使っているなぁ」という方もいらっしゃると思います。

オペレーターとしてお客様の対応を担当していた時代に、お客様から「色々教えてくれてありがとうね。」と褒められ、咄嗟に「とんでもございません」と返したところ、SVさんに「とんでもないことでございます」が正しいよ、と指導を受けたことがあります。

正しい日本語を知らなかった私は、なんだか「とんでもないことでございます」より「とんでもございません」の方が自然でいいなと感じていました。その後「とんでもないです」でもいいよとアドバイスをもらい、これならいいなぁと妙にしっくりきて納得したことを覚えています。

正しい日本語という点では、「とんでもないことでございます」「とんでもないです」のいずれかが適切なのですが、文化庁が行う2007年の文化審議会「敬語の指針」において、相手からの誉め言葉を軽く打ち消す謙遜的な意味の「とんでもございません」の使用は問題ないと発表されています。

とはいえ、これまでの伝統を考えれば、「とんでもございません」は間違いと感じ、気になるお客様もいらっしゃると思いますので、電話応対では、正しいかつ、お客様にも違和感がそれほどないであろう「とんでもないです」の使用をおすすめします。NHKでも、安易な使用は避けた方が良いとしています。

もちろん、「とんでもないことでございます」も正しいのでOKですが、ややフレーズが長いこともあり、表情をのせてうまく伝えるには、少し難易度が高い言葉です。

(参考)
国語に関する世論調査(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html

NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/183.html

耳になじむ違和感のないフレーズ

電話応対の評価をする際、常に心がけていることがあります。それは、お客様視点です。どんなに企業として正しい表現をしていても、お客様にとってわかりづらければ、良しとしません。

ここ数年、時折悩むのは、「あいにく」というフレーズです。
名刺交換の際「あいにく、名刺を切らしておりまして、、」と、使ったことがある方もいらっしゃるでしょう。ビジネス本でも正しい言葉遣いとして記されています。

電話応対では、「あいにく、お答えできません。」「あいにく、お引き落としができませんでした。」のようにクッション言葉として使っていることがありますが、どうも違和感があります。

フィードバックとしては、「“あいにく”では軽いです。お客様にご迷惑をおかけしている状況にはマッチしません。“恐れ入りますが”や“申し訳ございませんが”が合いますよ。」とアドバイスしています。

これも難しいところが、「あいにく」であっても、日本語としては正しいのです。絶対に使ってはいけないわけではないが、おすすめしない、さらには使いすぎには注意ということにしています。

違和感を覚えたフレーズでいうと、大人気ドラマ「半沢直樹」で、堺雅人さん演じる半沢が、片岡愛之助さん演じる金融庁の黒崎検査官に対して「すいません黒崎さん、お手数(てかず)をおかけいたしました」と言う場面がありました。

私はこれまでずっと「お手数(てすう)」と言っていたので、ものすごく引っかかって、すぐに調べたことを覚えています。人気ドラマで放映されているのだから、間違いがあるわけもないと思いつつ調べた結果、どちらでも間違いではないことがわかりました。

「おてかず」のほうがなんだかとてもお手間をおかけした感じが伝わる気もしますが、電話応対においては、引っ掛かりや違和感は不要であると考えます。もし、電話応対で「おてかずをおかけしました」と言って、お客様が「おてかず」の部分が気になってしまったら、本来伝えたい内容の本質の理解の妨げになる恐れがあるからです。

もちろん、私がこれまで聞いた応対の中で「おてかず」と言っている人は一人もおらず、皆さん「おてすう」をしっかり使えています。

とはいえ、テレビなどメディアの影響力は大きく、別のドラマで見てなんかいいなと思ったらしく「恐れながら、申し上げます」と、「恐れながら」をクッション言葉に使っているオペレーターさんに出会ったことがあります。

これも、まさに引っ掛かりを覚える可能性のある表現ですので、使うのはおすすめしません。ただ、オペレーターさんは良かれと思って使っているので悪気はありません。いち早く気づいてフィードバックすることが大切です。

最近流行りフレーズ

電話応対の場面で最近よく耳にする、いわゆる“流行りフレーズ”もあります。間違いとは言い切れないものの、まわりくどく伝わりづらいフレーズが窓口のあちらこちらから聞こえてくることがあります。

そのような時、オペレーターさんは、丁寧な言葉を話そうとするあまり、回りくどくなっているケースがほとんどです。その気持ちは十分に褒めながら、簡潔な案内をするために控えましょうという指導が必要です。

最近目立つのは、「~のもの」です。特に、お客様との丁寧な会話に重点を置いているセンターで広まりやすい表現です。

・「お手元に、○○というものがあると思います」
・「受領書のご返送をいただきたいものとなります
・「(物件名は)○○といったもので
・「(書類到着の履歴が)なかったものですから
・「自動解約となっているものでございます」
・「お渡し可能なものとなっております」
・「延滞料金というものないものとなっておりまして」

例は挙げたらきりがないほど、よく耳にします。よく使うかもと思った方や、一度や二度は使っているかもしれないと思う方は多いのではないでしょうか。

丁寧に話そうという以上に、「~というもの」でまとめる表現が実は便利なのかもしれません。「~のかたち」でまとめてしまうフレーズも同様ですが、人はなんだか言いづらいなと思うと、一括りにしようとして“盛りフレーズ”を無意識に使っていることがあります。

どの「~のもの」も、取ったところで案内の意味合いは変わりません。むしろ、取った方があいまいさの無いスッキリフレーズに言い換えることができます。

電話だけでなく、メールでも多いのが、「~なります」の表現です。

メールを書くとき、できるだけ使いたくないなと思いつつも、便利なので苦肉の策として使うことはあります。ただし、使いすぎは要注意です。以下のような「~なります」が連続しているメールを見かけることがあります。

 一点変更依頼となります
 1日へ変更となりますが、別途ご連絡は必要となりますでしょうか。

この短い文章の中に、「なります」が三つ入っています。「~になります」は、例えばA→Bのように変化を表すのであれば、正しい使い方です。よって、「1日へ変更」は変化を表すため使っても良いですが、他の二つは使いすぎ。一度も使わなくても話せます。なるべく同じ言葉が重ならない方が、すっきり頭に入ってきます。

言葉は、時代とともに変わります。
例えば、「スマホ」「コンビニ」は略語ですが、「スマートフォン」「コンビニエンスストア」と正式名称で伝えるよりもすっと頭に入ってくることもあります。

電話応対では、お客様に違和感なく聴いていただけるよう、正しさにこだわりすぎず、わかりやすい言葉選びをアドバイスすることが大切です。

私は、日本語のプロではありません。熱心なオペレーターさんから日本語について質問を受けたときは、一緒に考え、一緒に調べて、一番お客様に伝わる表現を選び、アドバイスをしていきたいと思っています。

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詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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