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言いたいことがあるからこそ、話をしっかり聴いて受け止める

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sato

2021.09.29

最近、電話応対でなぜこんなに「話を聴いてもらえないんだろう」「反応を返してもらえないんだろうか」と思うことがありました。とてももやもやした気持ちになったので、“受け止め”について書きます。

コールセンターの応対を良くするための取り組みはさまざまありますが、多かれ少なかれ、どのセンターでも強化すべきポイントの一つが“受け止め”だと思います。“受け止め”を更に磨くことで、お客様とのコミュニケーションが格段に良くなります。

当たり前の様にできていると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、できていそうでできていない、できたつもりになりがちなのが“受け止め”です。

対面のコミュニケーションであれば、「うんうん」とうなずくことで相手に伝わる部分が多くありますが、電話応対ではうなずきは全く見えないので、言葉にしないと何一つ伝わらないのが特に難しいのです。

コールセンターでの“受け止め”とは?

電話応対でよく使う受け止めフレーズは、いくつかあります。
「かしこまりました」
「さようでございますか」

その他、全面的に肯定する受け止めや、感謝とお詫びも受け止めの一つです。
「おっしゃる通りです。」
「ありがとうございます。」
「申し訳ございません。」

この辺りまでは、明確に返しやすいこともあってできていることが多いのですが、「~ですね。/~でございますね。」を基本とした、復唱の受け止めはうまく返せないことがよくあります。

電話応対でよくある“受け止め”の不足

よくある、お客様が冒頭で「〇〇と申します」とお名前をおっしゃった場面での受け止めが足りないパターンを見てみましょう。
いくつかのケースを、お客様に与える印象の悪さ順に1~4までレベル付けしてみました。
レベルが上がるごとに、残念度が増します。

いずれも、「〇〇様でいらっしゃいますね。」「〇〇様ですね。」など、まずは丁寧な復唱で受け止めたい場面です。しかしながら、なかなか丁寧に受けとめられないケースも見られます。

【LEVEL1】 受け止め不足度▲ 尻切れとんぼ
お客様:「○○と申します。」
オペレーター:「○○様・・・」 もしくは、「○○様で・・・」

語尾止めで終わるケースです。
復唱をしているので、受け止めはゼロではありません。表情が乗っていればそれほど嫌な感じにならないかもしれませんが、文字で見ても耳で聴いても中途半端な感じは否めないのが語尾止めです。

語尾止めのフィードバックで一番多いのがこのお名前の箇所ですが、その他にも「1本・・・」「火曜日・・」など語尾止めになっている応対があります。せっかく復唱しているのに、目線が高く聴こえてしまうこともあり、大変勿体ないです。


【LEVEL2】 受け止め不足度▲▲ 聞き返し「だからそう言ったじゃん」
お客様:「○○と申します。」
オペレーター:「○○様でよろしいでしょうか。」

こんなこと言うはずがないと思われるかもしれませんが、意外にあるのが聞き返し復唱です。

お客様:「住所を変更したいんですけど・・・」
オペレーター:「ご住所の変更でよろしいでしょうか。」

オペレーターさんとしては、何の悪気もないのだと思います。確認の意味を含めて癖のように使っている場合がほとんどでしょう。また、復唱はすればよいということではなく、「ご住所の変更をされたいということでしょうか。」は、もっと印象が良くないので、即改善です。

更に、以下のように感じが悪く聴こえてしまうケースもあります。

お客様:「わかりません。」
オペレーター:「わかりませんか。」

お客様:「大丈夫です。」
オペレーター:「大丈夫ですかね。」

念押しされているみたいに聞こえますね。


【LEVEL3】 受け止め不足度▲▲▲ 不安・・・「えっ、聴いてた?」
お客様:「○○と申します。」
オペレーター:「はい」

「はい」ももちろん、受け止めの一つです。しかし、お客様がわざわざお名前をおっしゃったこのような場面では物足りません。お客様は、聴いてもらえた感じがせず、不安になります。

電話応対でよく使われる「はい」は、2文字で短いのですが、表情によってさまざまなニュアンスが伝わるとても便利な受け止めです。ただし、この場面では、何も返さないよりは良いですが、どんなに表情良く「はい」を伝えても不足感があります。

ここは、「○○様ですね。/でいらっしゃいますね。」などしっかりお名前を復唱して受け止めることで、お客様にご安心いただけます。

また、よくあるのが、冒頭でお名前をお伺いしているにも関わらず、スクリプト通りの順番で後にしれーっと「恐れ入りますが、お名前をお伺いできますでしょうか。」と、再度お名前をヒアリングするケースです。お客様に「さっき名乗ったんだけど、、」という気持ちにさせてしまい、二度手間感が出て、一気にプロらしさが半減します。

プロであれば、「お名前は、○○○○様ですね。」と冒頭でお伺いした内容を踏まえた上で対応したいところです。苗字のみをお聞きしていた場合は、「○○様、恐れ入りますが、お名前をフルネームでお伺いできますでしょうか。」とすれば、上手く会話が運びます。


【LEVEL4】 受け止め不足度▲▲▲▲ 自分優先、お客様を置いてけぼり
お客様:「○○と申します。」
オペレーター:「えーっと、、、お電話番号からお願いいたします。」

例えば通販の受注の窓口など、応対フローとして最初に電話番号をお伺いして本人確認をする応対がよくあります。お客様の言葉を聴く前から、オペレーターの頭の中は「電話番号を確認して顧客特定しなければ、、、」でいっぱいになって、受け止めを忘れてしまうのです。会話が全くかみ合わず、話を聴いていないようにも感じられ、印象が良くありません。

お客様:「注文をお願いいたします。」
オペレーター:「それでは、お電話番号をお願いいたします。」

このように、感謝もなく唐突に質問されたら、お買い物の楽しい気分が一気に失せてしまいます。オペレーターは、印象良く応対しよう、の前に、「正しく応対しよう」「無駄な時間をかけることなくスムーズに応対しよう」に気を取られた結果、このような応対になってしまうのです。

トレーニングは“100本ノック”が効果的

さて、“受け止め”をマスターするには、いかに、理解するだけにとどめず、実践に繋げて行くかが重要です。
頭で理解しても実践するのが難しいのは、スポーツでも何でも一緒だと思います。

例えば、ゴルフでは、ボールを飛ばす理論がわかっても全然遠くに飛んでくれません。私のセンスが無さ過ぎるだけかもしれませんが、時には10センチほどしか先に進まないことやなぜか後ろに飛んでいくことも・・・ 一体どうして止まっているボールを遠くへ飛ばしたいだけなのに、うまくいかないのだろうと悩みます。

また、どんなに英語の文法を勉強しても、英会話ができないのも同じです。だからこそ実践トレーニングを積んで、磨いていくわけです。

もちろん、“受け止め”も同様にトレーニングしなければ、使えるようになりません。
更に難しいのが、電話応対では考えている暇がほぼなく、瞬発的に反応を返さなければならない点です。

そこでお勧めするトレーニング手法は、「100本ノック」です。ひたすら、受け止めフレーズを即座に正しく感じ良く返すために、ロールプレイを行うのです。最初は、フレーズを考えて書いて、見ながらロールプレイをしても良いですが、仕上げは何も見ずに行います。見ないと言えないようでは、実際の電話応対ではうまく使えません。

繰り返すことで、どんなボールが飛んできても正しくキャッチして返すことができるようになります。実際1回のトレーニングでどのくらい行っているかを数えたことはありませんが、社内ではこれを「100本ノック」と呼んでいます。ややスパルタ感はありますが、効果絶大なのがこのトレーニング手法です。

私たちは、オペレーターさん個々のフィードバックはもちろん、オンラインでの集合研修でも取り入れています。

トレーニングのポイントがいくつかあります。
受け止めだけでなく、「表情」も併せてトレーニングすると一石二鳥です。どんなに素晴らしい受け止めフレーズも、表情一つで伝わり方は各段に変わります。

もう一つ大切にしたいのは、「答えは一つではない」ということです。受け止めのフレーズには絶対の正解は無いと思っています。答えはいくつあっても良いですし、お客様お一人お一人にマッチしていることはもちろんのこと、オペレーターさんにマッチしているフレーズかという点です。言いづらいフレーズはなじみませんし、結局使えません。

お客様:「CMで見たんだけど、このドリブンパック良さそうなのでちょっと電話してみたの。」

この場合は、次のどれでも正解です。
「お電話いただきまして、ありがとうございます。」
「ドリブンパックでございますね。ありがとうございます。」
「ご興味をお持ちいただき、ありがとうございます。」
「CMをご覧いただいたのですね、ありがとうございます。」

“受け止め”は、無限です。このようなアドバイスは、オペレーターさんの気持ちが少し楽になって挑戦しやすくなってきます。

人は言いたいことがあるときほど受け止めを忘れる?

私自身、電話応対のさまざまな場面の会話で、後から「あーー自分が言いたいことばっかり言ったなー、受け止め足りなかったなー」と後悔することがあります。

特に熱が入って発言したその後は、だいたい受け止めが不足していて、振り返るとただただ自分の言いたいことばかりを伝えています。人は、言いたいことがあると、そればっかり頭の中で考えてしまい、相手の話を聴いているフリをして、自分の言いたいことだけを切り返してしまっていることがあります。先ほどの電話応対に当てはめると、【LEVEL4】の応対と一緒です。

自分の意見に対して否定的なことや意見を言われたときは、特に言い返したくなるものですが、そんな時こそ“受け止め”です。まず受け止められる人との会話は、心地よく、その後のお話も聞いてもらいやすくなります。大人な応対ですね。

時に、“受け止め”は、全てを受け入れているようでしづらいといった意見を聞くことがありますが、そうではありません。「そういう考えもありますね」という意味に捉えれば、それは全面肯定ではありません。

「言いたいことがある時こそ、話をしっかり聴いて受け止める」
スタンプ1つで反応を返すのが当たり前の時代です。私の受け止め力はどんどん低下しているような気がします。互いの心地の良いコミュニケーションに向けて、今一度様々な場面での“受け止め”を見つめ直していきたいと思います。

ビーウィズでは、コールセンター教育を効率化し、オペレーターの成長サイクルを高める教育プラットフォーム『Qua-cle(クオクル)』をご提供しております。

最大の特徴は、eラーニングから学ぶだけではなく、フィードバックのサイクルまで組み込んだこと。モニタリング自動評価機能も搭載し、日常の自分の成果を確認することができ、オペレーターの大きな成長機会に繋がります。


詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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