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コミュニケーションにおける「出合い頭のもらい事故」をどう防ぐべき?

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  • #コールセンター

HUMAN

形柳亜紀

2022.01.05

先日現場ドリブンの読者から「現場ドリブンの感想を言いたい」という電話がかかってきて、その電話に対応した話。

その電話はこんな感じだった。


その方の会社名で検索すると、オウンドメディアのコンサルティングやライティングをしている会社のようであった。

おそらく、こういう「感想を言いたい」という手法で担当者につないでもらい、そこで一言当たり障りなく誉めた後、ちょっと課題を伝えて、営業につなげるというテレアポを繰り返しているのであろう。

この電話を受けた私は心が狭いことに、「出合い頭のもらい事故」のような感覚(つまりはいきなり電話かけてきて、営業目的で謎にけなされたという感覚)を持ち、この電話でこの会社の提案を前向きに進めるなんてことは全く検討できなかった。

さて、この「出合い頭のもらい事故」であるが、実は日々の上司と部下や、お客様とのコミュニケーションの中で、何度も実は私が加害者になっていたような気もするのだ。今日はこれにフォーカスしたい。

これがなぜ出合い頭のもらい事故になったか

この電話はなぜ「出合い頭のもらい事故」になったか。

会話を改めて振り返ってみたい。青色は共感赤色は課題緑は提案と色分けした。


図解をすると、こんな感じである。


①共感(青)がふわっとしているうえ、短いので誉められている感がない。
「いい記事」という言葉は、世の中すべてのメディアに使えるので、現場ドリブンを読んでなくても言えそう。ここでもう少し「いつも読んでくれているんだな。」と思えるような具体的な共感が欲しかった。

 

②課題(赤)に入るのが早すぎる上、私の課題認識と一致していない。
つまりは、私に気づきを与えていない。よって「なぜあなたにそんなことを言われないといけないのか…」と思わせてしまっている。また、当社の「競合さん」をどの会社と認識しているのかが不明で具体性がなく、納得感に欠ける。競合と比較するならば、もう少し具体的に比較している会社や、比較してどうかを表現してもらいたい。

 

③営業トーク(緑)が早すぎる。
結局営業なのね、と思わせるのが早すぎて、そこまで時間がすべて無駄に思える。勝手にぶつかってきて、勝手に示談交渉始めている感じ。

 

なぜこの電話が「出合い頭のもらい事故」になったかを、今一度完結にまとめると以下のとおりである。

(1)     共感が短すぎるし、心に刺さらない
(2)     課題を切り出すのが早く、本人に気づきを与えていないし、納得感がない
(3)     営業トークに入るのが早すぎて、検討する気にならない

現場で発生していそうな「出合い頭のもらい事故」

さて、上記の「出合い頭のもらい事故」の原因を(1)~(3)でまとめたが、これって、下手なフィードバック面談そのものではないだろうか。


フィードバック面談は、教科書的にはこういう進め方だ。

 

1_まずは誉めましょう(青)

2_課題(赤)を2つまで伝えましょう。(間違っても課題だけをたくさん伝えてはいけません)

3_次の目標(緑)を決めましょう

 

それを踏まえ、以下の面談の会話を見てみよう。

 

・SVとオペレーターの面談


お気づきの通り、(ここまで下手な面談をするSVはいないかもしれないけど)この面談は下手な面談である。

図解すると以下の通り。


(1)     誉める(青)が少なすぎるし、具体性に欠けるのでよくわからない

(2)     課題(赤)が長すぎるし、納得感に欠ける(同期との比較など)

(3)     目標(緑)は具体的に何をしたらいいのかわからない

 

 

同じようなことは、お客様対応でも生じてないだろうか。以下は先日私がコールセンターに問い合わせしたときの会話内容だ。

・お客様とオペレーターの会話


この電話内容を図解すると以下の通り。


(1)     お客様の要望に添えなかったにも関わらず、共感(青)が少なすぎる
(2)     課題(赤)が長すぎるし、納得感に欠ける(どこのミスかはお客様には関係がない)
(3)     提案(緑)は不手際にも関わらず、リカバリープランがお客様のニーズを満たせていない

「出合い頭のもらい事故」を起こさないために

では、出合い頭のもらい事故を起こさないためにはどうしたらいいのか。

前提として、人が出合い頭からいきなり分かり合えたら奇跡だ。
たいていの場合は、分かり合うためには関係性や空気をほぐさなければならない。だからこの世の中には「アイスブレイク」という言葉がある。それは、「この人は私のことをわかってくれている。きっと安全な人である。」と思わせることと同義なのかもしれない。

「忌憚なき意見を受け入れる」のも度量なのであろう。私の心が狭すぎるのも自覚している。
しかし、いきなり「忌憚なき意見を投げられても…」というのも事実だ。

理想はこのような配分だろうか。


はじめに相手が「私のことを理解してくれている」と思えたら、説明が短くても信頼しているから理解できるし、信頼しているから提案にも乗りたくなる。

では、日常のお客様対応などにおいては、関係性をほぐすとはいっても、共通の話題も多くはないわけだから、話題の広げ方は限定的になる。コールセンターに電話をしたお客様が会ったこともないオペレーターにいきなり趣味や自宅を聞かれても怖いだけだ。

そうなってくると、共通の話題(お客様対応ならば、お客様のお困りごと、面談であれば日々の取組等)を広げることになる。そうなってくると、「共通の話題において、相手はこれまでどのように考えてきたのか」を想像すると、きっとずれのない会話の広がりを持たせられるはずだ。

オペレーターとの面談であれば、前回のフィードバック面談から今回のフィードバック面談までで、どう仕事に取り組んできたか。お客様対応であれば、お客様が電話をされる前にどうお困りだったのか。

その気持ちに寄り添い、「あなたの気持ちやこれまでの状況を理解した」と、質量充分に伝えることができて初めて、その人と未来の話ができるのだ。

一見遠回りに見えるかもしれないが、営業電話ならば目的は営業活動にあるわけだし、オペレーターとの面談ならば品質改善やモチベーション向上にあるわけだから、相手が話を聞いてもいいかなという土壌作りは大事だなと、冒頭の営業電話を受けて改めて思ったのであった。

それは、まさに「ミライ転換力」だった

当社には「ミライ転換力 」という顧客理解メソッドがある。


「ミライ転換力」のコンセプトは、「イマだけでなくカコに寄り添う。そしてミライへ繋げる。」である。
お客様が電話をされた背景を理解し、過去の想いに共感した上で、お客様のミライに寄り添う言葉かけをしましょう、というメソッドだ。

私が今回感じた冒頭の「出合い頭のもらい事故」は、きっと「ミライ転換力」ができてなかったんだ、と気づいたわけである。

コミュニケーションエラーは常に起こるし、発生したからといっていつも相手がフィードバックしてくれるわけでもない。
きっと毎日とは言わないまでも、週2回くらいは事故を起こしている気がする。(きっと誰かが許してくれている)

少しでも事故を起こさないためにも、「ミライ転換力」を心がけていきたいものである。

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