今年もあと残り少し、12月に入り一気に年の瀬を感じるようになってきました。
この時季になると必ず思い出す電話応対があります。
かれこれ十数年前の事です。
今年も数日の営業日という年の瀬に、あるオペレーターさんが、応対の最後にいつもとは違うこんなフレーズをお客様に伝えていました。
「○○様、良いお年をお迎えください。」
誰が教えたわけでもないフレーズがそのオペレーターさんから突然飛び出して驚いたのも束の間、たちまちセンター全体で広がり、あちこちから「良いお年を~」のフレーズが飛び交いました。
どうやら他のオペレーターさんも「これはいい!」と思ったようで、いつも以上に声に笑顔が乗っていて、決め台詞のように得意げに伝えていたのがとても印象的でした。
とても忙しい日々でしたが、私たちSVの気持ちまでほっこりしました。センター全体でなんだか一気に年の瀬ムードが高まって、今年もあと少し、最後まで乗り切ろうという雰囲気になりました。
あとで、お客様との会話の音声を聞いてみると、お客様も嬉しそうに「ありがとう、来年もよろしくね。」と、あたたかい言葉をかけてくださっていて、本当に良い応対でした。
以前、オープニングについて書きましたが、(お客様を戸惑わせる「電話応対のオープニングあるある」~スクリプトにこんなフレーズ入れていませんか?)今回は、クロージングについて触れます。
オープニングは、その応対の印象を大きく左右しますが、クロージングは、電話の終わりの部分なので、そのお電話というよりお客様のその先の印象へ影響する、電話応対の中でも重要な場面の一つです。
お決まりトークは心地よいけど、印象に残らない
コールセンターではなく、日常のお話です。
食事を済ませて出口に向かうとき、多くのお店の店員さんは「ありがとうございました~」という声掛けをするケースがほとんどだと思います。
しかし、先日ランチに入った定食屋さんの店員さんの声掛けはこうでした。
「行ってらっしゃいませ~」
一瞬「えっ?!」と少し驚きながらも、いつもと違うフレーズだからか、とても印象に残りました。
何気ないフレーズと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、その点も良いと思います。
突拍子もないフレーズでは、印象に残ったとしても違和感を覚えることがあるからです。
この「行ってらっしゃいませ~」は、オフィスビルの地下にある飲食店なので、これから仕事に戻るお客様が多いことを考えると、多くのお客様にぴったり合うフレーズです。
たとえ仕事中ではないお客様だったとしても、お店を出てどこかへ移動することを考えると、「ありがとうございました」と同等レベルでお店にいらっしゃる誰にとってもマッチするフレーズです。「ちょっとやられた~」という気分になりました。
私自身も、お昼を終えて、さてこれから仕事!というタイミングだったので、なんだか嬉しくなり、ちょっぴり午後も頑張ろうという気持ちにまでなったりして。
もしかしたら、冬であれば上着を持っていないお客様=ビル内で働く人として、クロージングフレーズを変えている可能性もあります。だとしたら、まさにお客様に合わせたフレーズをそれぞれに伝えられている、ステキなお店ですね。
ちなみに、同じお店でも他の店員さんからは「行ってらっしゃーい!」と言われたことがないので、この店員さんならではなのでしょう。一方、煮込みを頼んだ時の「土鍋が熱くなっていますので、お気を付けください」は、どの店員さんも言ってくれるので、これは定型フレーズなのだと思います。
定型フレーズは、これはこれで安定感があって心地よいのですが、印象には残りません。
お客様それぞれに合わせたフレーズ
さて、コールセンターのクロージングは、応対の良し悪しをはかるモニタリングシートにも、チェック項目があります。当社の場合は、責任を持って応対を終えたことが伝わる「名乗り」に加えて、「終わりに向けた印象が良いか」の2つの項目です。
この「終わりに向けた印象がよいか」は、「終わり良ければすべてよし」ということわざがありますが、終わりだけでなく、“終わりに向けた”というところがポイントです。
当社の場合、この項目は、A+/A/B/C の4段階で評価を付けるのですが、A+はお手本となるほどの応対でなければ取れないため、全体のほんの数パーセントです。その、A+の評価のコメントを抜き出してみました。
・「本日、折り返しのお電話遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした」
あらためてお詫びの気持ちを十分に伝えており、印象が良い。
・「また何かございましたら、いつでもお電話お待ちしております」
親身なミライフレーズ(※詳しくは ミライ転換力 をご参照ください。)を伝え、温かみのあるやり取りで応対を終えられている。お客様からは、「ありがとうございます。またお世話になると思いますけど、よろしくお願いいたします」とお声がけいただけている。
・お客様の「すいませんお手数をお掛けして。ありがとうございます」との言葉に、
「とんでもないことでございます。分かりにくいことで申し訳ございませんでした」と丁寧で謙虚な返答ができている。
・「寒暖差もございますので、ご自愛くださいませ。」
とお客様の状況に配慮した言葉かけができている。
いずれも、単なる定型フレーズが言えているだけではなく、声の表情や伝え方の印象が良く、更にそれぞれのお客様の状況に合わせた応対ができていることで、終わりに向けた印象を良くしています。
誰もがお客様に合わせたクロージングフレーズを伝えたいと思っても、そう簡単にできるものではありません。オペレーターさんが “お客様に合わせたフレーズ” を伝えようとする場合、この2つの選択肢から考えます。
1)定型フレーズの中から選ぶ
2)お客様の状況に合わせて、フレーズを自ら編み出す
1)の方がオペレーターさん自身で考えなくていいので難易度は下がります。
定型フレーズの中で、よりお客様に合わせた応対をするために、定型フレーズは、1つ2つではなく、選択肢は広いほうが良いので、いくつか用意します。
もちろんたくさんありすぎても、結局は使いやすいいくつかのフレーズを選んでしまうので、注意が必要です。また、比較的にどのお客様に伝えてもマッチしそうなフレーズを中心に、シチュエーション別に作ることもあります。
2)は、都度良いフレーズが出てくれば良いですが、なかなかそういうわけにはいきません。
だからこそ、良いと思ったフレーズは、1)に追加していくことで、電話応対をする上でのオペレーターさんの武器が増えて、2)も生まれやすくなります。
流行りフレーズに注意
最初に良いフレーズが流行った話をしましたが、どんなに良いフレーズでもマッチしないお客様がいらっしゃることも心得ておきたいところです。
「良いお年を~」では、新年のあいさつを控えるご事情のお客様もいらっしゃいます。例えば「名義変更のお電話」や、明らかにそれらしきことをお客様がおっしゃった場合には、別のフレーズが適切です。
また、フレーズは、たちまちセンターに広がります。
これは、私の苦い思い出です。
ある日突然、オペレーターの皆さんが「ええ、ええ」という相槌を頻発するようになったのです。
なんだか「はい」より「ええ」のほうが大人っぽい、○○さんが使っているのを耳にしていいなと思ってマネしました・・・と。オペレーターさんには、全く悪気はありませんでした。
ちなみに、「ええ」は、使ってはいけないフレーズではないものの、使い過ぎてしまうと目線が高く感じられるフレーズの代表格です。
このように、良くないフレーズが流行りそうになったときには、即座に制止しなければ、センター全体に蔓延し話癖になって、なかなか元に戻せなくなってしまいます。
皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。
2021年も残りあとわずかです。
友人たちとも会いたくなる季節ですが、なかなか叶わない世の中が続いています。
別れ際の挨拶も、これまで「ばいばーい!」「今日は、ありがとね」などと言っていたと思いますが、今もし会えたら、いろんな願いを込めて「またすぐ会おうね!」と言いたくなりそうです。
「良いお年を~」も加えようかしら。この「良いお年を~」は、あまりに早いタイミングでいうと、なんだか物悲しい気持ちになりますが、ここから先、年末まではグッドタイミングですね。
皆さま、現場ドリブンの年内の更新は、本日が最後です。
2021年も多くの方に読んでいただき、ありがとうございました。
2022年もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。
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