オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジンpowered by Bewith

目標のハードルを下げたところで、実際は何も楽にならない。目標との腰を据えたお付き合いについて。

  • #コールセンター
  • #コンタクトセンター

HUMAN

古川真澄

2023.10.25

目標との闘い

仕事の場面では、「目標を達成する」ことを求められることが非常に多い。
会社での仕事では、担当するプロジェクトや所属する組織、ひいては会社の目標をチームで達成していくことになるし、個人の目標は組織の目標を分解して作ることになる。
だから、企業活動における目標とは、たとえそれが個人の目標であっても組織の成果に密接に結びついている。

構造としては理解しているが、時として、この「目標」というものから目を逸らしてしまいたくなることがあるし、目標の全体像を見失ってしまうことも、比較的よくあることなのではないだろうか。特に、その目標設定が高く、達成に多くの困難が伴う時ほどその傾向は強いし、その目標達成に真剣に取り組むほどに、目を逸らしたい欲求が強くなることもあると想像する。というか、自分がそうだった。

過去への戒めとして、少し思い出してみたい。

勝手に下がるハードル

コンタクトセンター運営とKPIは、切っても切り離せない関係だ。
業務にもよるが、多くの業務ではKPIが細かく設定されていることが多い。1件あたりの応対に要する時間を通話時間・後処理時間・保留時間等に細かく分解し、それぞれに目標が設定されていることもあれば、それらを総合した結果の応答率に目標が設定されていることもある。
最初にお電話を受けたオペレーターがお客様の問題をきちんと解決できる割合の目標が設定されていることもあれば、お客様にお電話をかけ、実際に接続できた割合やお客様にお話の内容をご理解いただけた割合が目標になっていることもある。

そしてこれらの目標は、達成することが少し困難な数字が設定されていることが多い。
そのため、スーパーバイザーの仕事の多くを、このKPIを達成するための活動が占めることになる。
SVの名もなきタスクがその活動を侵食することがままあることも事実だ。

KPIを達成に持っていくためには、問題解決のフレームワークが使われることが多い。
今、何が原因でKPIが未達の状態なのか。その原因はなぜ発生するのかを深く掘り、真因を探り当てたところで対策を検討する。

この、目標達成の行動の中で、目標達成に絶望するタイミングがいくつかある

まず一つめは、目標達成を阻んでいる原因が、自分たちには手の打ちようがないと思えるものであるケースだ。その代表的な例として、「使用システムが難しい」「リストの質が変わった」等がある。自分たちの運営の仕方やテクニックではなく、外的なものがその要因になるケースだ。

こういったものが目標未達の原因として設定されると、実に便利な言い訳を手に入れることができる。誤解を恐れず言うならば、自分たちに原因があるのではなく、外部に原因があるという事態は、言い訳としては実に心強い。

次に目標達成が難しくなる工程は、対策を決め実施してみた後だ。
目標未達の原因を特定した後は、その原因を潰すという対策実行の工程に移っていくが、この対策を上手に実行することが実に難しい
スーパーバイザーはオペレーターに指導をし、オペレーターも正しく実行できるように頑張るが、なかなか目標達成の数値まで到達できないことがある。自転車の乗り方を知っていることと、実際に自転車に乗れることは全くの別物であることと同じだ。やるべきことはわかっているが、それを上手にやることが実に難しい。

オペレーターにとっては難しい局面だし、スーパーバイザーにとっても特に指導対象者が多ければ多いほど、その苦難は大きい。指導をしたオペレーターが目標を達成し、2人目の指導に入った途端に、最初に指導したオペレーターの数値が低下する事象は、もはや恒例行事と言っていい。
オペレーターは頑張っているしスーパーバイザーも頑張っている。それでも、なかなかこのループから抜け出せないことがあるのも事実だ

目標達成への道のりは遠く、幾度も絶望に見舞われると私たちの心の中ではあいつが頭をもたげる。そう。諦めだ

この諦めの感情に捕らわれると、私たちは天才的なひらめきをもってできない言い訳を次から次へと繰り出せるようになる。
厄介なのは、その言い訳は実に説得力があり、その結果、その言い訳を何の疑いもなく心の底から信じられるようになるということだ。できない言い訳をする時の私たちは、実に雄弁だ

その結果、次のような思考ルートが成立する。

①    この目標、達成することがとても難しいね
 ↓
②    この目標、達成できるわけがなくない?
 ↓
③    この目標、達成できなくてもしょうがないよ
 ↓
④    この目標、普通に考えて達成できるわけがないよ

そして④に至っては、「目指すのはこれくらいで良くない?」と、勝手に目標を書き換えることすらある。そう。勝手にハードルを下げてしまうのだ。

実はハードルは下がらない

どうすれば目標を達成できるかという言説は巷にあふれている。その中に、「目標のハードルを下げる」という手法は確かにある。
ただ誤解してはならないのは、この手法はあくまで目標達成へのステップの一段一段をもう少し小刻みにして超えやすくしようというのがその意図であるということだ。ゴールを変更せよという話ではない
かつ、ここでよく語られる目標とは、あくまで自身で設定した目標を指す。

私たちが仕事をする上で与えられる目標とは、冒頭でも書いたように、企業が目標を達成するために組織別・個人別に細分化したものだ。つまり、目標達成の難易度が高いからと言って、自分たちの一存でその変更を決められるようなものではない。

本当は分かっているはずなのに、目標達成への道のりが遠く辛い日々を送っていると、どうしても視野狭窄に陥り、目標が設定された背景への想いが至らなくなり、目標を勝手に引き下げるという行動に出てしまうことがある。

ある意味目標達成の方法を考え抜いた結果であるとも言えるし、とても苦しんだ結果であるとも言える。だから同情の余地はある。

ただそれでも、目標というのは必達であることが原則だ。

目標達成が難しいからと言って自分たちなりの目標を勝手に設定したとしても、必ずその目標は組織の全体感に合わせて元の形に引き戻される。

目標との長いお付き合い

目標とは、もう腰を据えて付き合うのが正解だ。
私たちだって、追いつめられてさえいなければ正しく状況判断ができる。自分たちの目標は組織全体の目標につながっているなどということは、自明の理だ。

たとえ目標達成を阻害する要因が外的なものであったとしても、それでも目標は達成しなければならない。
目標達成が難しい時に私たちが関係者と調整すべきことは、目標値の引き下げではなく、目標達成までのルート設定とスケジュールの共有だ。これは、自分たちだけが追いつめられるという状況を打開するために実に有効だ。

自分たちだけでは目標達成が難しいなら、対策案のアイデアや対策実行方法について全方面に相談をしよう。借りられる手は全て借りよう。そしてその状況を、関係者に逐一共有しよう。
スケジュールを引いてやると言ったことはやり切り、その結果を関係者にきちんと共有しよう。未達だったら、またみんなの手や頭を借りて新たな対策を始めれば良い。
真摯に目標達成を目指し、目標達成を阻害する事象を取り除くことに協力を仰ぐのが建設的だ。

目標の高さは変わらない。目標を下げる交渉は、一度はうまく行ったとしてもきっとすぐに元の高さに戻される。
目標とは腰を据えてお付き合いをしよう。目標達成までの道筋を、より多くの頭で考えより多くの手で実行することが一番の近道だし、きっとその先には目標達成が待っているはずだ。

ビーウィズでは、コールセンター教育を効率化し、オペレーターの成長サイクルを高める教育プラットフォーム『Qua-cle(クオクル)』をご提供しております。

Qua-cle(クオクル)』は、コンタクトセンターにおける応対品質の課題を解決するために必要な、「学び」・「トレーニング」・「フィードバック」の一連のサイクルを実現する、コールセンター向け品質改善プラットフォームで、eラーニングから学ぶだけではなく、フィードバックのサイクルまでを組み込んだことが最大の特徴です。

詳しい資料は、以下よりダウンロードいただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html

その他関連サービス

■クライアント企業に合わせた、最適運用を実現
コールセンター・コンタクトセンター

■クライアント企業のマーケティング活動を最適化
アウトバウンド

■お客様のニーズに寄り添い、お客様に合わせたミライを提供
インバウンド


関連記事