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仕事の進みが悪い。そんな時は、キリの良い進め方を捨てることが大切だ。

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2022.04.13

「仕事の進みが悪い」「どうもやる気にならない」「この仕事、終わる気がしない」。

社会人なら誰しもが、感じたことのある壁ではないでしょうか。早く進めればいいのに、自分の仕事の進捗の悪さに、「どうしよう」「なんでできないんだ」と本来の問題以外にも悩みを広げ、抱える問題をより大きくしてしまい、さらに進まない状況を作る、なんていう悪循環さえあるでしょう。私自身、様々な苦い経験が思い出されます。

研修講師として、様々な業界・業種のコールセンター管理者の皆さんにお会いすると、やはり多くの方が同じ悩みを持っていることがよく分かります。

「応答率が悪くて、そのために別の改善活動が全然進んでいません」
「ナレッジをまとめなくてはと思っているのですが、なかなか進みません」
「応対品質の改善に取り組もうとしているのですが、研修しただけじゃ変わらなくて」 など
どの状況も、コールセンターに勤める皆さんであれば、手に取るように状況を想像できると思います。

そんな皆さんに、私は研修の度に毎回アンケートを取っています。



さてどのタイプが一番多いでしょうか。そして皆さんはどのタイプでしょうか。

私のこれまでのヒアリング結果では、【2】のタスクリストあたりで止まってしまうケースが非常に多いようです。タスクリストまではまとめたけれどなかなか進まない、忙しいスーパーバイザーにありがちな状況です。昔の私も、そして現在の私も、大いに共感できる状況です。

でも、皆さん本当は分かっているはずです。「忙しいから仕方がない」「今日はちょっとやる気が出なかった」「優先順位が低い」「花粉症のせいだ、落ち着いてからやろう」などなど、いろんな言い訳で自分を甘やかして、先延ばしにしている自分もどこかにいることを。誰しもが、胸の奥がズキリと痛むと思うのです。

そんな時、「大変だよね」と慰め合うことも大切ですが、それより肝心なのは、悩み立ち止まった時の対処方法を知っているかどうかです。

今日は、そんな時に役立つ「すぐできること」を自分の為にもまとめておきたいと思います。(私も今現在、そういった類のタスクを、大いに抱えております。)

今回は「仕事の全体像と目標」「仕事に集中できる環境を見つける」「計画と優先順位」といったよく言われる、いわゆる“ きれいな進め方” は、一旦置いておこうと思います。

どうしてタスクを抱えてしまうのか ー 心情と状況から考える

「え?タスクを抱えちゃうのは時間が無いからでしょ?」と思われた方もいるかもしれませんが、決してそうではないのが実情です。すでにタスクがあるのに、別の仕事を優先してしまえば、それはタスクを抱える原因になります。

そこには、忙しさだけでは片づけられない、複雑な原因が眠っていると思うのです。仕事を「荷物」として捉えることで様々なケースが整理しやすくなります。

原因①:荷物を守る責任感
まず、抱えてしまう一番の原因は「私が何とかしなきゃ」という責任感からではないでしょうか。誰かにやってもらえば少し進むかもしれないタスクも、「申し訳ない」「私がやらなきゃ」となんでも抱え込んでしまうケースはよく聞きます。

その「自分が実行する」「私の仕事」という意識・決意の方が、「タスクを実行することで得られるチームへの効果」より先に出過ぎてしまうと、結果、仕事を抱えやすくなります。難なくこなせるタスクの時には見えにくい問題ですが、タスクの難易度が上がった際に、この壁にぶつかってしまうケースはあるかもしれません。



原因②:荷物が大きすぎて、整理できていない
皆さんは旅行に行く際、カバンの中を整理するタイプですか。私は旅行から帰ってきた際、荷物を解くのがとても面倒なので、できればそのまま仕分けできるようにカバンの中でも仕分けしたいタイプです。たまに後の自分に甘えて帰りの荷詰めを雑にした時は、過去の自分にイライラします。まあ、自分でやる分には仕方ないですね。

でも考えてみてください。仕事で取り組むべき塊は、自分で荷詰めした状態では落ちていません。様々な人や状況が関わったなんとも複雑な状態で置いてあるのです。この荷物を解くのは相当難儀です。

多くの問題解決のアクションは、こういった複雑な荷物をどうにかすることだと思っています。それは、ただ目に見えるところに置いておいただけでは、やる気が起きないのも当然です。そう捉えるだけでも次の手順が見えやすくなるのではないでしょうか。



原因③:完璧に片づけようとする
上記に関連しますが、荷物の整理が出来て複雑だったタスクがシンプルになっても尚、量や難しさが伴うタスクは当然あります。そうなると、すべての片づけ方が分かるまで一旦放置してしまうことがあるかもしれません。

しかし、できることから進めることで、状況は改善します。“すべての計画を立てすぎて、行動が遅れてしまう” ということが無いよう、スモールスタートを心がけたいものです。



原因④:“荷物”を抱えている安心感
最後に、意地悪な視点かもしれませんが、実は自分を戒めるときにいつも思っていることです。

人は、「仕事を担当している状態」によって、使命感が芽生え、役割意識が持てるものです。しかし、役割意識が大きくなりすぎると、いつの間にかその仕事を担当している状況に安心感が生まれ、タスクを抱えている状況に慣れてしまうことがあります。

すると、知らないうちに本当は他にやるべき優先順位の高い仕事があっても、安心できるタスクに甘んじてしまう罠に入っていくのです。その安心感は、その種のタスクを自然と引き寄せ、自ら抱える荷物を増やすことに繋がります。(私は、資料整理・情報整理 等の片付けを仕切りたがる傾向があり、我慢するようにしています。)

仕事を抱えている状態は、荷物を抱きかかえているような妙な安心感があるものです。もっと言えば、新たな荷物を抱えさせられる防御にさえなることがあります。新たな荷物に興味がない場合、古い荷物を抱えたがる傾向もあるかもしれません。

その時は、しっかり新しい荷物に上司は魅力的に感じてもらえるような努力が必要ですし、本人も新たな荷物を見てみようと思う積極性があると行動が変わってくるかもしれません。



仕事が進まないときにやってみたいこと

さて、ここまで原因について書いてきましたが、ここからはやってみるといいことについて記載します。

Ⅰ荷物を整理しよう!
重たい荷物は当然、分類しないと片付きません。タスクリストが大きな塊のまま記載されている場合、細かく分解することで進みやすくなることもあります。【生産性改善】という仕事を持つことは素晴らしいですが、このままだと行動が具体化しません。

【生産性改善】の為に、【案件別対応時間を算出する】、【人別の対応時間を算出】、【優先順位を決めて研修を実施】、【一か月後に効果測定】など分解することで、断然進めやすくなります。

このメッシュを細かくする作業は、実はかなりその人のセンスによりますし、絶対的な正解もありません。まずは自分が進めやすい状態にすることをゴールとして進め、トライ&エラーで改善していけばよいでしょう。

Ⅱ 周りの人と一緒に進めよう
荷物がそのまま残っているということは、きっとその荷物が大きいことが想像できます。そんな時にはしっかり助けを呼びに行くことが大切です。2人で対応すれば心情的にも楽になりますし、対応の質も上がるはずです。

Ⅰの荷物整理から一緒に行ってもいいですし、荷物整理後にこのタスクは○○さんが向いている!ということで仲間に誘うのもありです。改善活動の上手い人は、周りの人を上手く仲間にしているなと思います。

Ⅲ 自分ではなく、仕事とゴール、さらに周りを見よう

タスクを抱えると、自分のできることに目がいきがちですが、そうなるとループにハマってしまうケースが多いと思っています。自分がやることを前提にせずに、仕事の目的と対応方法を考えられるかが大切です。

自分がやることを前提にすると、その手法・思考が小さくまとまってしまうのです。もっと大切なのは周りを見ることです。困った時ほどインプットといいますが、「打ち手を考えても出てこない」場合は、客観的に見る状況から学べることの方が大きいです。

Ⅳ 「キリ」のいいところでやめない
最後に、「『キリ』のいい所でやめない」です。これは、重い荷物の時ほどそうです。自分にとって初めての仕事はそれなりに疲れますし、動かすのにパワーを使います。そんな重労働をキリの良い所までで終えてしまうと、次の一歩がとっても重たくなります。

線路の枕木を想像していただくと、キリの良いのは枕木からいくつか先の枕木までだと思いますが、そこで終えてしまうと、木の間に挟まれ、おさまりが良すぎるのです。進めたい仕事は、おさまりを良くしないことがポイントです。あえて不安定な枕木の上に荷物を置いておくくらいの方が、圧倒的に次が進めやすくなります。心情の問題が大きいですが、これが大きなポイントだと思うのです。

これは、子供に勉強させるときのコツにも共通するそうです。勉強をさせたいとき、つい「今日はドリル3回分やろうね。」と分かりやすい範囲で伝えてしまいそうですが、あえてページの途中でも時間で区切り、「はい終了~! また明日ね」とすると、子供も続きが気になり、次の日の勉強開始がスムーズになるそうです。

もしキリの良い所までで終わりそうだったら、「明日の分、2問目まで一緒にやろうか。」と、これもまた中途半端で残すとかなり効果があります。これは大人でも同じ気がしています。キリがいいと思ったら、あと一歩なんでもいいので進めておくと良いです。

私はこの考えが結局Ⅰ~Ⅲにも影響すると思っています。終わらなくてもいいから整理を始めてみよう、と思えば、Ⅰの荷物の整理は始まりますし、整理が進めばⅡのポイント、仲間を呼びやすくなりますし、そうなればⅢのポイント、自分だけではなくその仕事自体に目を向けることが出来ますし、“仲間とできること” という思考に広がります。「あと一歩の中途半端」作戦、是非やってみてください。

ちなみに、私はよく「今日この仕事ノッてきたから、やってから帰ろう」ということがあります。でも恐らく、この “ノる仕事” は好きな領域の仕事なのだと思います。好きな仕事は放っておいてもできます。この好きな仕事の仕方を成功体験として、苦手意識のある領域の仕事に応用しようとしたとき、よく失敗します。

「きっとやる気が降ってくる」「調子の良い時にやった方が効率的」…。 このようにとても成功確率の低い部分に依存しています。そんな苦手意識のある領域こそ行動を変えてみると良いのだと、書いていて改めて感じました。(よし、この後あの数値の整理から始めるか…と筆者も決意。)

やる気ではなく、行動から変えてみよう

最後に一言。
実は、この記事を書く際、これまでの記事で比較的ご好評いただいている「タイプ分析」を作ろうと試みました。



「問題解決タスク」において、躓くポイントはその人の思考に傾向があるのではないかと思っていたからです。

しかし、それは違うと書いていて気づきました。これらの状況は誰にでも起こりうるということです。周りにいる人や、立ち向かう仕事の状況によって、変化するものだと思うのです。

私も書きながら、常に「これは私だ」と反省しっぱなしでした。人はみんな心のどこかで、逃げたいし、認められたいし、都合よく考えたいし、見たことのない荷物を恐れるし、気軽に他人に相談したくない、そんな感情を持っているのです。

「タスクの内容」×「自分の状況」で状況は全く変わります。「自分の状況」これは、これまで「やる気・姿勢」として片づけられていた部分だと思います。しかし自分の意識や姿勢を起点とするのはとても難しいことです。

そのため今回の記事では、「タスクの内容」=「荷物」として、それをどうするかという「行動」に焦点を当てて書きました。「仕事の内容」がクリアになったり軽量化されたりすると、「自分の状況」も変わってくるのです。

だから、これまでのように仕事が思うように進まなくても、「自分にはできない」とあきらめずに、「行動」を少し変えてみて欲しいのです。そして周りの誰かが仕事の進みに悩んでいたら、是非本人のやる気に任せず行動で助けてほしいのです。

自分も周りのみんなも「こんな状況かも?」と想像して、手を差し伸べられる組織であると良いなと改めて思い、本日の “私の反省“ は以上としたいと思います。

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詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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