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「9時から17時まで働くだなんて頭がおかしくなる」TikTokでの悲痛な叫びは不適切にもほどがあるのか?

  • #Z世代採用
  • #シニア採用

HUMAN

sasaki

2024.03.27

昨年10月にネットをざわつかせた悲痛な叫び。大学を卒業して働き始めたばかりのアメリカ人女性ブリエル・アセロさんが「原則9時から17時まで働くだなんて頭がおかしくなりそう」と涙ながらに訴えたTikTokの動画が大きな話題になりました。

「7時30分に家を出て、退社して家に着くのは18時15分」
「何もする時間がない。ただシャワーを浴びて寝るだけ。自炊する時間も運動する時間もない」
「どうやって友だち付き合いするの?どうやってデートするの?何をする時間もない」

私からしたら18時過ぎに帰宅出来るなんて、好きな事に時間を使いたい放題。こんなハッピーな事はありません。「甘えるんじゃない」と説教モードに入りかけましたが、ネット上ではブリエルさんと同世代を中心に支持するコメントや擁護の声も多く寄せられているじゃありませんか。

なるほど。。。確かに週に5日間×8時間、そこそこ残業もこなす働き方を何十年も続けている私にとっては普通の事でも、新卒社員にとってはまだ心も身体も慣れずに疲弊する事だってありますよね。

■TikTokでの悲痛な叫びは不適切にもほどがあるのか?

思い出してみると、2020年から数年続いたコロナ禍では仕事も学校もリモートでのオンライン主体に変化。さらに会社や店舗は営業時間の短縮を余儀なくされ、20時を過ぎると駅前でも真っ暗という時期もありました。学校も休校が続き、行事は自粛や時短になったという出来事は、ここ数年で働き始めたZ世代に対して想像以上に影響しているのかもしれません。

実際に通勤や通学するという経験が極端に少なく、世の中が時短や自粛など縮小化する特異な状況。この中で多感な数年間を過ごしてきたわけで、いきなり毎日通勤して週5日間×8時間の勤務にアジャストする事は意外と難しく、慣れるのに時間がかかるのも無理もないでしょう。

コロナが収束したわけだし、しばらくすれば慣れるだろうという楽観的な考え方もあります。でも、Z世代に限らずですが、働く人の多くがコロナ禍でのリモート勤務や時短勤務を経験した事で、働き方の多様化は今まで以上に加速するのは確実。ブリエルさんの悲痛な叫びを「不適切にもほどがある」と切り捨てる事は簡単ですが、実はアフターコロナの時代に人材を確保するためのヒントが隠されているのでないかと思うのです。

■人材を確保するための企業の取り組み

労働人口が刻一刻と減少する中で、企業側は優秀な人材を確保するため、働き手の多様化するニーズに対応する動きを強めています。テレワークの継続、時短勤務や時差出勤、フレックスタイムの導入、副業や兼業の解禁などはもはや標準装備。あるのが当たり前の時代に突入しつつあります。

さらに週休3日制を導入する企業も増えてきました。最近では千葉県が全職員に対して4週間単位の総労働時間(155時間)は変わらず、土日とは別に毎週1日を限度に「勤務を割り振らない日」を設定できる運用をスタートする事を発表して話題になりました。自分の差配でフレキシブルに勤務が出来る事は働き手にとっては大きな魅力の一つ。今後導入する企業や自治体はさらに拡大していく事でしょう。

■難易度が高まるコンタクトセンターでアルバイト社員に求めるアンマッチ

このようにコロナ禍を経て、より一層変化している働き手の意識と就業環境。次に我々コンタクトセンター、BPOセンター業界で考えてみましょう。センターを運営する上で必要不可欠な存在がアルバイト社員です。センターによって多少の差異はあっても、実際に顧客対応や作業を行うオペレーターの大多数はアルバイト社員が担っています。

労働人口が減っていく中で、当然ながらアルバイト採用の難易度も年々高まっていますが、それと逆行するかのようにオペレーターに求められる仕事の難易度も高まっているのが現実です。顧客対応をする上でのデータベースやツールは複数使用するのは当たり前。商品やサービス内容の研修後に各種ツールを使いこなすための研修、その後に電話対応の研修、先輩社員に就いて実地トレーニングのOJTが続き、独り立ちするまでに1ヶ月以上を要する仕事も増えてきました。

こうなると、アルバイト社員に求める人材要件も自ずと高くならざるを得ません。難易度の高い業務に対応するため週5×8時間勤務出来る人、ツール類を使いこなすITリテラシーの高い人、コールセンターで勤務した経験のある人、そもそも1ヶ月間ある研修の全てに参加できる人。。。もはや求める人材は正社員で勤務したい層となんら変わらないのではないかと。。。それをアルバイト社員の採用に求めるというアンマッチが起こっています。そんなツチノコ市場はこの世に存在するのでしょうか。。。

■アルバイトで働くことのメリットとは?

そもそも、アルバイトで勤務したい人には、相応の理由があるはずです。2022年に統計局が行った労働力調査によると、非正規の職員・従業員が勤務している理由の中で最も多いのは「自分の都合のよい時間に働きたいから」が男性の31.2%、女性の34.5%を占め、圧倒的な1位でした。しかも、そう感じる人数は2013年が431万人だったのが年々増加しており、2022年では679万人に達しました。自分の都合に合わせて働きたいというのが、アルバイトで働く事の主要要因である事は間違いなさそうです。

そして、この調査でもう一つ気になったのは、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由。2022年の調査で210万人(10.3%)を占めていたものが年々減少傾向。2013年には342万人いたものが、10年のうちに130万人も少なくなっています。つまり、正社員の仕事がなくてアルバイトをしているというネガティブな理由ではなく、アルバイトとして働くメリット(時間・自由)を重視する人が増えているという推測が成り立ちます。アフターコロナのパワーワードになっている「タイムパフォーマンス(タイパ)」の浸透はここにも表れているのかもしれません。

参考:総務省統計局 労働力調査 (詳細集計)2022年(令和4年)平均

■アルバイトで勤務するための付加価値=3つのフリー

このような結果からも、アルバイト社員を確保するためには、アルバイトで勤務する事のメリットと付加価値を提供していく必要があります。わが社ではこの付加価値を「3つのフリー」として打ち出した採用活動を始めました。

●エイジフリー
現在進行形の少子高齢化社会に対応するため、50代以降のシニア層の求職者を積極的に採用していく手法。センターによってはシニア向けに研修をリバイズしたり、同世代のSVを研修講師に充てて密なコミュニケーションを取ったり、シニア層が勤務しやすい環境整備を同時並行で進めています。実はシニア層の方が長く継続勤務しているという事実や、内容によっては他の世代よりも高いパフォーマンスを発揮しているという嬉しいデータも出始めました。
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●シフトフリー
アルバイトで勤務する方々の「自分の都合のよい時間に働きたい」というニーズに沿って、月毎や週毎に希望シフトを提出して勤務してもらう手法です。その究極系は昨年4月の現場ドリブンで取り上げた登録社員制度。勤務してほしい仕事を専用のツールを通じて配信して、勤務したい仕事に対して希望を出し、マッチすれば日毎に労働契約を結んで勤務してもらっています。タイパを重視するZ世代に刺さって、応募者の60%以上が10代、20代という予想以上の結果を生み出しました。現在は札幌、横浜を中心に200名以上が登録し、毎月1500時間〜2900時間は各センターで稼働しています。
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●エリアフリー
自宅で受電したり、事務処理作業を行う在宅コールセンター。コロナ禍でリモート勤務を余儀なくされた事で世間一般にも浸透した採用手法です。入社手続きから研修の受講、実際の業務まで1度も出勤することなく全てリモートで行う事が出来るため、「通勤」という概念がなくなり、採用可能なエリアは「全国」へと広がります

やはり在宅で勤務出来るという求職者のニーズは非常に大きく、直近で行ったインターネット関連の事務処理センターの採用では比較的安価な時給にも関わらず、1日平均30件以上の応募があり、2週間未満という短い採用期間ながら70名の新規入社の目途が立ちました。コロナ禍が終わってもエリアフリー=テレワーク採用のインパクトは絶大です。

■3つのフリーを導入する覚悟を持つ事

このように3つのフリーのうち1つでも導入したセンターが厳しい採用活動の中でも善戦している結果を見ると、アルバイトで仕事を探している求職者に響いているのでしょう。ただ、現時点ですべてのセンターが3つのフリーを導入出来ているかというと、まだ踏み切れていないセンターもあるというのが実情です。

いざ導入するとなると、エイジフリーならシニアの方向けに研修内容やスケジュールを再構築する必要があるでしょう。シフトフリーなら仮に9時~18時の稼働時間を時短シフトで埋めるとなると、前半4時間、後半4時間に分けて、2名を配置する必要も出てきます。そしてエリアフリーなら、テレワークを行うためのセキュリティを担保して、リモートでも円滑に業務を行うためのフォロー体制を構築する必要もあります。

導入するためにクリアすべき障壁があって、センターを委託しているクライアント企業に理解を得なくては先には進めません。決して簡単な事ではありませんが、我々に躊躇している時間も余裕もあまり残されていません。今では3つのフリーの導入により、相応に人員の確保が出来ていますが、仮にテレワークがスタンダードになり、どの会社でも導入する事になったら。。。少子高齢化が進む中で完全に取り残されてしまう事でしょう。

昭和の熱血教師が令和にタイムスリップした事で様々な世代間ギャップが浮き彫りになるテレビドラマ「不適切にもほどがある」が話題になっていますが、昭和のご時世に1人1台スマホを持って、それだけで生活が成り立つ時代が十数年後に来るなんて一体誰が予想したでしょうか。

それと全く同じ。時代の流れは私たちが想像している以上に早いようです。数年後には3つのフリーを標準装備していることがアルバイト採用のスタンダードになる時代が来ているかもしれません。手遅れになる前に勇気を持って一歩踏み出す。大げさかもしれませんが、私たちの覚悟が試されています。

当社はオペレーター採用サイトをリニューアルしました。
オペレーターさんがどのような思いで仕事に取り組んでいるか、ご自身の生活の中で仕事をどう位置付けているか。たくさんのオペレーターさんのお話には誰もがきっとほっこりした気持ちになることと思います。ぜひご覧ください。


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