オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジンpowered by Bewith

TikTok・朝倉未来BreakingDown・倍速視聴から考えるZ世代が求める働き方とは?

  • #コールセンター
  • #コンタクトセンター
  • #Z世代採用

HUMAN

sasaki

2023.04.26

これまで2回に渡って考えてきたシニア採用。全人口における65歳以上の割合(高齢化率)が、2025年には30%に達する超高齢化社会の中で、シニア層の積極的な採用と環境整備の重要性を訴えてきました。

■年齢なんてただの記号だ!~シニア採用に向けた取り組み~
■シニア採用に立ち塞がる入社2ヶ月間の壁

危機感を感じてシニア採用に一歩踏み出した、という嬉しい反響があった反面、同時に考えなければならないのは、若い労働力の確保。採用の難易度は高まってはいますが、仕事を求める若者・Z世代は確実に存在します。

ここをスルーするのはあまりにももったいない。どうすれば若手を採用する事が出来るのか。
今回はこれまでとは真逆に、Z世代(10代・20代)が求める働き方について考えてみたいと思います。

Z世代に響いた登録社員制度

まず、そのヒントになりそうなのが、昨年8月にわが社で新設した登録社員の制度です。

面接を経て、一定基準を満たした方を登録社員として採用。その方々に対して、勤務してほしい仕事を専用のツール(アプリ)を通じて配信。登録社員の方は、勤務したい仕事に対して希望を出して、マッチすれば日毎に労働契約を結んで勤務してもらう、という新しい雇用形態です。

シフトが固定されていないため、家事や育児などの合間を活用して多様な働き方をサポートしようという試みで始めたのですが、これが予想に反してZ世代に響きました。昨年10月~11月に札幌拠点で登録社員を募集する採用を行ったところ、1ヶ月足らずで174名からの応募があり、そのうちなんと95名(54.6%)が10代~20代の応募だったのです。

最近では応募者の75%以上が50歳以上、10代・20代の応募はパラパラという採用を数多く見てきただけに、雷に打たれたような強い衝撃を受けました。しかも、1回だけならまぐれ当たりという事もありますが、2023年に入ってからもZ世代からの応募は留まる事を知りません。1月~3月までの応募者のうち、62.6%は10代・20代が占めました

もはやこれはラッキーや偶然という言葉で片づける事は出来ません。登録社員という働き方が、Z世代にマッチしたのは間違いなさそうです。

スキマ時間を埋める=タイパ重視

では、一体どこがZ世代に響いたのか。

実際に、採用面接で聞いた志望動機を振り返ってみると、「本業のカフェとダブルワーク出来る仕事を探していた」「授業やサークルの合間で勤務したかった」「ピンポイントでこの日に勤務出来る仕事を探していた」など、スキマ時間を有効活用したいという声が数多く寄せられました。自分が価値を感じるモノや時間を大事にしつつ、スキマ時間を無駄にせず、お金を稼ぎたい。このタイパ(タイムパフォーマンス)を重視するライフスタイルは、Z世代の大きな特徴の一つです。

最近ニュースなどでもよく耳にする「動画の倍速視聴」は、まさにタイパの象徴。損害保険ジャパン株式会社の調査によると、Z世代の70%が倍速視聴をしているそうです。その理由を聞くと、「時間がもったいないから」(51.9%)「他の動画も視聴したいから」(48.1%)が占めており、時間を有意義に使いたいという意識の高さが垣間見えます。

そう考えると、Z世代に刺さっているツールやイベントは、タイパを意識しているものが数多くあります。15〜60秒程度のショート動画が主流のTikTokはスキマ時間にサクッと視聴出来て、自分が得たい情報を短時間に収集できる手軽さがウケて、Z世代から圧倒的な支持を集めました。一方で、10分程度の長い動画が主流だったYouTubeも徐々にショート動画にシフト。ショート動画の月間投稿数は、2021年から2年間で約10倍になっており、ショート動画の収益化にも踏み切るなど、タイパを意識した形態に変化しつつあります。

そして、YouTubeの登録者数380万人を誇る人気格闘家・朝倉未来が仕掛ける格闘技イベント「BreakingDown」の試合時間は、なんと1分間という超短期決戦。オールドファンからすれば少々物足りなく感じますが、1試合が10分~15分とダラダラと続くよりも、1分間に全力を注ぐテンポの良さがZ世代の熱烈な支持を集め、今や既存の格闘技イベントを凌駕する規模にまで成長しました。

このように自分が得たい情報や結果を端的に手に入れる事が出来るタイパは、Z世代を取り込む上で必要不可欠なキーワード。きっと登録社員制度もタイパがあると判断されたのでしょう。

スマホネイティブ・デジタルネイティブ

もう1つ、Z世代に響いたと考えられる要因が、スマホネイティブ(デジタルネイティブ)という考え方です。

Z世代は、物心がついた頃にはスマホを手にして、スマホやインターネットなどのデジタルが、生活の一部になっている世代。20代は、1日平均3時間以上スマホを触っているというから、「寝ている時以外はスマホを見ている」という親御さんの嘆きは、誇張でも何でもなくリアルな話なのでしょう。

登録社員制度は、決してスマホネイティブを見越したわけでもないのですが、実際に仕事の募集や応募は基本的に専用ツール(アプリ)を通じて行っています。秘かにこれも、Z世代に受け入れられた隠れた要因だったのではないか、と振り返っています。

今年に入ってから、急な仕事の募集があり、登録社員の方々に連絡したのですが、何度電話をしても出てくれなかったのに、専用ツールを使って連絡をすると、即座に返信があったのは、実に印象的な出来事でした。Z世代にとって電話でのやりとりはわずらわしく、アプリで完結した方が手っ取り早いし、身近な連絡手段なのでしょう。改めてスマホネイティブを痛感させられました。

Z世代に腰を据えて勤務してもらうには

このように、Z世代の支持が集まりつつある登録社員制度。

振り返ってみると、図らずもZ世代の特徴やトレンドにマッチしていた事がだんだんわかってきました。でも、これで万々歳かと言えば決してそうではありません。育ち盛りのZ世代には、スキマ時間を埋めるだけでなく、じっくり腰を据えてフルタイムで勤務してほしい、というコールセンターの現場管理者の切実な声も聞こえてきます。

近年のコールセンターの業務は複雑化しており、研修が長期間に及び、そのすべてに参加して知識を習得しないと、対応が難しい業務が増えているのが現実です。このような業務に勤務可能な登録社員はなかなかいません。スキマ時間を埋めてタイパを重視したいZ世代と、難易度が高まりフルタイム勤務者を欲するコールセンターの仕事。この隔たりの解消こそ、次の大きな課題です。

かなりの難問ではありますが、突破口となり得るのが、これもまたZ世代のタイパの考え方。無駄な時間はできるだけ節約したい、効率化したいと考える裏側には、自分が価値を感じたモノに対しては時間を惜しまない、という真意が存在します。つまり、Z世代が「この仕事を長く続けてもいい」「この職場は働く価値がある」そう思ってもらえるための努力とアクションは、絶対に行うべきです。

Z世代が、何に対して価値を感じるのか。時給や昇給、資格取得や社員登用などの待遇面の向上。Z世代の80%が関心を示すと言われているSDGsへの関わり方や、お願いする仕事に社会的意義を打ち出すなどなど。それはそれで効果はあるかもしれませんが、大きな仕掛けは簡単に出来る事ではなく、どうしても時間も費用もかかります。

Z世代は人間関係を大切にする

取っ掛かりになりそうなのは、良好な人間関係の構築や働きやすい雰囲気作りという実に古典的で人間臭い部分です。何をいまさら…と思うかもしれません。実際に私も半信半疑です。

でも、株式会社i-plugが展開するOffierBoxが行った「企業の魅力と働き方」に関する意識調査によると、就活生が企業に魅力を感じる点は「社内の雰囲気が良い」という回答が75%と突出して高い結果になっていました。タイパ重視、効率重視と聞くとドライな印象を持っていましたが、意外にもZ世代は一緒に働く同僚や上司との関係性、社内の雰囲気、居心地の良さも重視しているようです。

なるほど。そういえば、わが社の昨年4月に入社した新卒が、同期で頻繁に出掛けたり、コミュニケーションを密にして励まし合っている、という話を聞いて驚いた事を思い出しました。ドライどころか、昭和世代の私なんかよりずっと社交的で、人間的じゃありませんか。既出のアンケート結果も、あながち外れてはいないようです。コミュニティ内の繋がりや人間関係を大切にするのも、Z世代の特徴なのでしょう。

Z世代との接点をどう活かすか

雰囲気のよい職場作りを語り出すと、日が暮れてしまいそうなので、また別の機会に譲りますが、まず私たちが大事にしなければならないのは、登録社員という形で、多くのZ世代と接点を持つ事が出来た、という点です。接点さえあれば、仕事を通して社内の雰囲気を体感してもらう事も出来るし、話をする中で仕事や職場の魅力を伝えてフルタイム勤務に誘導する事だって出来ます。要は「このコールセンターで長く勤務したい」「コールセンターの仕事って意外に楽しい」と思ってもらうためのスタートラインには立つ事が出来ているのです。

決して簡単な事ではありませんが、若い労働力の囲い込みに四苦八苦している企業が多い中、幸運にもZ世代との接点がある事は、本当に貴重。決して無駄には出来ません。

Z世代が働きたいと思う職場を作っていく。この歯ごたえのある「世紀の一戦」はまだ第1ラウンド終了のゴングが鳴ったばかり。第2ラウンドでどう仕掛けるか、これからが本番です。

当社はオペレーター採用サイトをリニューアルしました。
オペレーターさんがどのような思いで仕事に取り組んでいるか、ご自身の生活の中で仕事をどう位置付けているか。たくさんのオペレーターさんのお話には誰もがきっとほっこりした気持ちになることと思います。ぜひご覧ください。



【OSHIGOTOマート】 https://www.bewith.net/oshigoto-mart/


関連記事