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年齢なんてただの記号だ!~シニア採用に向けた取り組み~

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HUMAN

sasaki

2022.10.19

先日、複数のコールセンターを運営するマネージャーと採用についての打合せをした時に印象的だった一言。

我々が現場SVだった頃にたくさんいた若手のフリーターたちは一体どこに行ったんだろう

オペレーターの採用面接をしていると、最近20代や30代からの応募が明らかに少なくなっているという実体験によるものでした。果たしてこの肌感覚は本当なのでしょうか。

私が担当しているエリアで複数の業務をサンプルとして調べてみると、予想通り、いや予想以上の数字が出てきました。直近1ヶ月の応募者を年代別に見ると、10代~30代のシェアはなんと28.2%しかありませんでした。その一方で50代は26.4%、60代以上は35.6%を占めていたのです。冒頭の「若手のフリーターはどこへ行った」と感じた感覚はあながち間違っていないようです。

多少のアップダウンはあるかもしれませんが、この流れは決して一時的なものではないでしょう。かねてから叫ばれている日本の少子高齢化問題。総務省の調査によると、20歳~39歳の人口は2000年で約3,500万人だったのに対し、2020年には2,500万人。2000年当時と比較して実に73.4%にまで減少しています。

逆に高齢者は増加の一途。全人口における65歳以上の割合(高齢化率)は2025年には30%に達すると言われています。ざっくり3人に1人は65歳以上という計算。世界のどの国も経験したことのない超高齢社会を迎えます。つまり、若い労働力の確保は年を追うごとに激化する事は不可避であり、私たちはまずこの現実を受け入れる必要があるのです。


※出典:令和2年版高齢社会白書


この状況に直面して、我々は何をすべきか。20代~30代を呼び込むための施策はもちろん講じるとして、重要なのはシニア層が働きやすい環境を整備して、積極的に採用してコールセンターの貴重な戦力としていく事ではないでしょうか。今回はそんなシニア採用について考えてみたいと思います。

まず最初に「シニア」と聞いてどんなイメージを持つでしょう。体力、瞬発力、集中力、記憶力… いろんな能力がピークを越えて徐々に低下していく年代。多くのスポーツ選手が40代前半で体力の限界を感じて引退する姿を目の当たりにしている事もあってか、下降線という印象を持つ方は多いはずです。でも、実はこれ、年齢によるバイアスがかかっているかもしれません。

マサチューセッツ工科大学の認知科学研究者ジョシュア・ハーツホーン氏は脳のピーク年齢は、能力によって変わるという研究結果を発表しています。情報処理能力と記憶力は18歳前後がピークというのはなんとなく理解出来ますが、なんと43歳前後が集中力のピーク、そして50歳が基本的な計算能力のピークとしています。そればかりか、50歳前後が新しい情報を学び、理解する能力のピークであり、67歳前後が語彙力のピークだというではありませんか。目からうろこ。もし、この研究結果を考慮すると、これまでの採用基準が一変する可能性を秘めています。

では、実際のコールセンターの中において、シニア層はどんな活躍をしているのでしょう。私が担当している健康食品のコールセンターの中で「応対品質」と「後処理時間」の2項目を年代別に比較してみました。


応対品質


3ヶ月に1度、社内の専門チームが実際の応対をモニタリングし、第1印象、発声、言葉遣い・敬語、テンポ、復唱など全16項目を点数化しています。この直近3回分のデータを年代別に分類すると、最も点数が高かった40代の67.4点には及ばなかったものの、50代以降のオペレーターは66.8点と20代、30代よりも高いスコアを記録しています。

50代以降のオペレーターは全項目において安定した結果となっていますが、他の年代に比べてスコアが高かったのは「発声」の項目。お電話をくださるお客様の多くが70代以上のご年配という事を意識して、声量が大きく、ハキハキした言葉遣いが出来ている応対が多数見受けらました。実際にオペレーターに話を聞いてみると、普段からお客様と同じ年代のご両親や親類と接する機会が多いため、自然と明瞭な対応が身についているのではないかと話していたのが印象的でした。なるほど、これは人生経験を重ねる事で体得したシニア層ならではのスキルと言っていいかもしれません。

その一方で少し注意が必要なのは「話すテンポ・聴く姿勢」。説明する事や会話をリードする事に一生懸命になるあまり、トークスピードが早くなったり、お客様との会話が被る応対が散見されました。全員ではないにせよ、実際にシニア層のオペレーターを受け入れる際には、初期研修でこの辺をフォローしておくと、さらに良い応対になるでしょう。このように長所短所はありつつも、応対品質の面でシニア層は他の年代に比べても遜色ないスキルを有していました


後処理時間


電話対応が終わった後に受け付けた注文内容や対話の内容をシステムに入力する後処理時間。入力が速い=若い世代というイメージがありましたが、直近3ケ月間のデータを紐解いてみると予想を覆す結果になりました。30代、40代の処理速度には及ばなかったものの、なんと20代より50代以降のオペレーターの方が処理速度は速いという結果が出たのです。

でも、実はこれも必然なのかもしれません。20代(特に前半)は完全にスマホ世代。何をやるにしてもスマホで済むため、パソコンを使用しなくなったというニュースをよく耳にします。実際に採用面接で話をしていても、パソコン操作への不安を吐露する学生や、授業以外では操作した事がないという学生はちらほらいます。これが後処理時間の結果に繋がっているのかもしれません。

逆にシニア層もスマホを使うのは日常茶飯事。それに加えてWindows95の大フィーバーをリアルタイムに体感してきたまさしくパソコン世代です。しかも当時は今よりもシステムやソフトは使いにくいものが多く、操作方法が難解なものは多数ありました。それに悪戦苦闘しながら使ってきた方々にとって、洗練されてきた現在のツールを使いこなす事は造作もない事なのかもしれません。「シニア層はパソコンが苦手」という固定観念は捨てた方が良いでしょう。人物本位で見るべきです。

そして50代以降のオペレーターの後処理時間の速さの礎となっている大きな要因は間違いなく勤続日数の長さです。入社から退職するまでの勤続日数を年代別で比較すると次のような結果になりました。



卒業、就職、転職、引っ越し、結婚、出産などライフイベントが多い20代、30代はどうしても入社から退職までの期間が短くなりがち。しかし、40代、50代のオペレーターは1度入社すると長く勤務してくれる方が多い事が如実に数字に表れています。

その差は歴然。40代が圧倒的に長いですが、50代以降の方も2年近くは継続勤務しています。仮に業務習得に少し時間がかかったとしても、継続して勤務してくれる事で操作にも慣れ、他の若い年代と比較しても遜色ない後処理の速度を体得したと言っていいでしょう。まさに継続は力なりです。

結論、ハーツホーン氏の研究のようにきれいにまとまらないものの、50代以降のオペレーターはコールセンターの中で一定のパフォーマンスを出せているのは間違いありません。でも、これが全てのセンターで同じ結果になるかと言えば、決してそうではないでしょう。

今回サンプル調査を行った健康食品のコールセンターには50代の方が継続勤務しやすい土壌が知らず知らずのうちに培養されていました。現在このコールセンターに在籍しているオペレーターの年代別の構成比率を見てみると、50代以降のオペレーターの割合が圧倒的に多かったのです。



センター開設以来、ご年配のお客様に寄り添って親身になった対応が出来る方という事で、積極的に40代~50代を採用してきました。その結果がこの構成比に繋がったのでしょう。改めて振り返ってみると、50代でコールセンターに初めて挑戦する方や久しぶりにお仕事をされる方はたくさんいました。それでも、同世代のオペレーターが多くいる事でコミュニティがうまれ、安心して勤務出来る環境が自然に出来上がっている… しみじみとそう感じています。

OJTを行うトレーナーも同年代、そしてSVもオペレーターから登用された同年代。こんな環境であれば気軽に相談も出来るし、管理者側もフォローもしやすい。決して計画的ではなかったものの、結果として50代以降の方が継続しやすく、活躍しやすいセンターになっていたと考えています。

皆さんが運営しているセンターや職場ではまだ50代以降のスタッフはまだ少数というところも多いでしょう。それでも、やれることは身近にたくさんあります。研修を50代向けにアレンジして研修期間を長めにとったり、最初に習得するスキルをミニマムに絞って段階的にレクチャーしたり。OJTトレーナーを同世代の方をアサインするなど、明日から出来る環境作りがいくらでもあります。まずは自分の職場ですぐにできる一歩を踏み出す事でシニア層が安心して働くことが出来る環境作りに繋がるのではないでしょうか。

そんな中、先日とある求人媒体を運営する会社から「お仕事に応募するフォーマットから年齢欄をなくしてはどうですか」という提案を受けました。当初はいやいやいや、そんなの無理でしょと思いましたが、今後の少子高齢化の激化、採用難、そして今回の検証結果を踏まえると、本気で検討するべき時期にさしかかっていると言っても過言ではありません。

かつて全盛期のK-1で38歳にして4回目の優勝を果たしたアーネスト・ホーストは「年齢なんてただの記号さ」と笑いました。その言葉の通り、年齢というバイアスを捨てて、人物本位で判断する。そして求職者の方は年齢を気にせずアグレッシブにチャレンジする。これからの時代、そんな採用が求められています。

ビーウィズでは、コールセンター教育を効率化し、オペレーターの成長サイクルを高める教育プラットフォーム『Qua-cle(クオクル)』をご提供しております。

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モニタリング自動評価(応対のSTTデータによる評価)機能では、日常の自分の成果を月に一度、確認することができるため、オペレーターにとって大きな成長機会に繋がります。


詳しい資料は、以下よりダウンロードいただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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