オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジンpowered by Bewith

ビジネスチャットの功績とリスク ~「今」重視のチャットは、「この先」の私たちを蝕むのではないかという、ちょっとした不安について~

  • #チャット
  • #ビジネスコミュニケーション

HUMAN

at

2024.06.19

ビジネスコミュニケーションの主役級に躍り出たビジネスチャット。ビジネスチャットの市場は、2019年の120億円規模から、2023年度は360億円規模にまで拡大しています。矢野経済研究所の文献によると、27年度までには450億にまで達する予測とのことで、Teams/Slack/LINE Worksなどなどツールは様々ですが、とても身近なものになっているのは事実です。

しかし、そんなチャットに、“踊らされているかも・・”、皆さんはそう感じたことはないでしょうか。私は最近そう感じるシーンが多々あります。便利に使いこなしているようで、支配されているに近いかもしれません。それは手段としての浸透のスピードと裏腹にルールが浸透していないからです。ビジネス上には、挨拶から始まり、電話・メール・文書・会話・プレゼンなど、あらゆるコミュニケーションツールやシーンにおいて、伝統的なルールが存在します。その伝統的ルールを全面的に肯定するかは別として、やはりそれなりの共通理解があることは大きな意義があります。

一方で、ビジネスチャットは、まだ共通ルールがありません。「“チャット”=“おしゃべり”なのだから、ルールなんていらない!」という新たな常識的なものに逆にとらわれすぎて、ルールがないことへの意見が伝えにくい背景もあるかもしれません。じゃあ使わなければいいではないか・・・と。とはいえ、手段としては大変便利なものです。ここでしっかり考えることでよりよいツールに進化させられるのではないかという期待も込めて、筆者の思う課題感とその要因について考えていきたいと思います。

▶テキスト偏重への漠然とした不安

「“目で考える人“の知性は視覚的である。視覚的思考は、”耳で考える人“の聴覚的思考と性格を異にするということを、いまの人はあまり考えない」(外山滋比古「思考力の方法―『聴く力』篇」より)

皆さんは、自分が視覚的思考派であるか、または聴覚的思考派であるか、意識されたことはありますでしょうか。さきほどの引用部分だけでは、どちらに比重を置いた主張か少々わかりにくいので、もう少し掘り下げると、「日本文化はあまりにも視覚的思考重視になっていて、聴く力が弱くなった。講演を聴いて、メモを取るのが当たり前。これを肯定することも疑わない。」といった論調で書かれており、聴く力の軽視が叫ばれています。

私は、文字を書き、情報をまとめ、図示し、レジュメにしたりすることが昔から大好きで、それを頼りに学習したり仕事の支えにしてきた傾向があり、だいぶと視覚的思考に寄っている自覚があります。そういった背景もあり、冒頭の言葉に触れてドキリとして以降、ずっとこの言葉を思いだすようにしています。そして聴覚的思考も大事にしたいと思っています。

こんな思いがある中なので、チャットの登場によって、聴く機会より、読んで見る機会が圧倒的に増えたこの状況についての個人的危機感は強いです。もっと話して聴く機会を大切にできないか。
ツールと仲良く末永く付き合っていくために、顕在化している課題をもとに、どうしたらよいのか、そして聴覚的思考にあって、視覚的思考に無いものとはどんなことなのか、も考えていきたいと思います。

▶チャットコミュニケーション偏重による影

チャットは、すぐに伝わりすぐに反応をもらえる便利さや、発信する側の気軽さもあり、遠隔にいる人とのコミュニケーションを円滑にしてくれる素晴らしいツールです。しかし、その便利さ故、すべてをチャットで乗り切ろうとする側面も否めません。適度な利用から、過度なチャットコミュニケーション活用になってくると、そこにはどのようなリスクが潜んでいるでしょうか。

リスク1:発信が楽なために自己統制がうまくできない。会話よりおしゃべり?

皆さんはチャットでの会話量が多いですか?それとも変わらないですか?または少ないでしょうか?タイプにもよると思いますが、いずれの場合にも気を付けておきたいのが、「自己統制」です。自己統制とは、コミュニケーションスキルを示したENDCOREsモデルからの引用ですが、コミュニケーションスキルの最も身近にありかつ核となる部分です。


出典:コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合への試み(2007)を元にビーウィズ編集

自己統制力は、“自分の感情や行動をうまくコントロールする力”で、コミュニケーションの出発点ともいえるスキルなのですが、実はチャットコミュニケーションにおいて、この核となるスキルを育むのがとても難しいと感じています。気軽に考える前に言葉にしてしまうようなケースです。
テキストこそ言葉の表現がダイレクトに伝わるため、内容や伝え方を間違えると、思わぬ誤解や混乱を生む可能性もあります。特に、社内など近い人達とのテキストコミュニケーションにおいて起きやすいことです。チャットの送信の際は、まずこの自己統制力が働いているか、是非考えたいものです。では、何を基準に発信してよいのかを考えるべきでしょうか。

私は下記を目安にするとよいのではないかと思っています。

チャットにおける自己統制のポイント
・ここはどういう場所か、どういう目的で与えられた場所かを考える
・ここに集まっているメンバーの特性や関係性を考える
・自分の役割を考え、この場にふさわしい言葉を選ぶ
・本当に「今」伝えるべきことなのかを考える

・自己統制を考えるうえで必要なのは、「場所」と「相手」と「言葉」です。チャットは「言葉」だけに注意が行き過ぎて、「相手」「場所」を忘れてしまうことがあります。親しい中だけれど言いすぎていないか、今伝えるべきことなのか、チャットテーマの目的にふさわしい議論になっているか、などの注意が必要です。本来対面での会話と気を付けるべきことは同じですが、テキストの気軽さ故に、自分の統制力も緩んでいないか確認しましょう。

リスク2:テキスト情報過多による、要点と結論の粗雑さ

テキストチャットは、社内外の様々なコミュニティとの間での短いコミュニケーションを可能にするため、どうしてもラリーの回数が多くなります。メールであれば2往復くらいのやり取りが、チャットではその倍、数倍になることもあります。スピードが速い分、ラリーが多いのが特徴です。
しかしこのラリー、当人同士のストレスは少ないですが、周りでキャッチアップするメンバーは少々手間が多いのも事実です。このことによる2つの懸念があります。

1つは、会議のように会話を纏めようとする習慣が薄いことです。当人同士は理解していても、共有を受けている周りのメンバーは、結論がどこにあるのかもわかりにくく、すべての会話の履歴を後から追うことは非常に手間がかかる作業でもあります。対面での会話は、最後にまとめとしてテキストを活用することが多いのに対し、テキストでの会話はそのままの形で共有されることが多いように思います。是非、周りに共有すべき会話の場合には、そのまとめを記しておくなど工夫が必要です。

2つ目は、情報過多そのものへの危惧です。人は、多くの情報をすべて処理しようとすると多くのエネルギーを要し、この高負荷な体の疲労や精神的ストレス要因への防衛本能として、「入ってくる情報をそれ以上増やさないようにする」のが自然な反応なのだそうです。チャットは、発信者や話題の中心者は何も感じませんが、周りにいるメンバーの共有が増えます。すると情報過多状態に陥りやすく、その場合、意図しない「無関心」を呼ぶ原因にもなってしまうのかもしれません。ちなみにその場の音声のやり取りの場合、自然と重要な部分を判断して脳が理解しようとするのに対して、文字化されたものはやはりそれが難しい側面があるそうです。確かに身に覚えがありますね。

チャットにテキストコミニケションの量は適切か
・相手や周りに配慮した適切な伝え方(ラリーを減らす工夫)ができているか
・“今”だけを重視した無駄な発信になっていないか
・目的に適した、まとめや結論に至っているか


リスク3:“今”伝えたいことでも、使うのは“今”ではない情報の発信

前述の通り、チャットでもある程度情報を纏める習慣は必要だと考えています。しかし、そこにも注意が必要です。私は先日、いくつかの業務に関するFAQをまとめたので、プロジェクト内に共有しようと、【重要!】のタグをつけてチャットで発信しようと思ったときにこんなことを考えました。“重要だけど、今必要なものではない、必要な時に見つけてほしい・・”と。皆様、お気づきの通り、FAQをチャットに残そうとすること自体、正解とは言えません。

そもそもチャットは、今のリアルタイムな情報共有に向いているものです。チャットは流れていきます。計画性や過去の情報整理や検索性には向いていません。“今”伝えたいと考えること自体は正解だとしても、この情報をいつどうやって使うのかという相手の立場やプロジェクトやチームとしての適性を考え、情報を管理することが求められます。

チャットはリアルタイムの情報向き
・伝えたい情報は、どのように活用されるべき情報かを考える
・今リアルタイムで情報交換すればよい情報はチャットのみでOK
・後から検索すべき重要情報は、必ず別の手段も考える
・計画性の共有も難しいため、考慮する

ここまでチャットというツールを通じて、コミュニケーションスキルの重要性を考えてきましたが、チャットに限らず、ビジネスの変化も著しく、多忙な今の時代だからこその課題な気がしています。【伝える手段としてのチャットから、受け取ってもらえる手段としてのチャット】にしていくのも、使い手の私たち次第なのだと改めて考えさせられました。

▶チャットは便利だけど、やっぱり直接の会話も大切にしたい

そして最後に、やはり耳も効果的に使いたいと私は思います。冒頭の引用で“視覚的思考派”と“聴覚的思考派”の話をしましたが、このバランスも大事にしたいと思うのです。

テキストは目で考えることが多くなりますが、特に短いやり取りの場合、大局観でとらえることがおろそかになります。一方、一連の流れを耳で聞いてから考えると自然と大切なことを分類し、全体の流れがつかめるようになることも多くあります。また、チャットはたくさんおしゃべりをしているにもかかわらず、対面での「会話力」にはやはりつながらない点ももったいない点です。会話力は、相手の話を聞くから始まり、反応し、話題を広げる力ですが、チャットだけでは、やはり磨かれない部分が多いでしょう。この会話力は、閉ざされたコミュニティでは生まれにくく、色んな人との会話の機会を持つことで磨かれる要素が強いと思っています。

私自身、テキストコミュニケーションと同時に、顔を上げて色んな音と色んな人がいる環境でのコミュニケーションで「聴く力」も、楽しんでいければと思います。

ビーウィズが提供するクラウドコンタクトセンターシステム(クラウドPBX)『Omnia LINK(オムニアリンク)』は、コールセンター事業社であるビーウィズの現場ノウハウから生まれたコールセンターシステムです。


高精度な音声認識による「リアルタイムテキスト化」をはじめ、コールセンター向けの数々の先進機能を搭載しており、オペレーターとSVの業務を大幅に効率化し、コールセンターの生産性と品質の向上、在宅コールセンターの推進など様々な効果をもたらす、使いやすさにこだわったシステムです。

Omnia LINK(オムニアリンク)に関する詳しい資料は、こちらからご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-126.html

その他関連サービス

■クライアント企業に合わせた、最適運用を実現
コールセンター・コンタクトセンター
■クライアント企業のマーケティング活動を最適化
アウトバウンド
■お客様のニーズに寄り添い、お客様に合わせたミライを提供
インバウンド


関連記事