いつも行くカフェがある。そのカフェのトイレには「トイレ掃除チェック表」がついていて、「日付」「時間」「担当者名」があり、「床」「便器」「壁」「鏡」など、掃除をするべき項目が記載されている。それを担当する店員さんが実施ごとに〇をつける運用になっているようだった。
イメージはこんな感じ。
これが、2時間置きに毎日欠かさず実施されており、そのお店のトイレの清潔さがいつも維持されている。さらには、余白スペースに「桜が咲きましたね」とか「寒くなりましたね」など店員さんがコメントを書いてくれていて、いつもなんとなく目に入り、店員さんと顧客の無言のコミュニケーションツールにもなっている。
さて、今日は誰もが一度は使ったことのあるチェックリストついて書こうと思う。
チェックリストの類型
チェックリストには、複数の類型があると思う。
勝手ながら、類型を整理してみた。
診断型&フレームワーク型チェックリスト
センターでよく使われるチェックリストは「記録型」と「点検型」である。今日はこの2点にフォーカスして説明をしたいが、先に診断型とフレームワーク型について軽く触れさせていただく。
診断型は、健康診断の問診票や、最近ではコロナワクチンの予診票などが該当する。どこに問題点があるのか切り分けるためのシートである。コンタクトセンターでよく使われる診断型チェックシートの王様はモニタリングチェックシートだ。抜け漏れを確認して、〇×をつけるというよりは、それぞれの良し悪しを評価するための要素がリストになっている。
フレームワーク型は、オズボーンのチェックリストのように、抽象的な物事のアイデアを練るときに、よくある思考の切り口をまとめたチェックリストである。この思考の切り口に当てはめてアイデアを検討することで、アイデアが出やすくなるというもの。オズボーンのチェックリストに限らず、フレームワークというのは往々にして同じかもしれない。(SWOTでも4Pでもなんでも、同じ考え方)
記録型チェックリスト
さて、ここからはセンターで活用できるチェックリストうち、記録型と点検型ついて、お話ししていきたい。
まずは記録型である。
記録型は、いわゆる「QC7つ道具」の1つである「チェックリスト」の活用方法だ。
定性データは数字でとれないため、観察して数量を計測し、分析をする必要がある。そのためにチェックシートを用いて数量を計測するという手法が使われる。コンタクトセンターでよく使われるのは、新人オペレーターの受電件数管理や、新人のスーパーバイザーのエスカレーション記録などだ。
事務処理センターなど、紙処理が多い業務ではシステム的に処理件数等を管理することが難しいため、こういうチェックリストを活用して工数管理をしていることが多い。この方法はオペレーターさん自身が記録をするので、自身で現状把握をして、改善につなげるというPDCAでいうところのチェック機能をもたらす面もある。
以下の記事でも書いたオペレーターさん自身が自分のパフォーマンスを改善するうまい方法の一つだ。
オペレーション改善も、「測るだけダイエット」のススメ | HUMAN | オペレーションを進化させる現場のWebマガジン 現場ドリブン
現場ドリブン
私は、太りやすい。正確に言うと、食べるのが好きすぎて、痩せても徐々に太ってしまう。しかしながら、たまに奮起してダイエットする。そのため、
ただし、定性データとして活用することを考えると、各オペレーターさんやスーパーバイザーが記載したチェックリストを集めて、集計する必要がある。この作業が多くのセンターで難儀になっていることが多い。最近では、これらをMicrosoftfoamsなどのデジタルツールを使って電子的に行うことも多く行われている。
2つ目は点検型だ。
冒頭のトイレの掃除チェックリストは、まさにこの点検型である。
点検型チェックリストの良さは、タスクの抜け漏れを防ぐだけでなく、「実行したこと」の記録にもなる点である。チェックリストにチェックが入っていれば、トイレ掃除がされたことがわかるだけでなく、トイレ掃除のうち「床は拭いたんだな」「トイレットペーパーは補充されたんだな」ということがわかる。
チェックリストがあるだけで、漠然としていた仕事の量が可視化され、俄然やりやすくなる。
私は週末の家事はチェックリスト化して、終了した家事にチェックしていく方式をとっている。
漠然と家事をしようと思うと「あれもあるし、これもあるし」と、とても憂鬱になるが、チェックリストでタスクの全体数が決まっていれば「あと5個」とか「土曜日に半分やって、日曜日に半分やろう」などの計画も立てやすい。
また、家事のような仕事はいくらでも極めることができてしまう。
終わりをちゃんと定義してあげなければ、一生「まだ終わっていない」という気持ちになるのだ。だからこそ、チェックリストで対応する内容を事前に決めておけば、無駄に自分を高めようなんて思うこともなく、チェックリストが完了するだけで自分をほめてあげられる。
さて、コンタクトセンター運営には、多くのルーティンタスクが存在する。この日々のルーティンタスクこそ、ぜひチェックリスト化することをおすすめする。
縦軸にタスク、横軸に日付を入れて1枚で1ヶ月分のタスクリストを作り、タスクを遂行した担当者の名前を入れて、完了を見ていくようなタスクリストが良い。
おすすめは紙での管理だ。センターのわかりやすいところに紙でルーティンタスクのチェックリストを貼り出しておくのだ。
そうすることで、オペレーターさんなど、不特定多数の人の目に触れる。あなたの上司がふいにセンターに来た時に「ルーティンタスクが完了しているか」をチェックすることもできる。この時にきちんとチェックリストが運用されていて、今日の仕事がきちんと終わっていれば、「ちゃんと仕事していて素晴らしい」というアピールもできる。
逆に、チェックリストの運用をしているのに、誰もチェックしていないようなチェックリストがセンターに掲示されていると、掃除されていないトイレのように、とたんにセンター運営を心配されるリスクがある。私がセンターマネージャーならば、全くチェックされていないチェックリストがセンターに堂々と貼られていたら、品質大丈夫かな?マネジメントちゃんとされているんだろうか、と思ってしまう。こういうところに、センターのマネジメント体制や美学が垣間見える。
ただチェックリストを使いきれないだけで、あなたのセンターのマネジメントを疑われるのはぜひ防いでもらいたい。
そのためには徹底されるチェックリストにすることである。
では、徹底されるチェックリストにするためには、どうすればよいか?それは、使うことのメリットが生まれるチェックリストを作るということである。
具体的には以下のようなポイントで作り、意味のあるチェックリストにしていくのだ。
① チェックリストの期間を合わせること
同じチェックリストなのに、デイリーでの作業と、マンスリーの作業がごちゃ混ぜになっていると、マンスリー作業は月のうち1日を除いて、「作業対象外」になってしまう。チェックリスト内に初めから「やらなくていいタスク」を含めることで、チェックリストの純度が下がり、徹底されなくなるリスクが高まってしまう。
② 抜け漏れがない恒常的なタスクは含めない
「ホットライン対応」や「エスカレーション対応」など、チェックリストになくても必ず遂行される業務は入れる意味がない。「電話が鳴ったらホットラインは取る」だろうし、「オペレーターの手が上がればエスカレーションに行く」、これらの行動のきっかけはチェックリストではない。また1日に何度もランダムに発生する業務はチェックリストに入れたところで、完了を定義することが難しい。そういう業務はチェックリストに含めることで、チェックリストの質を下げ、徹底するインセンティブが働きにくくなる。
③ つまらないものでも、毎日対応が必要なものは追加する
一方、毎日対応しなければならないことは、つまらないことでもデイリータスクのチェックリストに含めるべきだ。
以前、クライアントさんから、販促グッズであるその会社の空気注入式の等身大キャラクターをいただいた。
張り切って空気を入れてセンターに飾ったが、残念なことに1日で空気が抜けてしぼんでしまう。空気がなくなってしぼんだキャラクターが置いてあるセンターは、センター自体がしぼんで見える。ということでルーティンタスクに「〇〇(キャラクター名)に空気を入れる」を追加した。こういう「一見そこまでしなくても。」という作業であっても、1日に1回は必要な仕事は、チェックリストに含めるべきである。そうすることで、いつも行き届いたセンターを作ることができる。
④ チェックリストが終わらなければ帰れない
チェックリストは実施するべきルーティンタスクのリストなのだから、終わらなければ帰れない。逆に終われば帰れるのだ。だから、業務時間中にどんどんチェックリストを片付けていけばよい。チェックリストを作ることは「仕事の終了の定義」を決めることでもある。チェックリストがあることで、なんとなく帰れない、とか付き合いで残業、というのはなくせるはずなのである。(チェックリストにない突発的に生じるタスクを除く)
たかが、チェックリスト、されどチェックリスト。
チェックリストの作りこみと使い方の徹底は、センターマネジメントの質が垣間見えるものだ。
ぜひうまくチェックリストを活用し、上手なセンターマネジメントを実行していただきたい。
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