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商品への愛をコンタクトセンターで表現するには、「よりどころ」が必要だった話

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DIGITAL

小笠原大介

2022.02.16

「そこに愛はあるのかい?」
そんなセリフが飛び交うドラマがありました。初回放送は1993年で、私はまだ愛を知らない青春真っただ中。
だいぶ腰がまがるようになってきた今は、もはや愛をさけぶこともなくなりましたが、今回は仕事のうえでも愛はあるなーと思うことについて触れたいと思います。

コンサルという視点

お茶の水博士(以前登場した人)から巣立った社会人3年目のころ、私の主戦場は大阪に代わっていました。それまでコールセンター中心にシステム販売に関わってきましたが、ここで転機となる出会いがありました。

当時の会社は、商社的に販売する力がこぼれるほどに溢れている会社でしたが、大阪にはシステムコンサルを行う部隊があり、そこにコールセンターのアウトソーサーから転職してきた方がいたのです。当時、コールセンターシステムは案件規模も大きく、事業拡大のために必要とされた方でした。「コンサルの人たちは絵を描くのがうまいな」ってくらいにしか思ってなかったのですが、そこで初めてコールセンター業務を意識したわけです。

システム会社が真正面からお客様の業務に向き合うのは難しいです。システム販売がゴールであり、業務をどうするかという観点は、どうしてもお客様にお任せして線引きしてしまうわけですね。そこに踏み込んでいくと手間もコストもかかりますし、リソースも不足してしまいます。

でもここが、私個人としては大きな転換ポイントになります。
何件か実際にそのコンサルの方に同行し、業務視点の話を聞く中で、システム売りという視点が、システムを利用する人たちのエクスペリエンスを考えることになり、その先の顧客体験を想像することにつながりました。

現在、コンタクトセンター業務に関わる方々にOmnia LINKをはじめCRMシステムなども提供していますが、もはやシステムを提供することに主眼があるわけではなく、クラウドサービスを活用することにより、どのようにお客様のコンタクトセンターが変わるか、顧客体験を軸として、お客様の顧客接点業務を再構築するようなお話をさせていただくようになっています。

もちろん、今のコロナ対策のように急を要する際には数週間で在宅化含めたコンタクトセンター立ち上げも行っています。

一方で、じっくりこの際に「コンタクトセンターはどうあるべきか」から考えてみる、その支援をさせていただくことが増えています。コロナにより事業そのものの見直しが必要になっていることもあると思いますが、これは弊社が単なるシステム会社ではなく、かつ単なるアウトソーサーでもなく、その両面を併せ持つ稀有な会社であり、その経験を還元できる力があるからこそで、またこの会社の伝統技といえる寄り添う力の賜物だと思います。

実行方法のヒント

さて、この寄り添い力を発揮してお客様のあるべき姿や課題の洗い出し、解決策の策定などを行う一連の作業ですが、コンタクトセンター、中でも電話業務においては特有の検討項目や課題があがってきます。

指標となるKPIも品質面で応答率、放棄率、エスカレーション率といったものがありますし、効率性ですとAHT(平均処理時間)、ATT(平均通話時間)、CPH(1時間あたりの応答件数)などの3文字言葉シリーズも頻出してきます。

それ以外にも組織としては電話対応の最前線に立つオペレーターの採用や評価、日常ではシフト管理などもありますし、システム面でいうとACD、DNIS(電話番号)、コールフローなど、重要な社会インフラと認識されているものの、実態は真っ暗闇感抜群。

企業としてのミッションやコンタクトセンターのミッションをどう実現していくか、何から手をつけていいか皆目わからないという悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

webなどでもこのコンタクトセンターの領域において、しっかりと定型立ったやりかたが整理されて記載されているのは少ないと思います。

しかし!
ここで役立ったものがあります。
この本です。


「コンタクトセンターの作り方・運用の仕方」というタイトル通り、コンタクトセンターを新たに作ったり、改善するにあたって検討すべきことや課題解決を効率的に進める手法が手順に沿って説明されています。この「手順に沿って」というところが重要と私は思っています。

ということは、この本をモデルとして議論していけばいいではないか!ということですね。
信念をもって真似る。
これ重要です。

本の紹介のようになってしまいますが、目次レベルで記載しますと、

 1章 企業ミッションとセンターミッション
 2章 コンタクトセンターとカスタマーエクスペリエンス
 3章 コンタクトセンターのオペレーション設計
 4章 組織作りのコミュニケーターの育成
 5章 コンタクトセンターのマネジメント
 6章 コンタクトセンターを支援するソリューションを知る
 7章 コンタクトセンターの運用では日々、改善と改革の努力を怠らない
 8章 様々なサービス・技術をいかに活用するか
 9章 最新のコンタクトセンターを支えるテクノロジー
 10章 コンタクトセンターの将来展望を考える

これ見ただけで、整理できる希望が見える気がしませんか?

実際にやってみた

現在、Omnia LINKのトライアルに向けて進んでいるお客様で、化粧品を製造・販売している会社があります。
新規と既存のお客様向けの電話窓口を開設されていますが、コールセンターの仕組みは特に持たずに対応されてきました。

コールセンター業務を一部委託もしていますが、応対品質を重視し内製化を目指すことを掲げ、そのためにシステム環境の見直しを検討されたのがお話しをすることになったきっかけです。

よくお話しさせていただいているカスタマーサポート業務に関わっている方々が非常に熱心で、当社主催のウェビナーに何度もご参加いただいたり、先に挙げた本を贈呈したところ読み込んでくださったり、著者の1人である仲江ともweb会議でお悩み相談ディスカッションをしたりと、本を含めなじみが深くなっていったのも本活用のアイデアが生まれた理由です。

10月の頭から1枠1~1.5時間ほどお時間をいただき、企業・センターミッションに始まり、カスタマーエクスペリエンスの章では、(お名前は記載しませんが)具体的にある女優のような美しさをイメージされているお話しを聞き、なるほどー!とストンと腑に落ちたのをよく思い出します。化粧品のサンプルなどもいただいて当社メンバーや私も実際に使ってみたりして、その女優体験を感じたり? ファンになっていく過程を追体験させていただくことも貴重でした。

オペレーション設計のくだりでは、ナレッジをどう作るかという議論の中で、電話が遠かったりするお客様との通話において、何度も同じ言葉を大きな声にして繰り返すのではなく、言い換え表を充実してみようという話が挙がりました。他には、オイルを使う際に1回あたりの量について説明することが多く、それをどうわかりやすいように伝えるかのアイデア出しとかですね。

マネジメントのパートでは、応対品質の維持・改善に向けて過去に評価項目の定義を試みたことがあるものの、基準をどこに定めるか、その難しさから一度諦めたものの再チャレンジしたいという思いを聞きました。応対内容を確認するにも現在は通話録音がないので、確認しやすいシステム機能をご紹介すると喜んでくれたりもしています。

ソリューションのところでは、レポートがフリーダイヤルから出せる数値しかなく、かつ参照できる期間が短いことや加工の手間に課題があることなどが挙がりました。コンタクトセンター業務は数値が非常に重要ですが、この課題に対して、システム面でどのようにサポートできるかはやはり大きなポイントですね。

これらを時には重なる課題に立ち戻ったり、最新のサービス紹介のところでは、実際のシステムの動きを見てもらったり、具体的なイメージをより持ってもらうために事例のお話しをしたりと、本に書かれている内容と実際の動きが密接に関連した状態でお話しできたのも意味深いものになった要因と思います。

結果的に10月から2ヶ月ほどにわたり議論しましたが、繁忙期に重なることがあったり、委託先変更があったり、大きなビジネスインパクトがある中で時間を割いていただいてディスカッションをしました。そのような忙しい中でもよりどころとなる本があったから振り返りなどもしやすく、進めることができたと思っています。

このディスカッション内容のまとめのアウトプットの宿題がありますが、ここでも本との照らし合わせをしつつ、実際にカスタマーサポートに従事している現場の方も含めて、言語化できたことが重要だと思います。

システム環境は、オンプレからクラウド化により従来よりも手軽にシステム導入ができるようになっていますが、それでもミッションや課題にしっかりと向き合い、現場の方々の言葉で言語化していくことがとても大切であるし、それを実施したほうが良いと、改めて思っています。

このフェーズがおろそかになると、求めていたものと実際とのギャップが時を経るにつれて顕著に大きくなり不満足を増長させ、結果クラウドだから別に乗り換えようという判断もしやすくなりますが、また同じことを繰り返しかねません。

お客様含め非常に手間や工数、整理のためのノウハウも必要ですが、ある程度まで進めて走りながら(クラウド環境で試しながら)進んでいくことも可能なのが今のステキな時代です。
しっかりとお客様の課題に向き合って、その解決策を一緒に出し、ビジネスに貢献することを実直に支援していきます。

ご紹介したような本を活用して、ビジネス環境を改めて定義してみませんか。
そこに愛がありますから!

本記事にてご紹介いたしました『図解でわかるコンタクトセンターの作り方・運用の仕方』は、現在好評発売中です。

コンタクトセンターの「コンサル」×「分析」×「教育」の3人のコラボにより、コンタクトセンター運営ノウハウが図解された一冊となり、コンタクトセンターに新たに関わる方や、管理者になられた方、他社事例を研究されたい方など、広くお読みいただける内容となっております。

ぜひお手に取ってみていただけますと、幸いです。



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