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AIに仕事が奪われる?AIコンタクトセンター時代のSVの役割とは。

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宮本知宜

2020.11.12

皆さんはFAQをどのように作ったり、チューニングしていますか?

従来型のFAQの構築、チューニングのステップの一例は、以下のような流れではないでしょうか。


FAQを一から作るとなると、「② 質問と回答内容を考える」「③ 質問と回答を分類する」部分が、体力勝負になってきます。

そのような膨大な作業であるからこそ、大規模なコンタクトセンターでは、FAQなどのナレッジを管理しチューニングを行う専属要員を抱えている事も多いです。

さて、この頑張って作ったFAQですが、多くのセンターで「細かすぎて探せない」「検索しても出てこない」などの問題を抱えています。

それは、担当者の経験や、担当者の書きぶりに依存した質問であり、顧客の質問通りのFAQになっていないからとも言えます。

さて、このFAQですが、イマドキはAIを使います。

イマドキのFAQで活用される自然言語処理

イマドキのFAQは、構築/チューニングにAIの『自然言語処理』という技術が使われます。

以前、『自然言語処理』は『VOCアナリティクスは全然セクシーじゃない​』 や『VOC分析は、名著を読み解くが如く』 でも触れていますが、改めてFAQの構築に関わるAIの技術、『自然言語処理』について簡単に触れておきたいと思います。

『自然言語処理』は、話しかけられた言葉に気付き、意味を理解し、適切な行動を決定し、ユーザーが理解できる言語で反応する機械の能力の総称です。

コンタクトセンターで最も身近な『自然言語処理』の例は、導入が進んでいる音声認識(Speech To Text:STT)の技術です。

これにより、コンタクトセンターのオペレーターと顧客の対話内容を膨大なテキストデータとして保持する事ができます。

しかしながら、コンタクトセンターの膨大なテキストデータが手元にあったとしても、それを有効に活用するためには、意味付けをして分類する必要があります。

『自然言語処理』では、この膨大なテキストデータから『対話トピック』を抽出し、グルーピングする事ができます。

これによって、例えば「電源が入らない」「壊れた」「異音がする」などの異なるキーワードをすべて「商品の故障」というようにグルーピングする事ができるのです。

併せて、対話テキストをAIに学習させていく事により、AIが言葉や文脈の近さ(ベクトル)を理解していく事が可能です。

例えば、「壊れた」と「修理」と「訪問」は文脈が近いという事に、人間ならば気づけますが、AIはすぐには理解できません。しかし学習をする事で徐々に、AIも人間の理解に近いテキストの活用ができるようになります。

以下は先ほどのFAQ構築のステップですが、


イマドキのFAQにおいては、このAIの『自然言語処理』によって従来行っていたFAQの構築で最も工数がかかる「②質問と回答内容を考える」と「③質問と回答を分類」をほぼAIに任せる事ができます。

これまで人がコンタクトセンターのログデータから人力で抽出してきた質問を考える工数や分類する工数をほぼ省く事ができるわけです。

イマドキのコンタクトセンターのテキスト活用

コンタクトセンターの「生の対話テキスト」は、見方を変えれば、整理されていないテキストでもあります。

そのため、AI-FAQなどへの活用など、テキストを有効に活用するためには、そのための前処理が非常に重要です。

その際に活用される方法が以下の3点です。

  1. ストップワードの登録
  2. 固有表現のユーザー辞書登録
  3. シノニム(類似単語)登録

1、    ストップワードの登録

ストップワードとは、発話する単語や表現に対して、反応して欲しくない単語や表現を登録する事ができます。
この単語登録は、思い付きで登録するとなると、途方もない時間と労力、抜け漏れが発生してしまいます。

そこで、自然言語処理のひとつでもある『形態素解析』を活用します。

『形態素解析』とは

  • 自然言語を、辞書や文法ルールを基に「意味を持つこれ以上分割できない最小単位(≒単語)」に分割する作業です。
  • 英語の場合は、基本的に単語と単語の間はスペースで区切られるため分割が容易ですが、日本語の場合は文字が連続している構造のため、以下のような分割作業が必要になります。
  • 応用として、検索エンジンでは形態素解析によって検索キーワードを分解し、不必要な言葉(検索結果に影響しないであろう単語)の処理を省略する事で、無駄なデータ処理を軽減しています。

以前ご紹介した『VOCアナリティクスは全然セクシーじゃない』 でも、形態素解析の基本的な一例を紹介しているので、そちらも読んでみてください。

この形態素解析をFAQの全テキストデータで行う事もできますし、日々の電話応対の音声認識結果のSTT(Speech To Text)データに対して行うケースもあります。


<形態素解析結果(例)>

<形態素解析結果(例)>

形態素解析結果で、所謂頻繁に出てくる単語や表現(頻出後)がストップワードに該当するケースが多い為、“業務知識がわかる現場のSVさんが精査をする”事で、より精度の高いストップワード登録が可能です。

2、    固有表現のユーザー辞書登録

形態素解析で分割されてしまう、または常用語ではない業務特有の単語や表現をリコメンドのキーとして反応させたい場合は、その固有表現を辞書登録する事ができます。

リコメンドは、あくまでもドキュメント上の単語(漢字、送り仮名を含む)との一致が条件となるため、テストコール等を通じてSTT(Speech To Text)での変換や誤訳も考慮する必要があります。

例えば、『お客様番号』という業務用語があったとします。
その場合、AIは『お客様』と『番号』という二つの単語として認識してしまいますが、この固有表現を『お客様番号』という一つの単語として登録する事ができます。

3、    シノニム(類似単語)登録

シノニムとは、同義語/類義語/言い換え等の意味を持つ英単語で、自然言語を対象とした検索システムでは、同義語や表記の揺れ等を検索時に同じ単語として認識する機能です。

音声認識で表示されるテキストと、実際のFAQの表記との差異についても登録の必要があります。

当然ながら、お客様は色々な言い方でお問合せをされてくるので、作成したFAQを効果的にリコメンドさせるためには、お客様の様々な言い回しを理解している、“業務知識がわかる現場のSVさんが候補を出す”事が大切だと思います。

コンタクトセンターがAI化されても、結局は現場が最強

AIコンタクトセンターが進むとオペレーターさんやSVさんの仕事がなくなるの!?という心配する声をよく聞きますが、決して全てをAIにとって代わられる事はありません。

なぜなら、これまで述べたようにAIが分析(形態素解析)した結果を判断できるのは、業務知識や現場感を持ったSVさんしかいないのです。

ただ、これまで以上に効率化を考えたり、顧客接点を大切にする為の一つの支援ツールとして活用頂く事が、AIコンタクトセンターの近道かもしれません。

今回は、AI-FAQについてお話をさせて頂きましたが、今回のお話はAIチャットボットも近しいプロセスが存在します。

皆さんがAI活用って本当はどうなの!?という疑問や、ついていけないかも!?という不安を少しでも払拭できればと思い、極力優しい言葉を使う様に意識しましたが、いかがだったでしょうか。

DXの流れは今後も更に強くなっていくと思います。皆さんの会社でも色々な研修が企画されているかもしれません。

でも、現場が最強という事を理解していれば怖がる事はありませんが、極力研修を受講してよい気付きを得ていって欲しいと思います。そして、皆さんなりのDX推進をしていってください。

ビーウィズが提供するトータルテレフォニーソリューション「Omnia LINK」の機能の一つである【seekassist(シークアシスト)】は、AI自然言語処理を駆使し、対話内容を分析して、必要なFAQの候補を予測し表示させることができます。
様々な情報を最適な関連性順に表示することで検索時間を短縮し、劇的な応対時間短縮を可能にいたします。

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