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新人を馴染ませたいのなら、組織に馴染ませようとする勿れ

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2023.05.17

「あなたの組織は、新人の受け入れが得意ですか?」と聞かれたら、
多くの方が少し考えてしまうのではないでしょうか。
会社組織に所属していれば、人の流動は避けられません。
組織成長の為には、新たに人を受け入れたり、経験者を送り出したりすることの耐性も
当然持つべきだと考えられます。

しかし、どんな組織でも頻繁にあることではないため、
その耐性はあまりないことが多いのではないでしょうか。
ですから、誰もが不安に思うのです。

新卒の受け入れであれば、
・長く働いてもらうためにどんな役割がよいか    
・うちの組織の文化に馴染んでくれるか
・タイパの時代、価値観が違うのかも…育て方に迷う

逆に経験者や上司に当たる方を受け入れる際であれば、
・大胆な変革で今の関係性を壊されたらどうしよう
・ちゃんと自分の働きを評価してくれるだろうか

と、その対象が、新卒の受け入れであっても、業界経験者の中途入社者の受け入れであっても、
はたまた上司となる人の入れ替えだとしても、内容は少し違えど気構えの大きさはほぼ同じです。

しかし、不安とは裏腹にそれを克服するための準備が出来ているかといえば、それも難しいのも事実。
さらに新しいメンバーの受け入れの成功は、個人の素養や、受け入れた周辺の人たち
個人の成功体験に留まってしまい、“受け入れに強い組織”にまでは昇華できないことも多いものです。

今日は少しでも受け入れに強い組織になれるよう、私自身も振り返りながらまとめてみたいと思います。
そして結論として感じたのが、今日のタイトルです。


「新人を馴染ませたいのなら、組織に馴染ませようとするな」


「え?組織に馴染ませるのが当然でしょ?」そんな反応をされた方も多いものと推察します。
私もこのテーマについて考える前は、きっと同じ反応をしていたと思います。
しかし、整理して考えてみると、「組織に馴染ませる」というのはどうもぼんやりしていて、
「組織」が先行すると失敗するのではないかと思い始めたのです。

世の中では、Z世代がどうなどと括るきらいがありますが、整理していくと、
どうやら「世代」や「文化」など太刀打ちできないと思いがちな壁以前に、
どうやら受け入れ側としてやるべきことがたくさんありそうです。

5つのポイントにしぼって見ていきます。

1.組織ルールを先行しすぎない
2.組織集団への融合を優先しすぎない
3.1対1だけの関係性に依存しない
4.背景先行、カコ偏重への注意
5.課題も人もスキルも固定化しない

1. 組織ルールを先行しすぎない

まずは、組織のルールの取り扱い方について。
組織のルールは、整っていればいるほど人の受け入れ体制にも強いといえます。
そういう意味でルールはとても大切であり必要不可欠です。

しかし、ルールの伝え方には工夫が必要です。
「教えたのに何回も同じことを聞かれる」、そう思うことの多い受け入れ側の人たちは、
ここに躓いているケースがあるのかもしれません。

ルールは行動に紐づく規程であることが殆どで、
細分化して伝えるとその量が膨大になることは間違いありません。

その膨大な量だけでも圧倒されるのに、一気に強制される新人側は、実は一番高いハードルかもしれません。
そんな高いハードルなのですから、受け入れの初期研修で“「ルールブック」を説明したからOK”、
では残念ながらありません。
では、ルールを伝えるにはどうするのが良いのでしょうか。

まずルールが、きわめて内部的なものであることを改めて理解しなければなりません。
例えばテニス好きの私は、テニスをしない姪っ子から「ラブゲームって何?」「セットって何?」
「ウィンブルドンってすごいの?」「なんであんなに変なカウントなの?」など、
ネタのように何度も同じことを聞かれます。

「やれば分かる」「理由は知らなくても出来る」と雑な回答をして切り抜けてしまうことも多いのですが、
姪っ子にルールブックを渡したところで絶対に「分かった!」とはならないと思います。
逆の立場になることもあり、ラグビーのルールがいつまでたっても曖昧な私は、
ラグビー好きの親戚のおじさんにいつも呆れられています。

このようにスポーツはルール無くしては成り立ちませんが、
見たこともやったこともないスポーツのルールブックだけでいきなり実践はできません。
会社も同じで、組織内にいる人からしてみれば、ルールブックほど分かりやすく明解な判断材料はありませんが、
組織外の人にとって見れば、その全貌はとても掴みにくいものなのです。

だからこそ、ルールの浸透は説明だけに終始せず、「見てみる」「一緒にやってみる」
いわゆるOJTがとても有効なのが実は組織ルールだと思っています。
ルールは行動に落とし込まれているはずなので、周りの行動として伝わるのがベストです。

またルールの良い所は、ちょっと並走したら、自走しやすい点です。
しかしここも注意が必要です。往々にしてルールは、あとから補足的に付け足されることも多く、
その全貌を知るのは意外と難儀です。
さらに悪いことに、ルールは作った人の精度に残念ながら依存し、組織のルールブックは完全ではありません。
その点からも、行動で補わなくてはならないのも事実です。

それでも、行動だけに甘えず、イレギュラー・補記だらけのルールになっていないかは
定期的に確認することもポイントかもしれません。


【図1】ルールの正しい伝え方と誤った活用例

【図1】「ルールの正しい伝え方と誤った活用例」

2. 組織集団への融合を優先しすぎない

次に人間関係の作り方です。
よく悩みとして聞かれる世代間ギャップもここに要因があるように思います。
組織に新たなメンバーを受け入れるとき、「大勢の中に合流させることで、早くその組織に慣れてもらおう、
みんな優しいし大丈夫」と考えがちではないでしょうか。

もちろん集団に受け入れることは大切なのですが、それだけで安心してはいけないのです。
なぜなら、集団に受け入れることは、そこに馴染む前段階においてどうしても
「一対多数」の構図が生まれてしまうからです。

どんなに優しく接したとしても、多数派に言いたいことも言えません。
どんなに経験を積んだ方を受け入れたとしても同様です。
当然、集団に合流させることは大切なのですが、同時に何かしらのケアが必要だということです。

集団と個人では上手く関係性を作れないのには、集団への先入観が関わっているように思います。
人は集団の中では、共同意識が働き、本来の自分ではない役割を演じようとします。
その役割が上手くいけばいくほど、客観的には集団としての印象のみが強く残り、
それ以上個人にフォーカスすることは難しくなります。

逆視点でも同様に、集団の中から別の個人を見たときは、「新人さん」「新しい人」という先入観が先に機能し、
その人の細かな点までケアできないことが多くあります。

よって、集団に受け入れることはもちろん行いつつ、それだけではなく個人対個人で時間を作り、
話すことがとても重要です。

3. 1対1だけの関係性に依存しない

先ほどの例と逆の失敗もよくあります。エルダー制度など、ひとりの先輩に付けて安心してしまうケースです。
いつもそばで見てくれている先輩がいることは、大変な安心感で大事なことです。

しかしその制度に頼りきりになっていないでしょうか。育成責任は一人に押し付けるものではありません。
この点を打破するポイントは、1対1の関係性を多数作ったり、複数の異なるグループに所属させることです。
育成責任の強い人ほど自分の元のみに置きたがるのですが、様々な人間関係を感じてもらう方が、
成長や組織でのポジション作りは圧倒的に早くなります。


【図2】「集団と個々の対話の両軸が大切」

【図2】「集団と個々の対話の両軸が大切」

集団の中にいる、個人それぞれの価値観が分かると、自分のポジションも見つけやすくなるかもしれません。
個人対個人の効果は、受け入れ側にもてきめんです。
「新人だから」「経験者だから」という先入観から、その人個人の得意な面、
フォローすべき面が見えてくるため、一辺倒な育成ではなくなるはずです。

4. 背景先行、カコ偏重への注意

さて、続いてはコミュニケーションの取り方です。
先輩、リーダー、マネージャーは当然組織の方針や課題解決のための話をします。
その際に陥りやすいのが、「これまで」の話を重視してしまう傾向です。

・すごい組織と思ってもらいたいというプライドからくる過去話
・たくさんの課題背景の言い訳
もあるかもしれません。
しかしこれらは少し間違えれば、“過去に未練が大いにある変革を恐れるリーダー“に映りかねません。

異動してきた方はもちろん、新入社員の方や、
中途社員の方も十分のその会社のことを調べて合流してきているはずです。
その方々に良い面だけ又は正当化した情報だけを伝え、お客様扱いするのはやはり適しません。
これまでの課題はしっかりとさらけ出すべきですし、それより重要なのは、
その新しいメンバーと作っていきたいこれからのゴールです。

そのゴールを示すことで、「やりがい」「自分のポジション」を見つけることが出来るのです。
信頼しているからこそ、さらけ出す(もちろん感情的にではなく冷静に)が大切です。


【図3】ミライの話をしよう

【図3】ミライの話をしよう

5. 課題も人もスキルも固定化しない

最後に、組織と人の関係性です。
人を採用したり受け入れたりする際、大枠の役割・活動範囲を決めるのは当然ですが、
知らないうちにそれが前任者の活動範囲そのものになっているなど、
理想の形が膨れ上がっていることはないでしょうか。

個人のスキルや特性により組織の役割を柔軟に変化させていくことが必要ですが、
長いこと同じメンバーで安定していた組織ほど、
空いてしまった理想のピースを期待してしまうものかもしれません。

しかし、似たようなスキル・性格・役割をこなせる人を探すことは奇跡に近いです。
そのことを前提に置き、空いているピースを新しいメンバー一人でピタリとは合うように期待するのではなく、
全体の形を整えて少しでも穴の少なくなる体系を作ることが大切です。個人の特性を見て、
全体のフォーメーションを変えることを常に意識しておく必要があります。


【図4】既存メンバーも固定化せず、全体最適を

【図4】既存メンバーも固定化せず、全体最適を

さて、ここまでどんな組織、どんな人にでも共通するセオリーを考察し書いてきたつもりですが、
受け入れ態勢について書いてみようと思ったきっかけとなる理論がありますので、ご紹介しておきます。

異文化への馴染み方も人それぞれ 【文化変容モデル】

文化変容モデル(心理学者ジョン・ウィドアップ・ベリー1939提唱)とは、
ある人が自分が持つ文化とは異なる文化の中に入ったとき、
どのような文化変容を起こすのかについて、分類したものです。

文化変容モデルは、その人の「自文化の保持」と「周囲との関係」で
4象限化し、それぞれ、「統合」「同化」「離脱」「周辺化(境界化)」の4つに分類されます。

これは、会社文化に出会う際も同じ解釈が出来ると思います。


ジョン・ベリー「文化変容モデル」

ジョン・ベリー「文化変容モデル」

言うまでも無く理想は、相手には「統合」してもらい
受け入れ側は「同化」させず「多文化」化していくことです。
しかし、振り返ると、そうでないこともあるのかもしれません。

「同化」することは楽かもしれませんが、それは何の成長にもなりません。
最も理想的な状態で、お互いに認め合いながら統合していくことで、
きっと組織も良い変化をしていくのだなと改めて考えさせられる理論です。

今回、新たなメンバーを受け入れる際のポイントとして
1. 組織ルールを先行しすぎない
2. 組織集団への融合を優先しすぎない
3. 1対1だけの関係性に依存しない
4. 背景先行、カコ偏重への注意
5. 課題も人もスキルも固定化しない

と、5つ記載しましたが、その背景に共通してあるのは、
「同化させようとせず、相手を尊重し統合していこう」ということだと気が付きます。
ジェネレーションギャップも本当にそこが原因なのか?同化させようとしているだけではないのか。
個人としっかり対話して集団イメージから脱却することが重要なのだと、
私も改めて肝に銘じ、明日からをまた過ごしていきたいと思います。

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