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パワポの色選びはアートじゃない、サイエンスだ。

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HUMAN

仲江洋美

2021.08.25

色が持つイメージやメッセージは、私たちの生活に馴染んでいる。それどころか、コントロールされていることだってある。私たちは赤を見て止まり、青を見て動き、色に導かれて電車のホームに向かう。虹色は少し前まで、ただの虹色だったのに、今は世界共通で大きな意味を持つようになった。

「30色もあるTシャツの中から自分が着たい色を選ぶ」という、生活の中での色選びは、とても悩むが、悩むのも楽しい。1色に決める必要もなく、決められなければ2色選べばいい。でも、ビジネスでの色選びは、悩むし難しい。提案書、企画書、報告書、マニュアル、グラフ、、、けっこう頻繁に色選びをすることになる。

できあがったパワポを見て「芸術的なセンスがありますね」的なことを言っていただくことがあるが、パワポでの色選びは、果たしてアート的センスなのだろうか。「アートかサイエンスか」で言えば、少なくともアートではない。なぜなら、それはロジカルで、理由があるから。

今から紹介する色選びの方法は、超・かんたん。
なぜならば、私は色の専門家ではないから、色の知識の説明はできない。

今から説明する色選びは、ほとんど、パワポの機能の使い方。ぜひ気軽な気持ちで読んでほしい。

カラーパレット、横に使うか、縦に使うか

基本の色選びは、欲張らずシンプルに考えれば難しいことはない。

「カラーパレット、横に使うか、縦に使うか」である。

並列や対等に見せたい時は、カラーパレットを横に使う。横並びから色を選べばトーンは必ず合っている。だから、ちぐはぐにならない。
カラーパレットを縦に使うと、色味は変わらず濃さだけが変わる。統一感を残しつつ、ひとつのことが進んでいく感じ、育っていく感じを表現するのに便利だ。

アートな感性を出そうとせず、ただただ「横」か「縦」か、カラーパレットを使えば良い。


カラーパレットの色数に不足を感じる時は、その下のメニューから[その他の色]を選択して、もう一段階、深い機能を使ってみると良い。

横の色数が足りないなら、[標準]タブの六角形のパレットを、下の図のようにぐるっと使う。
縦の色数が足りないなら、[ユーザー設定]タブの右側の濃淡のバーを使うと、小刻みに濃淡を変えることができる。

この画面を見て「色がいっぱいで選ぶのが怖い」と思った人は、この機能は使わなくて良い。自由度が高まれば高まるほど、アート的センスを問われることになるからだ。やめておこう。

ちなみに、下の図の危険そうな囲みの中はアート領域につき「触るな危険」だ。あの頃、図画工作の授業や写生大会で、絵の具の赤だして、白だして、ねばねばするから水たして、オレンジ入れて、白また足して、、、、永遠に作りたい色に辿りつけない、あれと同じことになってしまう。


字の色、地の色、差し色

では次は、資料を作る時の、色の決め方を説明していく。例えばマニュアルや研修テキストなど、何ページにもわたる資料の場合は、使う色を予めガイドラインとして決めておくと良い。
決めるのは、
・字の色
・地の色
・差し色(字も地も)

ガイドラインを決めると窮屈になると思われるかもしれないが、メリットは多い。ページごとに色に迷わなくて良いし、分担しやすくなり、作成者によるセンスやスキルの差が出づらくなる。それに、これはあくまで「ガイドライン」だから、「絶対にコレしか使っちゃダメ」という厳密なものではなく、「できればコレを優先して使おう」程度に考えればよい。

実際に色のガイドラインを決めて作成した例を紹介しよう。

左の例は、基本の3色(字の色、地の色、差し色)を決めて作った研修テキストである。
基本は黒字と水色地とし、ポイントとなる吹き出しに差し色のピンクを使っている。でも、これはコストのことを考えればカラー印刷にする必要はない。モノクロでも十分に意図は伝わる。

右の例は、先月作った社内マニュアル。
この資料で伝えたいことは「来月から役割分担が変わります」ということ。

重要な登場人物は「OP部」と「HR部」の2部門であることは、資料作成を始める時からわかっていたので、この2部門に対して「地の色」を決める。そして、どちらの地の色に対しても目立つであろう1色を「差し色」にする。全てのページで、共通した色を使うことで、ページをめくるごとに「このページのフローはOP部中心、次のページのフローはHR部中心」等、全体感を視覚的に確認することができる。


イメージカラー戦略で読み手の脳を切り替える

並列で対等な関係にあるものを、順々に、同じくらいのボリュームで説明していく場合、イメージカラーを決めるのが効果的だ。

例えるならば、アイドルグループのメンバーそれぞれに色が決まっている感じ。
ももクロが真っ先に頭に浮かんだが、BTSも、ジャニーズも、実は色が決まっていて、東京ドームの遠い席からでも、見つけやすくて良いらしい。

で、それを当社の資料に置き換えてみると、こういうことになる。


では、このイメージカラー戦略はどんな資料で使うと良いか。

例えば5日間じっくりかけて行う業務研修のテキストには、イメージカラーは必要ない。一項目ずつじっくり説明できるし、項目そのものを印象づけるよりも、具体的な中身に集中することが何より大切だから。それに、項目が変わる時には、休憩を取って気分転換もできる。だから、色で気分を切り替えたりする必要も無い。

一方、数十分という限られた時間で、一気に説明をしなければならない「プレゼンテーション」だったらどうだろう。次から次へと繰り出される項目ごとに、聞き手や読み手の脳と気持ちを、かなり強制的に「ハイ、ここから次の話!」と切り替えていかなくてはならない。そして相手が、その時、その場で感じる瞬間的な印象も、とても大切である。

こんな時に、イメージカラーが役に立つ。ただ、イメージカラーって5色くらいが限界かなと思う。10色を超えると、どうしても魅力的に見えない色を使うことになるからだ。

イメージカラーについて考えていて、ふと思い出したのだが、ハチマキの色の話。
私は全校生徒1,000名超のマンモス中学校に通っていた。なんと1学年11クラス。体育の授業の時はもちろんのこと、掃除の時間に毎日ハチマキをするのが決まりで、クラスごとに決められたハチマキの色は学校生活にとってけっこう重要だった。「1年4組、黄緑」、「3年10組、緑」は、まぁ別によい。問題は「2年11組、茶色」。体育祭も球技大会も勝てる気がしない色。でも実際は、やけに団結力の強いクラスで色々勝った記憶はあるけど。。。

話が逸れたが、そういうわけで、並列にする色は人々のやる気を上げる5色くらいが適切なのだ。それを超えると残念ながらやる気が下がる色を使わざるを得ない。

パワポの限界を超えるべきか

「色選び」をテーマにしたが、色の選択肢を広げていく話をひとつもしていない。どちらかといえば、色を制限する話ばかりした。結論は、こういうことだと思う。

 色数は少ない方が良い
 色はカラーパレットから選ぶのが良い
 色のガイドラインを決めるのが良い

そして最後に、私が失敗した話をしておこう。
私は過去にカラーパレットからの色選びに飽きて、自分で色を作ったりしたこともある。高級ブランドのウェブサイトの色使いを真似て、とってもおしゃれな報告書を作ろうとした。

でも、ビジネスの現場では、誰も資料に「おしゃれ」を求めていないことに気づかされる。
資料作成が進み、かっこよくなればなるほど、違和感があった。
そう、それはまるで「カッコだけつけてて、中身ないヤツ」みたいになっていた。驚くほど逆効果で、恥ずかしくなって途中で作るのをやめた。

それで、私は決めた。パワポで作るんだから、パワポらしくいこう、と。
というわけで、カラーパレットを推奨いたします。

それでは、皆様。
カラーパレットとの新しい付き合い方、
ぜひお楽しみください。

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