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不毛な議論はなぜ起こるのか。会議の仕切り力について考えてみる。

  • #会議

HUMAN

形柳亜紀

2023.02.01

この世には、恐ろしく不毛な議論になる会議がある。

 ・同じような議論が観覧車のように回り、ホイールを回るハムスターのように1歩も進まない会議
 ・みんなきれいないいことを言っているけど、終わってみると何も残らない会議

会議というのは「会議の前後で何かが変わっている」必要がある。「不毛な議論」の「不毛」とは、「土地がやせていて作物ができないこと」だそうだが、不毛な議論はまさにそうだ。議論をしても、しても、実りがない会議。これらは、いろんな要素があるが、会議の主催者の仕切り力によるところが大きい。

私はコーポレート部門ということもあるのかもしれないが、1日会議で終わってしまうことがザラにある。仕事の時間のかなりの比率を会議に費やしている。労働力人口が減少する中、日本においては、生産性の改善が急務であるが、「会議の質を高めること」は日本の生産性改善につながるのではないかと思っている。

だからこそ、みんなで会議力を高めよう。

会議には大きく「承認をもらうもの」と「議論をするもの」がある。「承認をもらうもの」については、以前「会議は戦場だ。丸腰で挑めばケガをする。」に記した。

今日は会議の議論をどう仕切るか、=議論の回し方・仕切り力について、書いていきたい。

仕切りは準備が8割

「会議で議論をする」のは、会議レベルとしては、最高難易度と言ってよい。

前提として、「議論」というのは自由なものだ。そして、たいていの意見は抽象度や見る角度を変えればすべて正しい。しかし、自由な議論というのはしばしば収集がつかなくなる。そのために、議論には制約をつけていく必要がある。

議論に制約をつけることが、議論仕切り力のファーストステップだ。議論に制約をつけること、「普通ならどの意見も正解だけど、この制約条件では満たされないね」ということを決めることだ。

それは、会議参加者にとってのルールを定めることでもあり、論点とも言えるのかもしれない。主催者が勝手に決めたこのルールは、会議の最初に制約条件を伝えられなければ、参加者はルールを知らずにプレイすることになる。

それは大小さまざまな論点で議論されることとなり、不毛なルールを生むことになる。よって、事前の準備で制約条件を作っておく必要がある。

制約条件の作り方は議論によって変わって来るが、主には以下の2点で概ねカバーできる。

 ①前提条件の整理
 ②抽象度の整理

①について、説明する。
例えば、議論のテーマは「応対品質を追求すれば、生産性はついて来る」これは正しいか否か。だとする。
その場合、①前提条件が設定されていないと、以下のように、意見の相違なのか、前提条件の相違なのかが議論から読めなくなってしまう。

 a    応対品質が低くて、お客様満足が得られず、クレームばかりのセンターなのであれば、「応対品質を追求すると、生産性はついて来る
 b    応対品質はある程度もう高いし、応対に無駄はない。しかし後処理時間に異常な時間がかかっているセンターなのであれば「応対品質をこれ以上追求したところで、生産性はついて来ない

上記の例では、aはおそらく応対品質の強化をするだろうが、bでは応対品質の強化ではなく生産性を強化するわけで、アプローチが全く違う結果となってしまう。

よって、会議の最初に前提条件を整理しておく必要がある。具体的には以下のような点である。

 ・当センターは、5年以上のベテランオペレーターが6割
 ・応対品質は社内でトップクラス
 ・しかしながら、平均後処理時間は8:00もかかっている
 ・オペレーターの知識レベルやパソコン処理能力は高い
 ・業務フローが煩雑で、入電のたびに複数システムへの入力が必要

次に、②抽象度の整理である。抽象度を整理するには、主催側に出口論がないと決められない。つまりは、議論のゴールの設定になるだろう。多くは、「いつまでに、どのようなことをやりたいのか」が、ゴールになる。

例えば、今年1年のセンターの目標を決定するのが議論のゴールならば、抽象度は高くてよい。1年間に複数の研修や施策を行った上で「何かを成し遂げる」のだから、議論のゴールは抽象度が高くなる。つまりはざっくりするということだ。しかし議論のゴールが来月のブラッシュアップ研修のテーマを決める、ならば抽象度が高すぎると無意味な議論になる。

抽象度の高い意見:「センター品質は、応対品質とか生産性とかじゃなくて、そもそもお客様応対におけるプロ意識が高いかどうかですよね」
→来月のブラッシュアップ研修のテーマを決めたいならば、もう少し具体的な意見が欲しい。センターの1年間の目標やテーマとするならば、良い意見である。
「お客様にプロ意識の高い応対を提供する」ってセンターの壁に貼ってあってもおかしくない。

抽象度の低い意見:「Bシステムへの入力は、Aシステムと同じ内容なので、Aシステムへの入力については、テンプレートの活用を促す研修をしたいです」
→来月には対応できる内容なので、ブラッシュアップ研修のテーマとしては正解。しかし、今年のセンター目標にするには、細かすぎる。「Aシステム→Bシステムへはテンプレートを使おう」っていう目標を1年間貼っていたら、あっという間に廃れるだろう。

ここまでで会議の前に決めるべき制約条件のポイント【①前提条件の整理 ②抽象度の整理】について説明した。ここまでをしっかりできていれば、8割程度は不毛な議論にならないだろう。

ここまで準備をしていると、自分の意見というのが出てくる。ファシリテーターは、自分の意見じゃなくて、みんなの意見をまとめるのが仕事、というような意見もあると思うが、自分の意見が持てるほどに、議論テーマを理解しておくことは当日の仕切り力にプラスの効果をもたらす。

会議の準備をすることは、会議のメンバーが会議中に考える思考プロセスを事前にたどることであり、メンバーの意見の整理をしやすくなる。

会議中の仕切り力

では、実際の会議での仕切りは以下のようなステップだ。

 ①事前に準備してきた、制約条件を伝えよう(前提条件・抽象度)
 ②全員から意見を聞いて、出ている議論を可視化しよう
 ③出てきた意見をカテゴライズしよう
 ④必要に応じてズームイン・ズームアウトしよう
 ⑤ここまでの議論を総括して、次のステップを明示しよう

①事前に準備してきた、制約条件を伝えよう。(前提条件・抽象度)
まずは、事前に準備した制約条件を伝え、その会議におけるルールをセットする。ルールをセットする際には、議論の出口論(ゴール設定とも言える)を伝えておくことによって、抽象度をそろえることが、ある程度はかなうだろう。

②全員から意見を聞いて、出ている議論を可視化しよう
まずは、全員から意見を聞いてみよう。その際に注意したいのは「目的を見失わないこと」である。慣れないメンバーで会議をしていると、「共感をすること」が主務のように勘違いしてしまい、内容を俯瞰して見られないことがある。1人1人の意見に共感し、配慮しながらも、しっかりとメモを取りながら全体像を見ていく必要がある。

A3 の紙など、俯瞰してみることができる紙にメモを取るとよい。また似たような意見が出た場合は、近くに書くなどし、情報を整理しながらメモを取る必要がある。以下はメモのイメージだ。PowerPointなどで作って、zoomで画面共有しながら議論するのも有効な手だ。



③出てきた意見をカテゴライズしよう
上記のメモを作っていくと、「大きく分けると、3つくらいの意見かな」とカテゴライズすることができる。言い換えると、個別の意見の抽象度を高める作業だ。

この時に「事前の準備の中で自分の意見を持てるほどに議論を理解しておくこと」が生きてくる。「〇〇さんが言ったことと、準備の時に自分が思ったことは言葉が違うけど、同じことだな」ということを理解しやすい。具体的には、以下のようにカテゴリごとに色分けしたり、ラベル付けをしたりする。



さらに整理していくと、以下のようなピラミッドストラクチャーにもなる。
このように整理すると、「稼働率を高めること」は「オペレーターの生産性を高める」という制約条件を満たしていないのではないかと気づく。
稼働率を高めるための方法は、オペレーター個人ではどうにもならない問題であることに気づくからだ。



④必要に応じてズームインしよう
上記のように並べると、「説明力の向上?」ってどうやるの???とか、「タイピング速度の向上って全員必要なんだっけ?」というように新たな疑問が浮かんでくる。それを発言者に質問して、ズームインしよう。

逆にズームアウトすることもある。例えば「説明力の向上」という方法論を誰かが発言したときに、「説明力が上がるとどうなるんだっけ?」と聞いて、ズームアウトする。そうすると、「説明が上手になって、簡潔になるので通話時間が縮まります」というような、1段抽象化された答えが戻って来るだろう。

⑤ここまでの議論を総括して、次のステップを明示しよう
最後に、忘れてはいけないこと。
会議の最後は、議論を振り返り、今日の時点で重要なことは何だったかをすり合わせしよう。そのうえで、次は何が必要かを決めてしまう。

意味がなかったな、と思う会議はたいてい、この振り返りが足りないし、次どうなるのかを明示しない。それは、おそらく振り返りをするほどの実りがないから、明示できるものがないのだと推察する。会議をする以上、会議前後で何かが変わっていなければならない。ここが明確化できない会議は失敗であったと言える。

最後に

会議の生産性を高めることは、ホワイトカラーの生産性に直結する。それは、残業が減ったり、ストレスが減ったりすることだ。それにもかかわらず、何の準備もなく会議を設定する主催者が後を絶たない。自殺行為である。

皆さんにはぜひ会議上手になって、適度に働けば適度に成果が出せる、そんな仕事をしてもらいたい。

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詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-126.html


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