オペレーションを進化させる
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センターの立ち上げこそ練習しよう。プロジェクトの不確実性を減らす方法。

  • #コールセンター
  • #成功と失敗

HUMAN

形柳亜紀

2021.12.01

古くて良くて悪い日本の文化

小学校のころ、運動会や卒業式でかなり練習をさせられた思い出がある。
運動会で、組体操やダンスの練習に時間をかけるのならば、よくわかる。
卒業式で、歌の練習に時間を費やすならば、納得する。

しかし、小学生ながら理不尽に感じていたことは、入場行進の練習や、卒業証書のもらい方、立ち位置など、段取りの練習がとにかく多いことであった。入場行進によって紅組と白組の対決は決まらないし、卒業証書は私らしくもらえばよい。そう思っていた。

しかし、最近の私は、今こそ運動会や卒業式の練習に学ぶことがあるということに気づいたのである。
今日はそんな話。

仕事には、点で考える仕事と線で考える仕事がある

私はオペレーションを企業に提供する会社に従事しているわけだが、以前オペレーションは「結婚生活に似ている」ということを書いた。



「結婚式」はプロジェクトなので、達成感があり、成功や失敗を定義できるが、「結婚生活」は「ゴーイングコンサーン」であり、ある一点を捉えて成功や失敗を定義することは難しい。だから、オペレーションにおける成功とは「成功と失敗を繰り返しながら、改善を進めオペレーションを進化させること」である、と定義した。

しかし、「オペレーション」の中にも、「結婚式」のような点で存在するイベントがある。
その代表例は、新たなコールセンターを開設して、今日からそのセンターをスタートさせる日、センターオープン日である。これはまさに成功と失敗を定義できるものである。

もちろん上述したように、オペレーションは「ゴーイングコンサーン」が前提なので、センターオープン日に成功したからといって、そのコールセンターは成功だ、とは言えないのだが、「センターオープン日はまず成功だった」と感じてスタートを切れるか、「初日から失敗した」と思いながらスタートするのかによって、安定稼働までの期間も変わってくるし、何よりも気持ちが変わってくる。だからセンターオープン日は何としても成功させたい。

しかし、当社のような企業のコールセンターを代行する会社にとって、センターオープン日は、初めてクライアントの従業員としてお客様対応をする日である。言い換えると、センターオープン日までの準備に何ヶ月費やしたとしても、会社として1本もクライアントの会社の電話を取ったことはない。もちろん、いろんなことを想定しながら準備を進めるが、百聞は一見にしかず。実際に業務が始まるまでは、本当に準備が足りているのか、わからない。そういう不確実の中にいる。

これは、当社の事業に特化したことだけでなく、世の中全般的に新たなプロジェクトというものはそういうものであり、どこまで準備しても「蓋を開けてみなければわからない」という感覚があるものだと思う。


様々な要素で、センターオープン日に成功したり、失敗したりするが、少しでも勝率を高めていきたい。勝率を高めるためには何でもやりたい。それが担当者の心情であろう。そこで活かせるのが、冒頭で記載した運動会や卒業式の練習なのである。

センターオープン日までに行うこと

センターの立ち上げというのは膨大な作業に忙殺される。複数ある仕事の中で、本日は業務フロー設計の部分を例として、運動会のダンスの練習と対比させながら説明していく。


上の図の通り、センターの立ち上げ準備においては、業務フローを作り、研修カリキュラムを作って、資料を作ったうえで、業務研修をするというまさに立ち上げの花形業務をピックアップした。
それに対応するように、運動会のダンスの準備もダンスのクオリティの肝となるポイントとなる工程をそろえてみた。

しかしながら運動会のダンスの練習は、ダンスのクオリティを高めるためのものだけでなく、入退場の練習や、入場からダンス、退場までの通し稽古のようなものがある。(下の図のピンク部分)


これらは、私が小学生のころ、一見地味で意味がなさそうに思えた段取りの練習である。

しかし、入退場の練習によって、入場の導線の確認(導線が悪ければ、学生同士が衝突してけがをするかもしれない)や、音楽の長さの確認(音楽が短くて入場の途中で無音になってしまうかもしれない)、音楽を変えるオペレーションの練習(音楽をキレイにフェードアウトさせて、次の音楽を入れるときの段取りが難しいかもしれない)、小道具の置き場所(置き場所が悪くて、ダンス中に小道具を取りに行けないかもしれない)、次の競技の待機場所と重ならないか(重なると、衝突によるけがのリスク)、など、複数の確認がなされている。

このように入退場のみを個別に練習した上で、運動会では必ず入場、ダンス、退場までの一連の流れを通して練習する。

すべての工程をノンストップで通して練習することで、「この数秒では移動が間に合わないね。だから小道具はこの場所に移動しなければ」とか「あれ、マイク誰も持ってなかったね」とかを確認しているわけである。

いかがだろうか。こういう段取りの練習が、大人になってみると、仕事でも重要なポイントであったと気づかされないだろうか。

さて、センターの立ち上げにおいて、必要な段取りの練習は何か。


「入退場の練習」にあたる練習として、「オペレーターに入力を依頼する方法(入力未帳票の渡し方)」「オペレーターが入力した帳票の回収方法(入力済帳票の受領)」を例にした。

パワポやExcelの業務フロー上では、一見とてもきれいに流れていく。
しかし、あえて、帳票を印刷して、オペレーターに入力してほしいことを記入し、実際に入力できる範囲で試しに入力して、入力後の帳票を回収するという流れを実際に練習する。

そうすると、「入力が終わった紙には、日付と担当者名を入れてもらわないとわからなくなっちゃうね」とか、「SVに渡されても困っちゃうから、一旦座席にトレーをおいて回収する運用にしよう」とか、「そもそもフォーマットの枠に不足があったね」などが見えてくるものがある。
疑似的に本番を作ることで、不確実性を下げるのである。

ダンスの練習と同じように、センターが開始される前にセンターの1日の通し稽古をする。
ピアノだって、右の練習をしてから、左の練習をして、両手の練習に切り替えると急に両手が動かないこともある。同じように単発の練習ではできていたことも、流れになると見えてくる課題もあるのだ。

例えば、SVは業務開始前に何をしておかないと困るのか?、オペレーターが出勤したら、どのように出欠確認するのか?、朝礼周知は立って実施するのか?というように、朝の準備工程の練習をして、その後休憩は、シフトを考えると5回に分けて出さないといけないし、同時並行でSVも休憩に行かないといけないね、じゃあ、誰が休憩を管理したらいいのか、などが見えてくる。

このように疑似的な本番を行なうことによって、ルーティンに追加されるべきタスクが見えたり、担当割が必要な業務があったり、業務フローの穴を発掘することができるのだ。これらの一連の練習をウォークスルーと呼んでいる。

このウォークスルーを行なうことで、ちょっとした段取り不足を解消し、不確実性を減らすことができる。
初めて挑戦することは失敗しやすい。だからこそ、練習をするべきである、このことは、実は小学校の時に習ったことだったのだ。

最後に、初めて行うことは、事前の準備やテストによって「不確実性」を減らすことはできるが、「不確実性」を0にすることは到底できない。それも、しっかりと認識しておく必要がある。
センターのオープン日は、点を目指していた仕事を線に変えていく日でもある。ゴーイングコンサーンの始まりだ。初日が完璧なんてことは絶対にない。だから、1日運営をしながら、反省事項を書き出しておくのだ。ホワイトボードなどに、ダイナミックにみんなでメモを取っておこう。
そうすれば、後で共有したりマージする手間が省ける。
そして、センターが安定すると思える日まで、センターのSVみんなでそのホワイトボードを見ながら、夕礼をして、課題をつぶしていくのだ。
そのような、線の努力が不確実性な状況を徐々に減っていき、オペレーションの解像度がどんどん高まっていくことであろう。

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