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オムニチャネルはスタートでもゴールでもない。ただの手段だ。

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宮本知宜

2022.12.23

Omnia LINKが更に売れている。
以前現場ドリブンで紹介した『Omnia LINKが売れている』は、8ヶ月くらい前だったが、更に売れすぎており大変ありがたい。

その反面、現在導入フェーズにあるお客様が指定される様々なビジネスコミュニケーションツールで、日々WBSや課題管理表、その他Todoリストのキャッチボールをしている。

今日も、slack、Asana、Teams、Kintone、BackLog、Googleスプレッドシート・・・+メールや電話で日々進捗確認やら、課題の追加やら文字通り、チャネルが多岐にわたっており、カスタマーサクセスメンバーは情報の整理に追われているが、ふと、「これが一元管理できたら」と思ってしまった。

そう、まさにマルチチャネル化しすぎて、日々色々なチャネルを確認しなければならない状況だ。
カスタマーサービスや販売チャネルに於いても、シングルチャネル→マルチチャネル→クロスチャネル→オムニチャネルと様々なフェーズに一長一短が垣間見える。

Omnia LINKの「Omnia」はラテン語で「全て」という意味で、もちろん「オムニチャネル」を意識して命名されたが、各現場ではこのバズワードともいえるオムニチャネルに苦しむ声も多く聞くので、今回はこのオムニチャネルについて考えたい。

そもそも『オムニチャネル』とは

Omnia LINKがリリースされた2017年当時は、まだオムニチャネルというよりも、マルチチャネルといった言葉の方が主流だったが、SNSやchatBOTによる顧客接点チャネルが出てきたあたりから「オムニチャネル」と言われることが多くなり、又、小売流通業界では、「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」、所謂インターネットなどのオンラインから店舗などのオフラインへ消費者を呼び込む施策もかなり浸透してきた。
 
ただ、コロナ禍によって、一気に『非対面』という事がキーワードになり、オンライン商談ツールやWEB会議システムが浸透したことは言うまでもない。一方で、日々変化が多い世の中、本当にオムニチャネルを考えて実践できているコンタクトセンターはまだまだ少ないと感じる。

あらためて、『オムニチャネル』とは…
複数の販売チャネルを活用する「マルチチャネル」販売(小売り)の進化形で、リアル(実店舗)とネット(インターネット通販)の境界を融解する試み。購入(販売)以外の顧客の行動についても、包括的・双方向で捉えようとするところがポイントである。

…とWikipediaでは定義されているが、カスタマーサポートの世界では、チャネルを超えて一貫した顧客対応を実現する事を言うのが一般的だろう。しかし昨今、顧客接点のチャネルは多岐にわたっており、一元的に管理するのは難易度が高いのが実態ではないだろうか。

シングルチャネル、マルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルのカスタマーサポートにおける概念図を以下の通り整理した。



そして、顧客接点となるチャネルは枚挙にいとまがない。

【顧客接点チャネル】
    ・電話
    ・メール/WEBフォーム
    ・FAX
    ・ハガキ
    ・SMS
    ・チャット
    ・アプリ
    ・SNS
    ・チャットボット
    ・ボイスボット・・・etc.

今回は、これらの多岐にわたるチャネルを『カスタマードリブン』『テクノロジードリブン』の両面で考えたいと思う。

『カスタマードリブン』で考えるオムニチャネルとは

顧客接点のチャネルを考える一番の起点は、自社の製品やサービスを購入する顧客層の親和性の高いチャネルを如何に整えるか、である。

逆に、「最近の流行りだから」「呼減をしたいから」という自社側の省力化や少人化を目的として増やすチャネルは、なかなか利用率が上がらず失敗するケースも少なくない。

これは販促チャネルも同様で、Omnia LINKユーザーの健康食品の通販企業様は、高齢者向けの商品が多いが、ECよりも圧倒的に折込チラシやTVのインフォマーシャル、或いは、ラジオ通販が新規顧客の獲得において大多数を占めている。

特徴的なのは、ラジオ通販でも早朝の生放送の反響率は凄まじいものがあり、THEカスタマードリブンと感じる。もちろん、反響チャネルは電話がメインとなっており、高齢層の顧客を抱えている企業はハガキチャネルも大切な受注チャネルとなっている企業は多い。

この既存のチャネルを拡充するのか、このままのチャネルを継続しつつも、窓口の営業時間を拡充したり、これまで以上に一元管理できる仕組みをつくったりする方に注力するのか。

正解はないが、ただひとついえる事は、CSやCXの向上になる事、或いは、戦略的に顧客ターゲットを広げたり、ピボットするという明確な意思を持って実行する事だ。

毎週日曜日にTBSで放送されている、がっちりマンデー!!でも紹介されたが、新潟県加茂市にある「山忠」という靴下の通販企業がある。

山忠には、「足うら美人」というかかとのカサカサがしっとりツルツルになる、累計563万足販売のベストセラー商品があり、主な受注チャネルはコールセンターだ。ECも行っているが全体の2割以下であり、明確な意思をもって電話注文をメインに掲げている。

山忠の原点は元々靴下を作って行商で売り歩くことにあり、顧客接点に於いて直接話をする事を大切にしているが、コールセンターでは一般的なビジネスライクな電話応対のルールとは異なり、色々な取り組みを行っている。

    ・指名電話OK(〇〇さんから靴下買いたい!)
    ・身の上話をたくさんする(こないだ話していた孫がもう小学生になってぇ・・)
    ・敬語ではなく、友達感覚での距離感で対話OK(あー、どうもー〇〇さん♪)
    ・オペレーターが仲良くなったお客様に会いにいく(御礼/ご使用感も聞きながらお茶する)

このように、通常のコールセンターではなかなか取り組みが難しいことまで踏み込んでいるが、「意思を持って電話チャネルを大切にする」という良い事例であると考える。このような明確な意思を持って実行できる背景には、やはり顧客体験の理解が必須である。

少し古い概念だが、AIDMA(アイドマ)で山忠の顧客の購買行動(カスタマージャーニー)は以下と推察される。

【山忠の顧客の購買行動(推察)】



上記推察が正しいと仮定すると、デジタルチャネルよりもアナログチャネルに力点を置き、コンタクトセンターに問合せや注文で電話をかけてくる顧客との接点を重視し、その顧客がリピートしてもらえるような施策、また思い出してもらえるような取り組をみ行う事に合点がいく。

一方で、デジタルチャネルに親和性が高い若者を取り込む為には、よりNonVoice系のチャネルを充実させ、知りたい事をすぐ知れる、或いはほしい時にすぐ買えるチャネルを考える事が重要であり、カスタマードリブンで考えられるチャネル戦略とは、『顧客の思考や属性に合わせたチャネル設計』が重要である。

『テクノロジードリブン』で考えるオムニチャネルとは

次に、テクノロジードリブンでオムニチャネルを考える場合に、3つのキーワードがある。UCaaS(Unified Communications as a Service)とCPaaS(Communications Platform as a Service)そして、CRM(Customer Relationship Management)である。

①    UCaaS(ユーキャス):
様々な通信サービスを統合して提供されるサービスをいう。例えば、電話やチャット、SMS、ビデオ会議を提供するアプリケーションや、コール制御および音声認識サービスなどのクラウド型PBXもその一つといえるが、従来バラバラに提供されていたこれらのサービスを統合して提供し、又、デバイス依存もなく使いたいときに使いたいだけ使える特徴がある。

②    CPaaS(シーパース):
UCaaSと提供される機能は類似するが、提供形態としてはAPIによって様々なシステムやアプリケーションが自前で機能実装する事なくサービス提供できる特徴がある。自社が持っているシステムにチャットボットの機能だけ追加したい、或いは、SMSの機能だけ追加したい、といった事もCPaaSとAPIで連携する事により自社システム側の機能開発をする事なく幅広い機能提供を柔軟に行う事ができる。

③    CRM(シーアールエム):
従来は顧客関係管理を行うツールとしてコンタクトセンターで利用されてきたが、メールや電話の問合せ管理、過去の注文履歴や顧客属性の管理が主な機能であったが、昨今このCRM自体がUCaaSやCPaaSとして提供されていたり、UCaaSやCPaaSとAPI連携する事で真のオムニチャネル・統合エクスペリエンスの提供が可能になっている。

顧客接点とのコミュニケーションプラットフォームとしてUCaaSを使い、そのUCaaSに対してCPaaSによる機能拡張で顧客接点のチャネルを増やし、それらのチャネルを統合的に管理・下支えするCRMによって、顧客体験やコミュニケーションをシームレスに行う事が可能になる、という関係性であると考える。



まとめ

ここまで、オムニチャネルを顧客とデジタルテクノロジーの両面で考えてきたが、つまるところ、自社の商品やサービスのターゲットのカスタマージャーニーを想像(創造)し、その顧客ターゲットに合わせたデジタルテクノロジーの組み合わせが必要である。

オムニチャネル自体が目的化してしまうと失敗するリスクもある為、オムニチャネルにすることが必ずしも正解とは言えない。山忠のような戦略もひとつの正解といえる。

顧客にあったチャネル戦略を常に模索する事ができるのが、as a Service(=使いたいとき、使いたいだけ)なので、最適解を求める為に常にピボットしていく、チューニングしていく、PDCAを回す。その為のデータ取得・分析をするCRMも利用する。そして、繰り返しになるが、顧客体験(カスタマージャーニー)を常に意識する事が肝要だ。

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Omnia LINKは様々なCRMとのCTI連携実績を持っているが、自社製のCRM:bowline(ボウライン)もAPI連携をして顧客に合わせた機能提供が可能です。

Omnia LINK(オムニアリンク)は、クラウド型IP-PBXを基盤としたコールセンター向けトータルテレフォニーソリューションです。基本の通話・管理機能はもちろん、AIを利用した通話音声のリアルタイムテキスト化や、FAQリコメンデーションなど次世代機能を提供します。在宅コールセンターにも対応しています。


詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-126.html


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