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モニタリング自動化が応対品質指導を劇的に変える!

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sasaki

2022.07.13

どんな人でも、目標が明確でないまま、ひたすら頑張り続けるのは長続きしないし、うまくいかないもの。漠然と「ダイエットしてください」と言われたら呆然としますが、もし「1ヶ月で3キロを減量してください」と具体的な数値目標を出されたらどうでしょう。自分で日々の体重をウォッチして、残りの期間を考えて運動量を増やしたり、食べる量を減らしたり、自発的な工夫やアクションを重ねて、目標達成に向けて努力をする方は多いのではないでしょうか。

それはコールセンターの応対品質(トーク品質)指導も同じ話。例えばオペレーターに「もっとゆっくり話をしてください」「間を空けて話をしてください」と抽象的に伝えたとしても、どれくらいゆっくり話せばいいのか伝わらず、個々の感覚に左右されてしまい、早口はなかなか改善されないものです。そんな抽象的になりがちなコールセンターの応対品質。それを数値化して、指導方法を劇的に変える可能性を秘めているのがモニタリングの自動化です。


モニタリングの自動化とは何か?端的に言うと、オペレーターとお客様が話した対話内容が文字に起こされ、そのデータを元にオープニング名乗り、言葉遣い・敬語の間違い、受け止めの言葉、話癖など11の項目を数値化して、評価までを自動的に行う仕組みの事です。

例えば話癖。「あー」、「あの」、「その」、「という形」、「一応」、「恐らく」、「とりあえず」、語尾止め、語尾伸び、語尾上がりなど、よくありがちな話癖ワードをあらかじめ設定します。そのワードを1通話の中で何回使用しているか、月間の全ての通話データから1分あたりの使用回数を自動的に算出。偏差値にする事でチーム内での評価も一発で判断出来ます。もちろん、個々にどの話癖ワードが多いのかも一目瞭然です。

私の担当している健康食品通信販売のコールセンターでもこの仕組みを試験的に導入しました。事前に各指標の内容、数値の算出方法をオペレーターにレクチャー。その上で月毎に個人別の評価カルテの配布を開始しました。開始当初は半信半疑でしたが、配布とフィードバックを始めて間もなく、少しずつですがオペレーターの変化を目の当たりにします。カルテの数値を意識して、自発的に改善を始めるオペレーターが増えてきたのです。



「私はオープニングで必ず「お電話ありがとうございます」と言っています。それなのに結果が100%になっていないのは、きっと自分の滑舌がよくないからAIに認識されていないのだと思う。来月までにもっとハキハキ話すように頑張ります」

「意識はしているけどクッション言葉がなかなか出てこなくて数字が改善しません。ボキャブラリーを増やしたいのでクッション言葉を教えてください」

これらは指導した際にオペレーターから寄せられた反応の一部です。フィードバックや面談で話をすると、自然と自動評価の話題が出てきました。こんなにも反響があるものかと。そこで思い出したのが冒頭のダイエットの話。「来月までに」「オープニング名乗りを100%にする」等、自分の中で目標が数値化されて明確になった事で自発的な改善思考が生まれたのでしょう。

どこかAIに負けた気がして悔しかったのですが、この流れを活かさない手はありません。数値化された事で意識が感化されたのであれば、SVが行う教育や応対指導も数値に基づいて実施してみよう。最初に取り入れたのは当時緊急課題になっていたトークスピード・話すテンポに対してです。

健康食品コールセンターにお電話をくださる顧客は70歳以上の高齢者がメイン。中には耳が遠い方や反応がゆったりした方が多いため、聞き取りやすくゆっくり話すことが求められます。しかし、タイミングの悪い事に当時はコロナ禍。巣ごもり需要によってひっきりなしに注文の電話が入ってくるため、知らず知らずのうちにオペレーターのトークスピードは速くなり、せわしない応対が目立つようになってきました。

この傾向はモニタリングの自動化によってはっきりと数字に表れていました。NHKのアナウンサーが話すテンポでもある1秒間に5文字が最も聴き取りやすい速度と言われていますが、センター全体の速度5.07から月を追うごとに速くなり、半年後には5.27まで多く(速く)なっていたのです。明確な数字を前に出されるとぐうの音も出ません。

この傾向に歯止めを掛けるために取り組んだのは1秒間5文字=10秒間50文字の「黄金テンポ」を体得するためのトレーニング。「松本様、いつもお電話ありがとうございます。今回はグルコサミンのご注文でございますね」という50文字の例文を用意しました。この文章を黄金テンポの10秒ちょうどで読み上げる事が出来たら合格というごくごく簡単なものです。



早速SVがストップウォッチを片手にオペレーターとロールプレイを開始しました。まずは普段通りに読み上げてもらうと面白いようにほとんどの人が不合格。中には4秒も時間を余してしまう人もいるなど、いかに話すテンポが速かったのか、改めて痛感させられました。

その後、話す速度を矯正するため再度読み上げを実施。10秒間を意識して話してもらうと、徐々に合格する人が増えてきました。残念ながら不合格の人でも「悔しいのでもう1回やらせてください」と前向きにチャレンジする人が出てきたのはうれしい傾向。ゲーム感覚で楽しみながら出来るトレーニング方法も相まって、黄金テンポはゆっくりですが着実に浸透してきました。

その結果、1秒間5.27文字だったテンポが3週間後には5.17文字まで改善。2ヶ月後には5.11文字まで改善する事が出来たのです。数字を根拠に指導を行い、その結果がまた数字となって表れる。まだまだ改善途中、まだ志半ばですが、モニタリング自動化とそれを活用した応対指導のコツを掴めた気がしています。

その流れを受けて、新たに検討を開始したのがモニタリング自動化の専門分野での活用。私が担当している健康食品、化粧品を取り扱うコールセンターでは薬機法や景表法の遵守した案内が必要とされています。「効果があります」「治ります」など効果効能を謳う表現や「胃」「腸」「血液」など特定の臓器を指す表現は法律に触れる可能性があるため使用不可。NGワードとしてセンター内に展開し、そのワードを使わない応対が求められるのです。

実際にこのNGワードを使っていないかチェックする事は本当に手間暇がかかるもの。導入研修でしっかりレクチャーし、マインドセットを行っても、慣れが出てくると、気になる表現がどうしても出てきてしまいます。これまではSVがモニタリングをして確認したベースで注意、FBをしてきました。しかし、モニタリング自動化を活用すると、あらかじめ禁止ワードを設定しておければ、その禁止ワードを話しているオペレーターと使ったワードを特定し、ピンポイントで指導する事が出来ます

さらにリアルタイムにアラートを上げると、NGワードが使われているその場でSVがフォローに入る事も出来るし、場合によっては即座に電話を代わる事も出来ます。今まで以上にきめの細かい指導で、安全なコールセンター運営が出来る一つの手段になると期待しています。

上手に運営に取り入れることが出来ればその活用方法は無限大。今回は健康食品をターゲットにしましたが、金融関連業務や公共系など、明確な禁止ワードがあるコールセンターや、契約関連に細心の注意を払う必要がある対応では有効活用できるでしょう。

一連の流れを体感して思うのは、モニタリングの自動化により、コールセンターの応対品質指導は変貌を遂げ、次のステージに突入しているという事です。モニタリングに割かれていた膨大な時間とマンパワーは、他の指導や教育に充てる事が出来るようになりました。

その分、SVに求められるのは抽出される膨大なデータとどう向き合って、どう活用していくか。データを活かすも殺すもSVの腕次第。そんな時代がやってきました。

ビーウィズでは、コールセンター教育を効率化し、オペレーターの成長サイクルを高める教育プラットフォーム『Qua-cle(クオクル)』をご提供しております。

『Qua-cle(クオクル)』は、コンタクトセンターにおける応対品質の課題を解決するために必要な、「学び」・「トレーニング」・「フィードバック」の一連のサイクルを実現する、コールセンター向け品質改善プラットフォームで、eラーニングから学ぶだけではなく、フィードバックのサイクルまでを組み込んだことが最大の特徴です。

モニタリング自動評価(応対のSTTデータによる評価)機能では、日常の自分の成果を月に一度、確認することができるため、オペレーターにとって大きな成長機会に繋がります。


詳しい資料は、以下よりダウンロードいただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-130.html


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