今回は前回よりもより深い「ベイズの世界」をご紹介していきたいと思います。
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ベイズ統計は注目され始めてから久しいです。そのきっかけを作ったのは、マイクロソフトの元代表のビル・ゲイツ氏でした。今から26年前の1996年に、「自社が競争優位に立っているのはベイズ...
今から扱う確率は、”ふつう” の確率ではない
確率の考え方には、「客観確率」、「主観確率」というものがあります。
例えば「サイコロで2が出る確率は?」と聞かれたら1/6(16.7%)と、誰もが答えると思います。
誰が答えても同じ答えになる確率のことを「客観確率」といいます。これが ”ふつう” の確率です。
一方、「主観確率」が ”ふつう” ではない確率です。例えば次のような確率のことです。
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電車で、隣に座っている高校生が大学受験を考えている確率は?
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「そんなのわかるわけないじゃないか」と思った人、その通りです。
この場合、人それぞれ違う答えになると思います。1/10(10%)だと思う人もいれば1/100(1%)だと言う人もいるでしょう。
極端な例をあげましたが、このように『人が心に思い描く数値』を解釈する確率のことを「主観確率」といいます。
「主観確率」をベイズ推定に導入する
前回は、『1万人に1人がかかる難病』と『検査の精度』という「客観確率」をもとにベイズ推定の例をご紹介しました。
今回は、”ふつう” ではない確率「主観確率」をベイズ推定に導入した例を、前回同様、問題形式でご紹介していきます。
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問題:気になる彼女のココロの内を探りたい
クラスに気になる女の子がいて、彼女とは仲が良いのだが、彼女が自分のことをどう思っているのか正直わからない。自分としては、本命:20%、脈あり:30%、友達として好き:50%くらいではないかと思っている。
つい先日の誕生日に彼女からプレゼントをもらえた。
いつも読んでいる雑誌の恋愛特集で、本命:60%、脈あり:40%、友達として好き:20%の確率で誕生日にプレゼントをもらえると書いてあった。
さてこのことにより、僕は彼女が僕のことを本命である確率がどれくらいであると推定できるだろうか。
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前提条件の整理
求めていく前に、何をベイズ推定するのかを整理します。
まず、冒頭の「本命20%、脈あり30%、友達として好き50%くらいではないか」と考えている確率こそ、「気になる女の子の「ココロの内」を推測した確率」であり、『人が心に思い描く数値』である、「主観確率」です。
この問題では、誕生日プレゼントをもらったというイベントが発生したことにより、これまで推測していた確率がどのように変化したと言えるのかを、ベイズ推定していきます。
では、前回同様に表や図を使って確率を整理していきます。
①気になる女の子の「ココロの内」を推測した確率
上記の通り、“本命20%、脈あり30%、友達として好き50%” です。
図示すると以下のようになります。
②誕生日プレゼントはどのような人に渡すのか
問題文の「いつも読んでいる雑誌の恋愛特集」に書かれていた内容(本命60%、脈あり40%、友達として好き20%の確率で誕生日にプレゼントをもらえる)を参照して、以下のように表で表すことができます。
さて、これで前提条件の整理は終わりました。
次からは、図を使いながら「誕生日プレゼントをもらった」というイベント後の「本命である確率」を求めていきます。
「誕生日プレゼントをもらった」というイベント後の「本命である確率」
・(図.1)に(表.1)の条件を加える
①は ”誕生日プレゼントをもらっていない” 状況での「本命」「脈あり」「友達」の主観確率を図示したものでした。
一方、②は「本命」「脈あり」「友達」である条件の下での、誕生日プレゼントを「あげる」「あげない」の確率でした。
そこで、①の(図.1)に②の(表.1)条件を加えてやると、
本命の確率 :20%⇒あげる(60%)とあげない(40%)にわける
脈ありの確率 :30%⇒あげる(40%)とあげない(60%)にわける
友達の確率 :50%⇒あげる(20%)とあげない(80%)にわける
ということができ、次の(図.2)のように書き加えることができます。
・6つの出来事の確率を求める
(図.2)によって、問題文条件すべてを同じ図の中に表現できました。次に6つの出来事の確率を求めて図示したものが(図.3)になります。
これで、すべての準備が整いました。
・「誕生日プレゼントをもらった」というイベント後の「本命である確率」を求める
あなたは今、気になる女の子から誕生日プレゼントをもらいました。
そのため、(図.3)の中でも、「あげる」という領域だけを残すと、次の(図.4)のようになります。
これで、“「誕生日プレゼントをもらった」というイベント” に当てはまる確率が出揃いました。
このうち、「本命である確率」を求めると、数式と確率は以下のようになります。
この「35.3%」というのが、今回求めたかった「誕生日プレゼントをもらった」というイベント後の「本命である確率」となります。
出てきた確率の解釈
元々想定した「本命」である確率は20%だったので、「誕生日プレゼントをもらった」ことによって、1.75倍の35.3%に上がったのは僕にとって喜ばしいことです。
誕生日プレゼントをもらったのだから、期待度が増すのは当然ですが、ベイズ推定ではそれを数値として表すことができるのが便利な点です。
また、出てきた確率は主観確率なので、『人が心に思い描く数値』と解釈すべきで、 “3回告白したら1回は成功する確率” であるという解釈は間違いです。
今回の問題であれば、“これまでは「本命20%、脈あり30%、友達として好き50%」くらいだと思っていたが、誕生日プレゼントをもらったことと、雑誌の情報から「本命 35.3%」になったと思っている。” と解釈すべきということです。
つまりは、僕の頭の中で彼女のココロを推し量った、「心に思い描く数値」ということです。
「人のココロを確率的に想像なんてできない。」
さて、今回の問題の冒頭で、“僕”は「本命20%、脈あり30%、友達として好き50%」と考えていましたが、「人のココロを確率的に想像なんてできない。」という方もいらっしゃると思います。
そういう場合には「本命」も「脈あり」も「友達」もどれも根拠がないのだから、とりあえずどれも対等であると考える『理由不十分の原理』という方法を使うこともできます。
つまり、「本命1/3、脈あり1/3、友達として好き1/3」にするということです。
ただ、こうすると「本命1/3、脈あり1/3 の2つで2/3」は高すぎる気がする。という気持ちが間々起きます。ただ、主観確率はそれで良いのです。
『高すぎる気がする。』のは、それがあなたとあなたの気になる人との、「あなたが思う関係性」で、主観確率なのです。
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