オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジンpowered by Bewith

戦略的で現場ドリブンなPoCのススメ

  • #AI
  • #音声認識
  • #PoT
  • #PoC

DIGITAL

小笠原大介

2021.05.13

「試してみたい!」が実現する時代

私がシステム会社に新入社員としてデビューした頃は、2000年問題に震え上がっていた頃でした。新年度を迎え「新しいことをすること」と、「過去のシステム的な遺産をどうにかする(しないといけない)」と、という狭間で先輩社員は揺れていました。

最近は、そんな季節変動の機運のおかげでシステムの刷新も検討する時期なのか、最新のコンタクトセンターシステムを試してみたい、という要望をいただくことが多くなってきています。

例えば、認知度としては高くなってきた印象のある音声認識も、コンタクトセンターの実運用において普及しているか、というとまだまだなのが実情ではないでしょうか。

当社のサービス『Omnia LINK』においても、音声認識を活用しリアルタイムにオペレーターとお客様との会話をテキスト化し、その内容に基づいてFAQを自動でレコメンドし表示してくれるステキな機能がありますが、デモでご紹介すると、「わー♡」という反応が必ずあがる一方で、今のFAQの整備状況などを思い返していただくと本当に使えるようになるまでハードルがあるという現実にぶつかり、なかなか効果を判断できる方が少ないのも実態として感じています。

「先進的な機能など本当に使えるのだろうか」、はたまた「今使っているサービスが塩漬け状態でもはや使ってないので新しいものなど使いこなせるのか」など思案されてその先の一歩が重いという方もいらっしゃるのではないかと思います。きっかけや目的も様々だと思いますが、そのような方々の「一度試してみたい!」というご要望にはぜひお応えしたい。
そこで、音声認識ソリューションを題材に、どのようにお客様の「試してみたい!」にお応えできるかを考えてみました。

大きく2つの観点での「試してみたい!」について、本日はお話しします。

①    機能を確認してみたい ~PoT(Proof of Technology)~
②    実運用を想定して使えるか確認してみたい ~PoC(Proof of Concept)~

①機能を確認してみたい  ~PoT(Proof of Technology)~

そもそもなぜテスト的に利用してみたい、という声があがってくるのか、ですが、まず浮かぶのは「机上での比較の限界」という点。

システムやサービスを提供している各社は機能一覧や比較表のような資料は準備していますが、往々にして恣意的に書かれ信ぴょう性にかける、と思われたこともあるのではないでしょうか。また、機能一覧も都合よくまとめられたり、粒度も異なったりします。

そのため、提供している機能が実態的にどの程度のものなのか実際に確認してみたい、という思いを持つ方がいらっしゃるのではないでしょうか。

これまでのオンプレのガチガチのシステムでは現場で扱うのが困難なことも多く、システム部門がリードしていくことが多い傾向にありました。しかし、近年このような「試してみたい!」が増加している傾向として、クラウドで導入・運用作業やコスト面、契約面でハードルが下がっているために、システム検討をコンタクトセンターの現場の方の主導で行うケースが増えていることも挙げられます。

またクラウドによるハードルは利用者側も提供者側も下がっていることもあり、サービス提供側も無料トライアルを行いやすくなっているのも大きな要因ですね。
オンプレ環境だと、「トライアルやりましょう!」となっても冷蔵庫ほどの専用機器をトラックで運んで、お客様環境も冷房の効いた部屋を用意していただき、床がぬけない?と心配されつつ機器を設置する、みたいなことが必要でしたが、今やPCさえあればテストできちゃうすごい時代です。

当社はBPOベンダーであることもあり、コンタクトセンターのご担当者様とお話しする機会も多く、そのような日々システムを実際にお使いになられている方々にOmnia LINKのご紹介やデモを行う機会がとても多いです。そしてデモを行うと、「今やこんなこともできるんだ!」と、びっくりされ、機能を有効活用するように設計されたツールに驚かれ、「もはや買います」宣言をいただくこともよくあります。

普段から多くのシステムを見ているような部門の方々と異なり、現場で運用をされていると圧倒的に新しい機能など目に触れることが少ないこともあるでしょうが、もっと多くの場面において現場の方々に先進的な機能をご紹介できる機会が増えれば良いなと思っています。

この①機能を確認してみたい、というフェーズにおいては、使ってみたい機能や必要と思われる機能一覧を整理しておくことが必要です。

またPBX機能、通話録音機能など複数のシステムを連携する必要がある場合もありますが、横断的に確認したいものも挙げることによって、各社が提供している機能の差やシステムを連携する必要有無など確認の視点が生まれてくると思います。

もちろん当社はBPOベンダーでありながらシステムも提供している異色の存在ですので、システム機能面の確認をしてみたいというフェーズにおいても、機能一覧やチェックリストの提供からサポートしております。

②実運用を想定して使えるか確認してみたい ~PoC(Proof of Concept)~

機能面の確認の次のステップとして挙げられるのは、実運用を想定した確認になります。

①の「機能を確認してみたい」での評価においては、例えば、音声認識精度は高くなる傾向があります。それは認識精度が高くなるように意識的に発話することが考えられるのがその裏側にあると思います。
しかし実際の電話応対では、人の耳でもなかなか聞き取りづらいようなものもあったりします。
AIしかり音声認識しかりですが、一度足元に立ち返ることも必要なケースの例ですね。
人が聞き取れないような会話は音声認識をかけてもうまくテキスト化されるはずはなく、それで音声認識精度が低いという評価になってしまうのはとても残念です。

さて、このような実運用を想定した「試してみたい!(以下PoC)」ですが、下のような点に気を付けると、適切な検証ができます。

①    「やりたいことや期待」が仕様上、満たされるか。
音声認識のPoCでよく期待されることとして、「オペレーターの後処理時間を短縮したい」というのがあります。
しかし、音声認識のソフトによっては、オペレーターの通話終了後にしばらく待たないとテキスト化されない製品もあります。

この場合、オペレーターがテキスト化を待つ時間そのものが無駄になり、むしろ後処理時間の長期化につながってしまいます。
「やりたいことや期待」を明確にしたうえで、その製品がそもそも仕様上満たされるかを確認して始めると、無駄なPoCを減らすことができます。

②    効果測定を意識したPoC設計になっているか。
例えば、「後処理時間の短縮」を目的に音声認識のPoCを始めたが、現行システムでは「後処理時間のレポートが取れず、Before、Afterを計測できない。」「処理の正確性向上」を目的にPoCを始めるも、「正確性を捉える指標が計測されていない」などです。
せっかく工数をかけて、PoCを行なうのであれば、定量的な効果測定ができるのが好ましいでしょう。

また、当社のオペレーターの中には、通話しながら応対内容を並行して入力するのでリアルタイムにテキスト化されたデータをコピペしたい、という要望をあげる強者もいますが、どれくらいの習熟度のオペレーターに対して効果を出そうとしているかによってもその効果は変わってきますね。

さらには、現場の洗練度によっても変わってきます。
例えば、音声認識をしてリアルタイムに会話内容をテキスト化し、その内容をもとにFAQをレコメンドして自動で表示してくれるシステムは、経験に依存しない応対品質の維持における課題を持つ企業にとって、顧客満足に直結するため、皆様大変可能性を感じるようです。
多くの場合、「新人オペレーターにおける1次解決率の向上が図れるか?」がPoCの目的となるため、PoCにおいては全FAQではなく、一部のFAQにとどめて始めるべきではないかという議論になりがちです。
そのような背景から、「FAQを改めて確認してみる」、というプロセスを踏むことになりますが、窓口によってはそもそもFAQがしっかり整備されてない、お客様との電話応対時に必要なFAQが実は把握できてなかった、という気付きに至ることもあります。これはこれで、PoCのひとつの成果ですね。

ちなみに、FAQリコメンデーションシステムの場合、効果測定として自動で表示されたFAQがどれほど使われたか、役に立ったか否かを数値化することが必要になります。役に立たなかったFAQは意見が多く集まりやすいですが、特に役立ったFAQを数値化することは盲点になりやすいポイントですので注意が必要です。

③    オペレーターの感想や使い心地も重要
当然ながら利用するオペレーターがどう感じたか、定性面での分析も必要となるでしょう。

上述のFAQリコメンデーションシステムは、新人オペレーターを想定したシステム環境が多いので、利用する画面レイアウトや機能性によっては操作が難しく、通話しながらだとかえって頭がパニックになってしまう、ということも聞きます。同じような機能を提供していても、「誰が使うか」などの運用を想定して利用するとその印象はまったく異なってきます。

例えば、当社のOmnia LINKの機能であるFAQを自動でレコメンドするseekassistを実運用で利用していただいているお客様においては、これまではベテランのオペレーターであっても、通話を保留した時には折り返し対応にして離れた場所にある紙の資料を探しに行かなければならないセンターがありました。そのため、毎回応対時間が長くなりお客様には「お待たせして申し訳ございません」とお詫びを伝えないといけないことがひとつの課題でした。
このセンターでは、seekassist導入を機に、紙資料はすべてデータ化され、会話の中から該当の資料を自動で探し出し表示してくれるので、お客様へのお待たせフレーズも毎回言う必要がなくなり心的負担が軽減された、という声もあがったりします。

現場ドリブンなPoT/PoCを実施しましょう

今や多くのサービス提供者が無料トライアルなどお試し環境を提供しています。
ただし、1つの機能を試してみるために既存システムへの影響を考慮する必要があったり、お客様側のシステム環境に制限があったりすることもあります。

例えば音声認識を試す際に、既存のPBXが特定の機種であったり、対応プロトコルや対応コーデックである、などです。
また、コールフローを現場で対応できることが売りのシステムであったが、その作業はコンタクトセンターの現場の方々にはハードルが高く挫折した、という話も聞きます。

幅広いIT技術の知見や経験がなければPoC実施のアイデアを出すことが難しいでしょうし、運用上の注意点も理解している必要がある、自社のIT部門だけではPoCが困難といったケースもあります。
ITと運用面の知見があるビーウィズなら成功に寄り添った支援が可能です。

PoT/PoCは現場の方々を抜きに進めても成果に結びつきません。現場での運営全体を意識した確認や、定量面/定性面での評価をもとにした検証なくしてその先の本格導入後の惨憺たる結果や運用における負担の増加に結び付いてしまうこともあります。

またPoT/PoC含め、その体験を共有することがとても重要と感じます。音声認識を使って、しっかり認識してくれてすごいねって笑顔になる、その体験の共有そのものが新しい技術の導入の際含めPoCの効果でもあると思います。

現場ドリブンのPoT/PoC、大賛成です。
是非実施してみましょう!

Omnia LINK(オムニアリンク)は、クラウド型IP-PBXを基盤としたコールセンター向けトータルテレフォニーソリューションです。基本の通話・管理機能はもちろん、AIを利用した通話音声のリアルタイムテキスト化や、FAQリコメンデーションなど次世代機能を提供します。在宅コールセンターにも対応しています。

以下のようなお客様にお勧めです。
 ・オンプレ型のPBXからクラウド型に移行したい
 ・通信費や保守費用などのコストを削減したい
 ・毎月使う分だけライセンスフィーを支払いたい
 ・場所にとらわれず、電話が取れる環境を整えたい

詳しい資料は、以下からご覧いただけます。
https://www.bewith.net/gemba-driven/download/entry-126.html


関連記事